FIELD GUIDE / PPE

防具耐圧試験を、
「絶縁の壁」から理解する。

手袋・長靴・ヘルメット・絶縁衣・シート・ディスコン棒の違いから、濡れ布を使う理由、試験電流、判定、記録まで。防具と保護具の耐圧試験を整理します。

原理から理解する・現場準備の教材

試験電圧は法令・通達の区分ごとの値を「試験電圧」に整理しています。型式固有の時間・電流判定値・電極寸法は未設定です。実作業は責任者の作業計画、適用規程、最新取説を用います。

守るものを、先に確かめる。

防具の「壁」が、指定された試験電圧に耐えられるかを確認する。
使える電圧と、試験で加える電圧は別です。

耐圧試験の準備用の解説です。実施する品目・型式・試験器・承認済み条件は、現場の資料で確定してください。

絶縁用保護具

人が身に着けて守られるもの。絶縁手袋、長靴、電気用ヘルメット、絶縁衣、袖など。左右があるものは、対だけでなく個体ごとに識別します。

絶縁用防具

充電部などを覆って接触を防ぐもの。シート、管、カバーなど。形状によって電極の当て方と試験する範囲が変わります。

検電器・操作棒・高所作業車などを、手袋と同じ試験条件にまとめません。「防具耐圧」という現場の呼び名の中に何が含まれるかを、最初に分けます。

図鑑:どこに電圧をかけている?

どの防具も「高圧側」と「接地側」で絶縁の壁を挟んでいる。
違うのは、その壁を挟む方法です。

高圧側(試験器の出力)接地側水・濡れ布=電極水につけない乾いた縁
絶縁ゴム手袋の水槽試験指先を下にした手袋を水槽に沈め、手袋の内側にも同じ高さまで水を入れる。内側の水に高圧側の電極を入れ、外側の水は接地した金属水槽に接する。手袋の口元は水面より上で乾いた縁になる。 高圧側 → 内側の水へ 乾いた縁長さは指定方法で 内外の水位をそろえる ゴムの壁に電圧がかかる 接地側:外側の水・金属水槽

絶縁ゴム手袋 絶縁用保護具

内側の水と外側の水が電極になり、その間のゴムの壁を試験します。口元は水につけず、縁を回り込む放電を防ぎます。

定期 AC 10,000 V・1分製品規格 AC 20,000 V・1分高圧用(3.5 kV超〜7 kV以下の電路用)の場合
絶縁ゴム長靴の水槽試験長靴を水槽に立て、内側にも同じ水位まで水を入れる。内側の水に高圧側の電極、外側の水は接地した水槽に接する。履き口は水面より上で乾いた縁になる。 高圧側 → 内側の水へ 乾いた口長さは指定方法で 内外の水位をそろえる 胴と底のゴムを試験 接地側:外側の水・金属水槽

絶縁ゴム長靴 絶縁用保護具

手袋と同じ「水で挟む」考え方です。靴底の溝や、かかとのしわに気泡や汚れが残ると、接触面がそろいません。

定期 AC 10,000 V・1分製品規格 AC 20,000 V・1分高圧用の場合
電気用ヘルメットの水槽試験ヘルメットを逆さにして水槽に入れ、帽体の内側に水を張る。内側の水に高圧側の電極、外側の水は接地した水槽に接する。つばの縁は水面より上で乾いた縁になる。 高圧側 → 帽体の内側の水へ 乾いたつば 逆さにして帽体に水を張る 接地側:外側の水・金属水槽

電気用ヘルメット 電気用保護帽

見た目が同じでも「電気用」の表示がない帽子は対象外です。耐圧に合格しても、帽体の割れ・あごひも・内装の点検は別に行います。

定期 AC 10,000 V・1分製品規格 AC 20,000 V・1分7 kV以下用の電気用保護帽
電気用絶縁衣(上衣)の試験(断面)金属の台の上に絶縁衣を平らに置き、身ごろの中に濡れ布を入れて高圧側の電極にする。上にも濡れ布をのせ、金属の台と一緒に接地側の電極にする。前身ごろと後ろ身ごろの2枚に、それぞれ試験電圧がかかる。濡れ布は絶縁衣の縁まで広げない。 高圧側 → 中の濡れ布へ 上の濡れ布 前身ごろ 中の濡れ布 後ろ身ごろ 金属の台 接地側:金属の台+上の濡れ布 前後の2枚に、1枚ずつ試験電圧がかかる

電気用絶縁衣(上衣) 絶縁用保護具

水槽に入らないので、濡れ布で挟みます(気中試験)。身ごろも袖も2枚重ねの筒なので、中にも濡れ布を入れるのがポイント。外側だけで挟むと、前後の2枚が直列になって1枚あたり約半分しかかかりません。

定期 AC 10,000 V・1分製品規格 AC 20,000 V・1分高圧用(7,000 V以下)の場合

濡れ布を使う理由 →

絶縁シートの電極試験(横から見た図)シートを上下の電極で挟み、厚さ方向に電圧をかける。電極はシートより小さく、シートの端を回り込む沿面の経路が長くなるように余裕をとる。 電極A:高圧側 電極B:接地側 絶縁シート 縁を回る沿面の経路→ 端に余裕を残す 厚さ方向に電圧をかける 管・カバーは形に合う電極(水・金属はく等)で

絶縁シート・管・カバー 絶縁用防具

平らなシートは電極で挟み、厚さ方向を試験します。電極の外側は試験されていない範囲なので、端部・折り目は外観点検で補います。

定期 AC 10,000 V・1分製品規格 AC 20,000 V・1分高圧用の防具の場合
ディスコン棒(断路器操作用フック棒)の試験告示の方法では、先端のフック(頭部の金物)を高圧側、握り部の頭部寄りに密着させて巻いた金属はくを接地側の電極にして、その間の絶縁部に電圧をかける。握り部、つば(安全標示)、継ぎ目、先端金具を示す。 電極A:先端の金物(高圧側) 試験する区間(絶縁部) 電極B:接地側(金属はく) 握り部つば継ぎ目先端金具 告示の方法:フックと、握り部の頭部寄りの金属はくの間検電器の検知動作の確認とは別

ディスコン棒・操作棒 活線作業用器具

人が握るのは「つば(安全標示)」の手前まで。フックから握り部の境までの絶縁部が、人と充電部の間の壁です。告示の方法では、フックそのものを片方の電極にし(フック側にも箔を巻くことがあります)、もう片方は握り部の頭部寄りに巻いた金属はく(握る手のかわり)です。伸縮式・継ぎ足し式は継ぎ目も試験範囲に入るかを確認します。

製品規格 使用電圧 × 2・5分定期の例 13.8〜20 kV・5分JIS C 4510:300 mmごとに75 kV・5分

特高のディスコン棒の試験 →

図は原理の説明用に簡略化しています。水位・乾いた縁の長さ・電極寸法・結線は、対象製品と承認済み試験方法に従ってください。数値は種別ごとの代表例で、根拠は下の「試験電圧を一覧で」にまとめています。

試験電圧を一覧で

試験電圧は「使える電圧」ではありません。
使う電圧より高い電圧で、絶縁の余裕を確かめます。

① 使う電圧6.6 kV 高圧の電路で使う。ここが保護具の区分を決める。
② 製品の規格新品が型式検定で耐える電圧。高圧用は AC 20,000 V・1分。
③ 定期自主検査6か月以内ごとに、使用中の品へかける電圧。高圧用は AC 10,000 V・1分。

横棒の長さは電圧に比例(0〜22 kV)。最後の行は受電設備(ケーブル・変圧器など)の試験で、防具耐圧とは対象・時間・根拠が違います。

使う電路(種別)製品の規格
告示第144号・型式検定
定期自主検査
基発第415号
交流 300 V超〜600 V以下(低圧用)AC 3,000 V・1分AC 1,500 V・1分
交流 600 V超〜3,500 V以下/直流 750 V超〜3,500 V以下AC 12,000 V・1分AC 6,000 V・1分
3,500 V超〜7,000 V以下(6.6 kV 高圧用)
手袋・長靴・袖・絶縁衣・シート・管など
AC 20,000 V・1分AC 10,000 V・1分
電気用ヘルメット(電気用保護帽)保護帽の規格による(AC 20,000 V・1分)AC 10,000 V・1分
タニザワ公式FAQ(基発第415号)
活線作業用器具(ディスコン棒・操作用フック棒など)使用する電路の電圧の2倍・5分基発第415号の本則は告示第144号の方法による。電圧を別表で定める但書は保護具・防具が対象。器具は第9条の条件と対象製品の区分を照合する。個別仕様の数値例は下の解説(自由に選べる値ではない)
定期の電圧が、製品規格より低いのはなぜ?

製品規格は新品の性能を確かめる型式検定の値、定期自主検査は使用中の品が絶縁性能を保っているかを確かめる値です。使用中の品へ毎回製品規格と同じ高い電圧をかけると、試験そのものが劣化を進めるおそれがあるため、低い値が示されていると理解すると整理しやすくなります。定期の電圧で合格しても「その電圧まで使える」という意味にはなりません。

ディスコン棒は、なぜ1分ではなく5分?

告示第144号では、活線作業用器具を「使用する電路の電圧の2倍の電圧に5分間耐える」性能で規定しています。保護具・防具の「種別ごとの電圧に1分間」とは考え方が違うため、手袋の条件を棒に流用しません。

基発第415号は、定期自主検査の耐電圧試験を告示第144号の方法で行うことを本則としています。試験電圧を別表に置き換える但書は絶縁用保護具・防具についてのもので、器具が表にないことは「規定がない」という意味ではありません。実施条件は適用される第9条の条件・製品用途を照合し、承認済み手順と製品取説で確定します。現場の試験器に「DS棒 ○○V・5分」のように手順書の値が掲示されている場合も、その根拠(手順書の版・取説)を記録に残します。実際の値の例と特高の考え方は「特高のディスコン棒は、どう試験する?」にまとめています。高圧検電器は、絶縁部の耐圧とは別に検知動作の確認が必要です。

この表の数値をそのまま設定していい?

表は法令・通達の区分ごとの値を整理したものです。実際の試験では、対象品の区分(何V用か)、型式・取説、試験器の容量、事業場の手順を照合してから設定します。区分が分からない品に、推測で電圧を当てはめません。

根拠:絶縁用保護具等の規格(昭和47年労働省告示第144号) / 昭和50年7月21日 基発第415号 / タニザワ:電気用保護帽の耐電自主検査。いずれも区分(何V用か)を確認してから当てはめます。

扱う8種類を、同じ試験にしない。

耐圧試験は絶縁性能、検電器の動作確認は電圧を検知する機能の確認です。耐圧に耐えたことだけで検電機能良好とは判定できません。

対象確認を分けるところ周期の根拠
高圧検電器絶縁部分の耐圧と、指定方法による検知動作・電池・外観長谷川電機の説明では法定定期自主検査の対象外。機種別にメーカー推奨がある
低圧検電器使用範囲、外観、電池、指定の動作確認高圧検電器の試験電圧・周期を転用しない。型式の取説と社内規程で確定
絶縁ゴム手袋・ゴム長靴電気用としての区分、左右・個体、穴や傷、指定電極と耐圧安衛則第351条の対象は6月以内ごとに1回。対象範囲と例外は同条を確認
電気用絶縁衣(上衣・袖)電気用としての区分、破れ・すり切れ、前合わせ・えりなど重なった部分、濡れ布での電極の当て方と耐圧安衛則第351条の対象となる絶縁用保護具として確認。作業服・雨がっぱと区別
電気用ヘルメット(電気用保護帽)電気用の表示、型式・製造年月、帽体の傷や割れ、内装・あごひも、指定の耐電圧試験電気用保護帽は6月以内ごとに1回の絶縁性能の自主検査。飛来・落下物用だけの保護帽と区別
絶縁シート材料、表裏、端部、試験対象面積同条の対象となる絶縁用防具として確認。単なる養生シートと区別
ディスコン棒などの絶縁操作棒本体絶縁部、継ぎ目、把持限界、先端金具、用途区分。製品規格は使用電圧の2倍・5分で、保護具の1分とは別活線作業用器具等の法令上の区分を製品用途で確認。名称だけで分類しない
ヘルメットはどれでも電気用? 試験電圧は?

外見だけでは区別できません。「電気用」の使用区分とメーカー・型式を表示や取扱説明書で確認します。飛来・落下物用、墜落時保護用としての性能と、感電を防ぐ性能は別です。

タニザワの公式FAQは、電気用保護帽の定期自主検査について、6か月以内ごとに1回、交流10,000Vでの試験を案内しています(昭和50年7月21日付 基発第415号)。これは使用できる電圧を示す数値ではありません。保持時間・水位・電極配置・判定方法は、対象型式の指定方法と適用手順で確定し、手袋の条件を流用しません。

耐電圧試験に合格しても、割れや内装の異常、交換時期を無視して使用できるわけではありません。帽体と内装・あごひもの点検も別に行います。

タニザワ:電気用保護帽の耐電自主検査・点検 / ミドリ安全:保護帽の使用区分・取扱説明

検電器を「全部6か月」としない理由

長谷川電機は、高圧・特高用の中でも短尺タイプとその他で、推奨周期・条件を分けています。例えば同社FAQの短尺高低圧用は1年に1回程度、その他は半年に1回程度という区別です。これはメーカーの推奨で、今回の型式が不明な段階では試験設定に採用しません。低圧専用へも適用しません。

長谷川電機:検電器の定期点検・校正試験

法令で定める使用前点検と、定期検査を区別します。検電器は使用前に機能を確かめ、定期検査済みという表示だけを頼りにしません。

どこに電圧を加えている?

水位・縁からの距離・電極形状・昇圧方法・試験電流上限は、製品と試験方法の指定に従います。この図から寸法や結線を採用しないでください。

なぜ水に入れて、耐圧試験をするの?

調べたいのは「水の強さ」ではなく、
内側の水と外側の水を隔てる、ゴムの壁の絶縁です。

ここでは、水を使う指定試験方法による手袋・長靴を例に説明します。水は、複雑な形に沿って広い範囲に接触する電極の役割を持ちます。内側と外側の水は、試験物のゴムによって隔てられています。

↑「手袋・長靴」の断面図で、内側と外側を確認する

図は、接地した金属水槽を外側電極に使う構成例です。水槽の前面を透かして描いています。外側の水に接する金属水槽自体が電極になるため、この構成では外側に別の金属棒を描いていません。試験器内部の戻り回路は省略しており、実施工の結線図ではありません。

① なぜ金属の棒だけではなく、水?

棒だけなら接触は小さな範囲になりがちです。水は手袋の指先や長靴の形に沿って接触します。水中の電極から水を介し、ゴムの両面に試験電圧をかけるための構成です。

② なぜ内側にも水を入れる?

内側にも電極となる接触面を作るためです。外側を水に浸すだけでは、この試験方法で指定する内外の電極配置になりません。「水が入るかを見る試験」とも違います。

③ なぜ水位をそろえる?

内外の水位や開口部からの距離は、両面が水に接する範囲と、縁を回り込む経路に関係します。告示の水槽法は内外の水位を同じにする方法を規定しています。水位を高くすればよい、というものではありません。

④ なぜ縁まで沈めない?

内外の水が縁を越えてつながると、ゴムを隔てず水を通る経路ができます。また、縁の濡れや汚れは表面を回り込む漏れ・放電の原因になります。乾いた区間の長さは指定方法で決めます。

水槽のアースと、試験器のアースは何が違う?

この例の水槽は、外側の水と電気的につながる試験用の電極です。その水槽を指定方法で接地します。一方、試験器の筐体の保護接地は、故障時の感電防止のためのものです。同じ接地先を使う場合でも、役割は区別します。

非金属製の水槽では、水槽自体を電極にはできないため、別の電極を外側の水に入れる方法があります。「棒が必須」でも「どの水槽でも棒が不要」でもありません。試験出力の接地方式・電流検出回路を含む接続は、使用機種の取扱説明書に従います。

構成の参考:双興電機製作所 AMT-106P 取扱説明書「3-2 活線防具試験」。この資料は構成例の根拠であり、使用中の試験器の型式を特定したものではありません。

「電気が流れなければ合格」ではない

内側の水と外側の水は、絶縁物を挟む二つの電極です。交流では、この構造がコンデンサのようにも働くため、ゴムに穴がなくても容量性の電流が流れます。これは電子が健全なゴムを自由に通り抜ける、という意味ではありません。

計器が示す試験電流には、この容量性電流に加えて、絶縁の損失や表面の漏れなども含まれます。そのため「0mA以外は全部不良」とは判定しません。逆に、電流が小さくても、試験電圧・保持時間・電極配置が規定どおりでなければ、試験成立とはいえません。

起きていることどこを通る?見方
容量性の電流内外の電極が、ゴムを挟む容量として働く交流試験で生じ得る。電流があるだけで絶縁破壊とはしない
材料の絶縁破壊ゴムの厚さ方向に破壊による経路ができる健全な絶縁状態とは異なる。使用品と分け、指定の処置へ
表面の漏れ・沿面放電ゴムの表面や開口部の縁を回り込む水位・乾燥・汚れ・配置と製品損傷を確認。配置を変えて通っただけで合格とはしない
試験した範囲と、試験後の扱い

この方法で主に電圧がかかるのは、内側と外側の電極に挟まれた部分です。水面より上の乾いた縁まで同じ条件で試験できた、と解釈しません。縁や内装を含めた外観点検は別に必要です。

試験中は水・電極・試験物を高電圧部として扱います。出力停止、指定の放電、安全確認を終えてから回収し、指定方法で乾燥・後点検を行います。試験で水を使うことは、濡れたまま着用してよいことを意味しません。

水の種類・電圧・時間・ヘルメットも同じ?

この説明は原理の整理です。水質・水温・水位・電極・電圧・時間・電流の判定値は、対象製品と承認された試験方法で確定します。自己判断で塩などを加えたり、手袋の条件をヘルメットや検電器へ流用したりしません。

ヘルメットは電気用の区分を確認し、その製品の方法を使用します。手袋・長靴・ヘルメットが同じ水槽に入るからといって、条件も共通とは限りません。

水槽法の根拠:厚生労働省「絶縁用保護具等の規格」第3条。製品規格の性能試験と、使用中の定期自主検査の実施条件は区別して照合します。

濡れ雑巾(濡れ布)は、なぜ必要?

「導体だから」は半分正解。
本当の理由は、形に沿って、すき間なく密着する導体だからです。

絶縁衣・シート・管のように水槽に入れられないものは、濡れ布で挟みます(気中試験)。現場の「濡れ雑巾」は、法令とJISにも出てくる正式な電極です。

告示第144号 第3条 絶縁用保護具等の規格

平らな金属板の上に試験物を置き、その上に水でしめらせた綿布などの導電性の物をのせて、上下を電極にする方法がある。試験物と同じ形の電極や、水でしめらせた導電性の物を内面と外面に当てる方法もある。

JIS T 8010:2017 耐電圧試験方法

気中試験の電極は、縁を丸くした金属に織布・フェルト・ウレタンフォームなどを内張りし、水道水・石けん溶液などを十分しみ込ませたもの。電極は「供試品の変形を加えることなく,供試品の内面及び外面にできるだけ密着させる」。

金属の電極を当てただけ(断面)しわや縫い目で盛り上がった絶縁衣に、平らな金属の電極を当てると、盛り上がりの頂点だけが触れ、その横に空気のすき間ができる。すき間の空気が絶縁衣と電圧を取り合い、先に放電しやすい。 高圧側:平らな金属の電極 空気のすき間 すき間の空気と、電圧を取り合う 空気が先に放電 → 絶縁衣に決めた電圧がかからない

金属の電極を当てただけ

オレンジが絶縁衣。硬い電極は、しわや縫い目の盛り上がりにしか触れず、その横に空気のすき間ができます。

濡れ布をのせる(断面)やわらかい濡れ布は、絶縁衣の盛り上がりにも沿ってぴったり密着し、空気のすき間ができない。濡れ布は絶縁衣の縁まで広げず、乾いた縁を残す。 高圧側:濡れ布 濡れ布が形に沿って密着 すき間がない → 試験電圧が絶縁衣だけにかかる

濡れ布をのせる

やわらかい濡れ布は、盛り上がりにも沿ってぴったり密着します。縁の手前で止めて、乾いた縁を残します。

すき間があると、なぜダメ?

電極と絶縁衣の間に空気のすき間があると、「空気」と「絶縁衣」という2つのコンデンサが直列になって、試験電圧を取り合います。境目では電束密度(ε×E)が等しいので、比誘電率が小さい空気のほうに強い電界がかかります。電圧の分かれ方は「厚さ ÷ 比誘電率」に比例します。

計算例:10,000 Vをかけたとき

空気のすき間 1 mm比誘電率 1 → 1 ÷ 1 = 1
かかる電圧:約6,600 V
絶縁衣 1.3 mm比誘電率を仮に2.5 → 1.3 ÷ 2.5 = 0.52
かかる電圧:約3,400 V
分け方1 : 0.52 の比で10,000 Vを分ける
空気が約3分の2を取ってしまう

空気はおよそ30 kV/cm(1 mmあたり約3 kV)で放電するので、1 mmに約6,600 Vかかったすき間は先に放電します(部分放電)。放電する前の計算でも、絶縁衣にかかるのは約3分の1。これでは「10,000 Vに1分耐えた」とは言えず、放電で表面を傷めるおそれもあります。

厚さ1.3 mmは渡部工業「570 絶縁上衣」の値。比誘電率2.5とすき間1 mmは説明のための仮定です(推定の計算例)。高圧ケーブルの遮へい層が浮いているときに、C1とC2で電圧を取り合うのと同じ形です。

濡れ布の4つの役目

① 電気を通す

水道水には電気を通すイオンが溶けています。JIS T 8010も電極にしみ込ませる液体に水道水を挙げています。試験で流れる電流は小さいので、電極の役目は果たせます(推定)。

② 形に沿う

しわ・縫い目・ふくらみにも沿って、空気のすき間を作りません。これがいちばん大事な役目です。

③ 広い面に当たる

ピンホールや傷がどこにあっても、そこに電圧がかかるように、試験したい範囲を面で覆います。

④ 試験物を傷めない

やわらかいので、試験物を押しつぶしたり変形させたりしません。JISも「変形を加えることなく」密着させるとしています。

濡れ布を使うときに気をつけること

ディスコン棒は、濡れ布ではなく金属はく?

告示の方法は、握り部の頭部寄りに金属はくなどを密着させます(箔が「握る手のかわり」になる理由はこちら)。棒は硬くて丸いので、はくをぴったり巻けます。JIS C 4510の絶縁抵抗・耐電圧試験も、300 mm区間の両端に密着して巻いた金属はくを電極にします。

逆に、棒の表面を濡らすと、表面を伝う漏れの道ができます。屋外用フック棒の「かさ」は、JIS C 4510で「絶縁棒の一部をぬらさないようにするもの」とされています。メーカーも、使う前に乾いた布で拭く、湿気のない屋内に吊るして保管する、としています。

根拠:絶縁用保護具等の規格 第3条 / JIS T 8010:2017 / 名古屋大学OCW 電磁気学Ⅰ 第10回(誘電体の境界条件) / LearnEMC:空気の絶縁破壊 / 渡部工業 570 絶縁上衣。試験の結線・電極寸法・電圧は、承認済みの手順に従います。

特高のディスコン棒は、どう試験する?

試験するのは「フックから、握り部の境まで」の絶縁部。
法令・製品規格・個別発注仕様は、適用範囲が違います。

ディスコン棒(断路器操作用フック棒)で人を守っているのは、先端のフックと、握っている手の間の絶縁部です。手袋のように「壁の厚さ」方向ではなく、棒の長さ方向に電圧をかけます。

① 告示第144号 第9条 器具の性能・試験方法

電圧・時間:使う電路の電圧の2倍・5分

電極:フック(頭部の金物)と、握り部の頭部寄りに密着させた金属はくの間

② JIS C 4510:1991 形式試験・受入試験

電圧・時間:先に絶縁抵抗 2,000 MΩ以上を確認 → 75 kV・5分(30 kVまで上げ、その後は毎秒約1,000 V)

電極:各絶縁棒の任意の300 mm区間の両端に、密着して巻いた金属はくの間

③ 個別の定期試験例 当該機関・発注仕様の適用対象

電圧・時間:13,800 V・5分(九州電気保安協会)/15,000 V・5分(日本原子力研究開発機構の仕様)/20,000 V・5分(札幌市交通局の仕様。特別高圧用を含む)

電極:握り部とフック部の間(札幌市交通局の仕様)

この3欄は、任意に選べる代替手順ではありません。基発第415号は定期検査にも告示の方法を示しています。JISの形式・受入試験や他機関の発注仕様の数値を、別型式・別用途の棒へ転用せず、対象品の適用条件を照合します。

なぜアルミ箔を巻くの?

答えは、アルミ箔が「握る手のかわり」だからです。ディスコン棒が守っているのは、フック(充電部)と、握り部を握る手の間です。試験では、手のいる位置に箔を巻いて接地し、フックに高圧をかけて、その間の壁を確かめます。

アルミ箔は握る手のかわり上は使うとき。握り部をつかむ手は体を通して大地につながり、フックは充電部にふれる。その間を絶縁部が隔てる。下は試験のとき。手の位置にアルミ箔を巻いて接地し、フックに高圧をかけて、同じ絶縁部を確かめる。 使うとき 充電部 手 手と充電部の間の壁(絶縁部) 試験のとき 高圧側(フック) アルミ箔=手のかわり(接地)

手の位置に、手のかわりの電極

上が使うとき、下が試験のとき。手を通して大地へつながる道を、接地したアルミ箔で作ります。

検査機関の説明も同じ

九州電気保安協会は、耐電圧試験を「被試験物の人体がふれる部分と充電部がふれる部分との間に、規定の試験電圧を一定時間加えて耐えるかどうかを試験します。」と説明しています。

ディスコン棒なら、人体がふれる部分=握り部、充電部がふれる部分=フックです。告示第144号 第9条も、握り部の頭部寄りに金属箔等の導電体を密着させ、フックとの間に電圧をかける方法です。

① 手がいちばん近づく所に巻く

巻くのは握り部の頭部寄り(つばのすぐ手前)。手がフックにいちばん近づける所なので、絶縁の長さがいちばん短い=いちばん厳しい条件で確かめることになります(推定)。握り部の端のほうに巻くと、試験する長さが長くなって甘い試験になります。

② 全周にぴったり巻く

絶縁棒は絶縁物なので、ワニ口クリップを直接挟んでも電極になりません。点でしか触れず、まわりに空気のすき間もできます。握る手は全周を包むので、箔も全周に密着させます。濡れ布と同じ「すき間を作らない」ためです。

③ 乾いたまま使える

棒の表面を濡らすと、表面を伝う漏れの道ができます。硬くて丸い棒なら、乾いた箔でもぴったり巻けるので、濡れ布を使う必要がありません。

④ 試験する長さがはっきりする

帯状に巻くと電極の端がはっきりして、どこからどこまでを試験したかが決まります。JIS C 4510が300 mm区間の両端に金属はくを巻くのも、区間の長さを決めるためと読めます(推定)。

フック側にもアルミ箔を巻くのは?

告示の方法では、フック(頭部の金物)そのものが電極なので、フック側の箔は必須ではありません。それでも巻くのは、次の理由だと考えられます(推定)。

  • クリップの接触を確実にする:JIS C 4510では、フックはさび止めを施した金属などです。塗装の上からでは接触が不確実で、曲がった細いフックはクリップも外れやすい。箔を巻けば確実に挟めます。
  • 金具と絶縁棒の境目を密着させる:先端金具と絶縁棒の継ぎ目は、金属・絶縁物・空気が接する所で、電界が集中しやすい場所です。箔を金具から絶縁棒に少しかかるように巻くと、高圧側の電極の端が絶縁物にぴったり付き、試験区間の始まりもはっきりします。握り部の箔と同じ「帯の電極」で挟む形で、JIS C 4510の300 mm区間の試験と同じ考え方です。
  • とがった所を包む:フックの先や角は放電(コロナ)が出やすいので、箔でくるむと少しなだらかになります。

どちらの場合も、確かめているのは「フック(充電部がふれる所)」と「握り部の箔(手のかわり)」の間の絶縁部です。札幌市交通局の仕様書も、握り部とフック部に電極を置く方法です。

注意:フック側の箔を絶縁棒の下のほうまで長く巻くと、巻いた所までは試験されず、試験区間が短くなります。どこまで巻くかは手順書に合わせます。先端が金属でない検電器などは、先端側にも箔などの電極が必要です。

巻くときのコツ(推定)

アルミでないとだめ?

告示は「金属箔等」、JIS C 4510は「金属はく」としか書いていません。アルミ箔は身近で安く、やわらかくて巻きやすいので使われていると考えられます(推定)。銅はくテープなどでも、全周に密着して巻ければ考え方は同じです。巻く位置と幅は、手順書の指定に従います。

JIS C 4510:300 mmの区間ごとに試験絶縁棒に金属はくを300 mm間隔で巻き、隣り合う2本の間に75 kVを5分かける。電極をずらして、区間ごとに確かめる。 JIS C 4510:300 mmの区間ごと 形式試験・受入試験の方法 高圧側 300 mm 75 kV・5分 接地側 電極をずらして区間ごとに。先に絶縁抵抗、次に耐電圧

区間に分けて、全長を確かめる

点線の電極は「次の区間」。JISは各絶縁棒の任意の300 mm区間で、絶縁抵抗(2,000 MΩ以上)と耐電圧(75 kV・5分)を確かめます。

特高だと「2倍」はいくつ?

告示の「使う電路の電圧の2倍・5分」を、公称電圧のまま当てはめて計算すると次のとおりです。

  • 6.6 kV → 13.2 kV・5分
  • 22 kV → 44 kV・5分
  • 33 kV → 66 kV・5分
  • 66 kV → 132 kV・5分
  • 77 kV → 154 kV・5分

高圧の現場で使う可搬形の耐圧試験器では届きません(例:R-1220Kの出力は最大12,000 V)。特高用は、どこに・何kVを・何分かけるかを、製品の取扱説明書と社内手順で決めておく必要があります。

JISが300 mmの区間に分けるのはなぜ?

長い棒の全長に一度に高い電圧をかけなくても、区間に分ければ、現実的な電圧で全長の絶縁を確かめられるからだと読めます(推定)。区間ごとに75 kVなので、300 mmあたり75 kVの絶縁を確かめていることになります。

篠原電機のJIS C 4510品は、1.0 mが10 kV用、1.5 mが20 kV用、2.0 mが30 kV用で、どれも「75 kV 5分間合格」です。適用電圧が上がるほど棒が長い=絶縁部を長くして耐える、という考え方です(推定)。

定期の値が「13,800 V」なのはなぜ?

6.6 kV系統の最大使用電圧は 6,600 × 1.15 ÷ 1.1 = 6,900 Vです。その2倍が13,800 Vなので、「最大使用電圧の2倍・5分」で決めた値だと考えられます(推定)。公称電圧の2倍なら13,200 Vです。15,000 Vや20,000 Vとする個別仕様もありますが、これは対象・区分を離れて選べる代替値ではありません。基発第415号の本則と告示第9条を踏まえ、当該仕様の適用対象・根拠を確認します。

現場で気をつけること

試験の前に

乾いた布で拭き、割れ・傷・曲がり・フックのゆるみを見ます。汚れや湿気は、表面を伝う漏れの原因です。JIS C 4510の試験の順番は、構造検査 → 絶縁抵抗 → 耐電圧です。

継ぎ目・かさ

継ぎ足し式は、つないだ状態で継ぎ目も区間に入れます(JIS T 8010の連結部分の考え方と同じ。推定)。屋外用の「かさ」は絶縁棒の一部を濡らさないためのものなので、割れ・欠けを確認します。

握る位置

試験で確かめたのは、フックから握り部の境までです。安全標示(つば)より上を握ると、試験した壁の外側に手があることになります。

保管・検電器とは別

屋内の湿気のない所に吊るして保管します。耐圧に合格しても、検電器の検知機能の確認にはなりません。

根拠:絶縁用保護具等の規格 第9条 / JIS C 4510:1991 / 九州電気保安協会 / 日本原子力研究開発機構 仕様書 / 札幌市交通局 仕様書 / 篠原電機 / R-1220K 取扱説明書。特高用がどの法令区分に当たるかは、製品の用途・区分と社内規程で確認します。

試験条件は、4つを一組で確認。

確認することなぜ必要?記録する内容
対象と区分同じ見た目でも使用範囲や適用規格が違うメーカー、型式、個体番号、種別、表示された使用範囲
試験の目的製品規格の性能試験と使用中の定期自主検査を区別する適用規程、取説の版、社内手順の番号
電圧・波形・時間AC/DCや保持時間が違えば同じ試験ではない承認された試験電圧、周波数、時間
電極・判定覆われた範囲や表面状態で結果が変わる方法、範囲、状態、電流基準があればその出典
「高圧用だから20kV・1分」で一律にいい?

一律には決めません。告示第144号の第3条には、絶縁用保護具の種別に応じた耐電圧性能と試験方法があり、第5条では防具にも準用されています。一方、使用中の定期自主検査は、対象製品の指定方法・適用条件・社内手順との照合が必要です。表の数字だけを現場の設定値へ転記しないでください。

定期自主検査と使用前点検の関係

安衛則第351条の対象となる絶縁用保護具等は、6月以内ごとに1回の絶縁性能の自主検査と、結果の3年間保存が必要です。長期不使用の例外と再使用時検査の規定もあります。低圧を含む適用対象は第348条と第351条の本文で確認します。定期検査に通っていても、使用直前の傷・汚れ・濡れなどの確認は別です。

異常があるものを、合格ラベルの日付だけで使用可にしません。

試験の流れと、それぞれの理由。

  1. 受入・識別品目、個体番号、左右、前回記録をそろえる。同じ型式の別個体に成績を付けないため。
  2. 外観確認亀裂、切傷、摩耗、べたつき、変形、異物、汚れを指定方法で確認。重大な異常は耐圧をかけて確かめる前に使用区分を見直す。
  3. 条件を確定対象に適用する電極方式、試験電圧・時間、判定基準、試験器の容量と校正状態を照合する。
  4. 試験区域を準備高電圧区域の立入防止、試験器・水槽・治具の接地や保護機構、停止手段を作業計画で確認する。
  5. 指定方法で試験資格・教育と責任範囲を満たす担当者が承認済み手順を実施。試験電圧、時間、電流、異常の有無を記録する。
  6. 停止・放電・確認出力停止だけで触らず、指定の放電と安全確認を終えてから回収する。
  7. 乾燥・判定・管理必要な乾燥、後点検、結果確認。不適合・未判定品は使用品と分け、記録と個体表示を一致させる。

結果の読み方:この3つを混ぜない。

観察意味判断のポイント
貫通する絶縁破壊材料内部に導電経路ができた可能性使用可として戻さず、指定の異常処置へ
縁・表面の放電沿面距離、濡れ、汚れ、電極配置などが関係することがある試験成立性と製品損傷を両方確認。配置を変えて通っただけで良品とはしない
電流が大きい材料の漏れだけでなく容量性電流や表面経路も含み得る品目、電極面積、周波数、試験方法が違う値を単純比較しない
メガーで高いMΩなら、耐圧試験の代わりになる?

なりません。絶縁抵抗測定は定めたDC電圧で抵抗を調べる試験、耐圧試験は指定条件の電圧に耐える性能を確認する試験です。試験目的と電圧条件が異なります。

試験器がトリップしたら即「製品不良」?

異常として停止・安全確認したうえで、試験物の破壊、治具・表面の放電、結線、試験器の容量、設定などを区別します。原因未確定のまま再加圧を繰り返しません。再試験可否は手順と責任者の判断に従います。

残す記録の見本

値は空欄のままです。試験前に出典付きの条件を確定し、実測値を記録します。法定の記録事項と、個体を追跡するための項目をまとめています。

検査年月日:____ 検査者:____ 個体番号・左右:____

メーカー・型式・区分:____ 検査箇所:____

方法・条件の出典/版:____ 外観結果:____

試験電圧・AC/DC・周波数:____ 保持時間:____

測定値・放電/破壊の有無:____ 判定と根拠:____

補修等の措置・再試験・使用区分:____

根拠を読む

品目は整理済みですが、詳細型式と試験条件は未確定です。このページだけでは実施条件は確定しません。

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