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PUKAPUKA FIELD DIARY

📝 ぷかぷか日誌

現場で初めてやったこと、分からなかったこと、テンパったこと。その日のうちに残しておく自分用のフィールドノート。

最終更新:2026.10.26

2026.10.28|絶縁耐力試験・試験器の点検

耐圧試験器の「空打ち」。
R-1220Kは、出力を接地と短絡して遮断を確かめる。

この記事について
試験の前に、耐圧試験器がちゃんと動くかを確かめる「空打ち」のやり方がわからなかったので、ムサシインテックのR-1220K 耐圧トランス 取扱説明書(4110-030ST001 第1版)を読んで整理した記録です。組み合わせる IP-R2000 の取扱説明書(4104-000ST026 第28版)は、こちらの環境で文字が読み取れず、照合できていません。実際の作業は、取扱説明書・会社の点検手順・作業責任者の指示に従います。

「出力を短絡して試験していいの?」と思ったら、取扱説明書にそのまま載っていた。R-1220Kの「遮断電流(S.POINT ADJ)の設定」は、12000V高圧出力端子を接地と短絡して、遮断回路がどの電流で働くかを決めて確かめる手順になっている。大事なのは、短絡する相手。

🔍 1. 空打ちで確かめたいこと 🟢 取扱説明書

確かめたいことやり方取扱説明書
遮断が働くか(設定した電流で止まるか)12000V端子を接地と短絡し、電圧をゆっくり上げて遮断させる3.2.2 遮断電流の設定(p.19〜20)に手順あり
試験電圧まで電圧が出るか、電圧計・タイマーが動くか出力を開放して、ゼロから上げる今回読んだ範囲には手順なし。会社の点検手順に従う

短絡すると電圧はほとんど上がらないので、「電圧が出るか」は短絡では確かめられない。2つは別の確認。🟡 整理

🧷 2. 結線:短絡するのは「12000V端子」と「大地」 🟢 取扱説明書 p.20 図1をもとに作図

トランス部 R-1220K 12000V端子 120V E トランス制御部電流計 mA・S.POINT ADJ IP-R2000極性確認ランプ 点灯 アースサイドコード(一次120V側) TE EARTH 接地コード 耐圧コード(PUN) 短絡線 大地(接地) ○ 12000V端子 ↔ 大地(EARTHの接地側) × アースサイドコードにつながない × トランスのE端子に直接つながない

点線:短絡電流の帰り道(大地 → EARTHコード → 電流計 → TEコード → E端子)。メーカーの図をもとに自分で描き直した原理図です。

○ 電流計のアース(EARTHコード)の接地側
EARTHコードは大地につないだまま。短絡線も同じ接地点へ。こうすると短絡電流が電流計を通るので、遮断回路が働く。
× アースサイドコード
IP-R2000からトランスの120V端子へ行く一次側の線。極性確認ランプが消えていると非接地側が出ていて、接地に触れると非常に大きな電流が流れることがある(取扱説明書の警告)。
× トランスのE端子に直接
E端子は「トランス制御部の電流計を通して接地へ」つながる(p.16)。E端子に直接つなぐと電流計を通らず、遮断の確認にならないはず。🟡 文面からの推論

📋 3. 手順(3.2.2 遮断電流の設定) 🟢 取扱説明書 p.18〜19

準備

  1. R-1220Kの12000V高圧出力端子を、接地と短絡する。
  2. 主電源をON、STARTを押す。
  3. 電圧電流調整器をゆっくり回し、トランス制御部の電流計を見ながら、充電電流の150%くらいにする。出力を短絡しているので、少し回しただけで電流計が振れる。過電流を流さないように注意。
  4. S.POINT ADJ を時計方向にゆっくり回し、遮断回路が動いて止まったところでそのままにする。これで遮断電流が設定される。
  5. 電圧電流調整器を0に戻す。
  6. STARTを押し、ゆっくり上げて、設定した電流で遮断することを2〜3回確かめる。
  7. 主電源をOFF。
  8. 短絡していた導線を外す。

🛑 4. 気をつけること 🟡 自分の決めごと

🛟 今日のうきわメモ

① R-1220Kの遮断の確認は、12000V端子を接地と短絡して行う手順が、取扱説明書に載っている(3.2.2)。

② 短絡の相手は、EARTHコード(電流計のアース)の接地側=大地。アースサイドコードやトランスのE端子ではない。

③ 短絡の確認でわかるのは「遮断が働くか」。「電圧が出るか」は、出力を開放して別に確かめる。

④ 終わったら短絡線を外す。付け外しは電源を切ってから。

※ 手順とページ番号は、ムサシインテック R-1220K 耐圧トランス 取扱説明書(4110-030ST001 第1版)によります。IP-R2000 取扱説明書(4104-000ST026 第28版)は照合できていません。試験器の型式・版が違う場合は、手元の取扱説明書で確かめます。
2026.10.25|継電器試験・連動試験

67の試験でトリップコイルが焼けて、67まで壊れた。
引外し回路は「1本の直列回路」だった。

この記事について
67(地絡方向継電器)の試験中に起きたことを、あとから回路で整理した記録です。67が壊れた原因はまだ確かめられておらず、ここに書いたのは考えられることです。図は自分で描いた原理図で、端子や引外し電源は盤ごとにちがいます。実際の試験は、展開接続図、継電器・遮断器の取扱説明書、作業責任者の指示に従います。本記事は日誌であり、作業手順書ではありません。

67の連動試験で、VCBはちゃんとトリップした。なのにトリップコイル(TC)の電流が切れず、直流がかかり続けてTCが焼けた。さらに67まで、I0の表示が点いたまま戻らなくなった。最初は「TCの回路と67は別の回路なのに、なぜ67まで?」と思った。答えは、別の回路ではなかった。

VCBの操作機構。中央のトリップコイルの巻線が黒く焼け、溶けたワニスが下の板金まで流れて固まっている。奥の板にも焼けた跡がある。

焼けたトリップコイル。巻線が黒く焦げて、溶けたワニスが下まで流れていた。奥の板にも焼けた跡。

⚡ 1. 引外し回路は、67の接点・52a・TCが1本につながっている 🟢 回路の基本

電圧引外し(DCなど)の回路は、電源 → 67の出力接点 → 52a(VCBの補助接点)→ TC → 電源の順に、1本の直列回路でできています。10/20の日誌で整理したT1-T2の回路と同じです。

順番は、67が動作して接点が閉じる → TCに電流が流れる → TCが機構を外してVCBが開く → VCBと連動して52aが開く → TCの電流が切れる。52aを開くのはTCではなく、VCBが開く動きです。

① ふだん(VCBは入)直流電源67の接点開いている52a閉じているTC67は動いていない。52aは閉じて待っている
② 67が動作直流電源67の接点閉じる52a閉じているTC67の接点が閉じて、TCに電流。TCが機構を外す
③ VCBが開く → 52aも開く直流電源67の接点まだ閉じている52a開いて切るTCVCBが開くのと連動して52aが開き、TCの電流が一瞬で切れる
③’ 昨日:52aが開かない直流電源67の接点閉じたまま52a開かないTC焼損52aが開かず、TCにも67の接点にも同じ直流が流れ続けた

TCに流れ続けた電流は、同じ回路の67の接点にも、ずっと流れていた。「TCの回路」と「67」は、別のものではなかった。🟡 整理

🧪 3Dモデルで見る
VCBの中を3Dで見る:52aはどこにある?(引外しの順番と、52aを回すリンクが外れたときにTCが焼ける様子を再生)

🧩 2. 役割分担:入れるのは67、切るのは52a

部品役割想定している使い方
67の出力接点回路を入れる電流を流し始め、遮断器が開くまでの短い時間だけ流す
52a(VCBの補助接点)回路を切るVCBが開くのに連動して開き、TCの電流を止める
TC(トリップコイル)引外し機構を動かす一瞬だけ電流が流れる前提。流し続けると焼ける

今回は、切る役の52aが働かなかった。そのため、入れる役の67の接点と、一瞬だけのはずのTCが、長い時間電流を負担することになった。🟡 整理

🔍 3. なぜ67まで壊れたのか(考えられること) 🟡 推定

① 接点に流れ続けて過熱
出力接点は、TCの電流(数A程度)を短い時間流す前提。何十秒も流し続けると、接点やまわりの部品が熱で傷む。
② 最後に直流を切らされた
TCが焼けて切れたとき、または試験器が止まったとき、67の接点がコイルの直流電流を切ることになった可能性。直流のコイル電流は、切るときにアークが出やすく、逆起電力で高い電圧も出る。接点の溶着や、内部の出力回路の損傷につながる。
③ 試験器が止まらなかった
試験器の停止をVCBの補助接点で取っていた場合、52aが変わらないので試験器は「まだ遮断していない」と判断し、I0・V0をかけ続ける。そのあいだ67は動作し続け、接点も閉じたまま。

I0の表示が点いたまま戻らないのは、出力接点の溶着や内部回路の損傷で、動作した状態から戻れなくなったと考えるのが自然。ただ、どこが壊れたかは機種の内部構造によるので、断定はできない。🟡 推定

✅ 4. これから確かめること

VCBの52a
補助スイッチのリンクの外れ・曲がり、調整のずれ、接点の溶着。TCのすぐそばまで焼けているので、補助スイッチのまわりも点検する。
67の出力接点の定格
取扱説明書の「投入容量」「通電容量(何秒まで)」「開閉容量(直流・誘導負荷)」を見て、どれを超えたのかを確かめる。
試験器の停止条件
停止信号を67の接点から取っていたのか、VCBの補助接点から取っていたのか。
修理のあと
TCと67を交換したら、連動試験でTCの電流が遮断と同時に切れることまで確かめる。

🛑 5. 次の試験で気をつけること 🟡 自分の決めごと

🛟 今日のうきわメモ

① 引外し回路は、電源 → 67の出力接点 → 52a → TC の1本の直列回路。TCに流れた電流は、67の接点にも流れている。

② 入れるのは継電器の接点、切るのは遮断器の52a。継電器の接点は、TCの電流を流し続けたり切ったりする前提ではない。

③ 52aが開かないと、TCも継電器の接点も電流を負担し続けて、両方が壊れることがある。

④ 遮断したのに電流が止まらないと気づいたら、すぐに試験器の出力と操作電源を切る。

※ 引外し方式、端子、引外し電源、試験器の停止のさせ方は盤と機器ごとに異なります。出力接点の定格は、対象機種の取扱説明書で確認します。今回の67の故障の原因は推定で、メーカーの調査結果ではありません。
2026.10.21|竣工検査の予習・絶縁耐力試験

ローソンの竣工の前に、短絡クリップのつなぎ方を整理した。
9つの点を同電位にすれば、つなぎ方は何通りあってもいい。

この記事について
次の現場(コンビニの新設・柱上にVCTが付く設備)に向けて、短絡クリップのつなぎ方と、耐圧試験で何が起きているかを予習した記録です。図は自分で描いた原理図で、実際の機器の配置や端子名とはちがいます。PASの処置(内蔵LA・VT・制御線)は機種ごとの取扱説明書、試験の範囲・開閉状態・試験電圧は作業責任者の指示と社内手順に従います。本記事は日誌であり、作業手順書ではありません。

今度の竣工はローソン。セブンイレブンの竣工で、柱に昇ってPAS負荷側と立上りケーブルを短絡クリップでつないだ、あの作業がまたあります。ただ、あのときは「言われたところをつまんだ」だけで、なぜその形なのか、ほかのつなぎ方ではだめなのかが自分の中で整理できていませんでした。図を描きながら、一つずつ確かめました。

🟢 取扱説明書・過去の日誌で確認🟡 自分で整理した考え

🪜 1. なぜ柱の上でクリップをつなぐのか

コンビニのような小さい高圧の設備では、取引用の計器(VCT)が電柱の上、PASと立上りケーブルの間に付くことがあります。VCTは電力会社の機器で、竣工検査の時点ではまだ付いていません。だから柱の上では、PAS負荷側のリード3本と、立上りケーブルの端末3本が、離れたままになっています。

PAS(柱の上)
↓ 負荷側リード U・V・W
(ここにあとでVCTが付く。今は離れている)
↓ 立上りケーブル 3心
キュービクル

PASとケーブルを1回の耐圧試験でまとめて試すには、この離れているところをクリップでつなぐ必要があります。これが柱の上の作業の目的です。

📍 2. 同電位にするのは「9つの点」

3相一括の耐圧試験のゴールは、試験する導体を全部ひとつにつないで、同じ電位にすること。数えると、つなぐ点は9つあります。

場所点つなぎ方
柱の上:PAS負荷側U・V・W の3点クリップでつかむ
柱の上:ケーブル上端3心の3点クリップでつかむ、または芯線を通して下から
キュービクル側:ケーブル下端3心の3点クリップで三線短絡

ポイントは、ケーブルの芯線は上から下まで1本の導体だということ。上端と下端は最初からつながっています。だから、どちらか片方の端でつないでいれば、もう片方の端も同じ電位になります。🟡 整理

⚡ 3. 電圧は「どこに」かかっているのか

赤いところは、全部 10,350VPAS(柱の上)キュービクル側UVW試験器クリップなしでも10,350V遮へい層 0V芯線 10,350V大地(接地) 0V

自分で描き直した原理図。点線のカプセルがケーブルの遮へい層(接地されていて0V)。柱の上はクリップ1個で「PASのU・V・W+ケーブル1心」をつないだ形

水道でたとえると、試験器は水を押し込むポンプで、赤い線はつながった水道管です。どこか1か所から押し込めば、つながった管の中はどこも同じ水圧になります。右上の、クリップをつけていないケーブル上端は「管の行き止まり」。行き止まりでも水圧は同じなので、ここにも10,350Vがかかっています。

電圧は「2点の差」なので、

赤と赤の間(相どうし)
両方とも10,350V。差は0V。PASの内蔵VTはU-V間につながっているので、両端がそろっていればVTにかかる電圧も0V。
赤と点線の間(芯線と遮へい層)
10,350Vと0V。差は10,350V。ここにある絶縁体(架橋ポリエチレン)が、耐圧試験で試されているところ。
今日いちばん腑に落ちたこと
3相一括の耐圧試験は、導体を全部同じ電圧に持ち上げて、「導体と大地の間の絶縁」をいっぺんに試す試験。相どうしには電圧をかけない。だから、相が1本でも浮くと「相どうしに電圧がかかる」という、本来の試験とちがう状態になってしまう。🟡 整理

🔗 4. 4口の短絡クリップで、どうつなぐか

使う短絡クリップは、1本の線から口(クリップ)が4つ出ているタイプ。1個で4つの点を同電位にできます。下の図は柱の上の6点(PAS 3点・ケーブル上端3点)だけを描いています。キュービクル側は、どのつなぎ方でも4口クリップで3心を三線短絡し、残りの1口に試験器をつなぎます。

① 基本:柱の上は1個PASケーブルPAS 3相+ケーブル1心。残りの2心はキュービクル側の短絡で同電位
② 2重(おすすめ)PASケーブルA(実線)もB(点線)もPAS 3相をつかむ。どの口が1つ外れてもPASは浮かない
③ つなぎ目を2重(○)PASケーブルPASとケーブルの間は2重。ただしPASのU・Vは1口ずつ
✕ PASのUをつかまないPASケーブルクリップなしV・Wだけに電圧。U-V間のVTの両端に電位差ができ、VTに電流が流れる

自分で描いた原理図。白い点が柱の上の6点、線の集まる小さな丸がクリップ本体。✕でなぜVTが危ないかは、下の「なぜPASはつかみ忘れてはだめか」へ

いろいろ描いてみてわかったのは、正解は1つではないということ。判定はひとつだけです。

9つの点が、クリップかケーブルの芯線を通って、全部ひとつにつながっているか。とくにPASのU・V・Wは、柱の上で必ず全部つかむ。

ケーブル側は、キュービクル側の三線短絡と芯線でカバーできます。でもPAS側は、柱の上でつかまなければ、どこにもつながりません。相ごとに1本ずつ(U-U、V-V、W-W)つなぐ方法も、キュービクル側で三線短絡していれば9点が同電位になります。ただ、4口クリップを2口ずつしか使わないので、柱の上で3個必要になります。🟡 整理

なぜPASはつかみ忘れてはだめで、ケーブルは浮いてもいいのか

「浮く」とは、その点がどこにもつながっておらず、電位が決まっていない状態のことです。試験器ともつながっていないし、大地にもつながっていない。その点の電圧は、まわりに何がつながっているかで勝手に決まってしまいます。

○ 左上の形:ケーブル上端をつかまない

PASケーブル(上端)下の短絡VTの巻線(細い道)芯線(太い道)試験器クリップUVWつかんでいない

黄色の2点はつかんでいないが、芯線(青い太い道)で下の短絡とつながり、10,350Vになる。

✕ 右下の形:PASのUをつかまない

PASケーブル(上端)下の短絡VTの巻線(細い道)試験器クリップUVWUはつかんでいない

PASのUに残る道はVTの巻線(赤い細い道)だけ。Uを充電する電流が全部巻線を通り、巻線に電圧がかかる。

決め手は1つだけ。つかんでいない点に、太い道が残っているか。ケーブル上端には芯線という太い道がある。PASの端子には、巻線という細い道しかない。

⚠️ 最初「浮く」と言っていたけれど、厳密には浮いていない

PASのUは、VTの巻線を通ってVとつながっている。巻線でつながっているからこそ危ない。本当にどこにもつながっていなければ、電流の通り道がないので、ケーブルの心と同じく「試験されないだけ」で済む。巻線という細い道だけでつながっているから、そこに電流が押し込まれる。クリップでつなぐのは、巻線の横に太いバイパスを作って、UとVを同じ電位にそろえること。そうすれば巻線の両端は0Vで、電流は流れない。🟡 整理

PASのUの状態どうなるか
クリップで直接つながっているUとVが同電位。巻線の両端は0Vで、電流は流れない ○
VTの巻線だけでつながっている(クリップのつかみ忘れ)Uの電位は巻線と対地静電容量の分け合いで決まる。巻線の両端に電位差ができ、巻線がUを充電する通り道になる ✕
どこにもつながっていない(本当に浮いている)電流の通り道がない。試験されないだけ(ケーブルの心と同じ)
PAS:相と相の間にVTがある
内蔵VTの一次巻線は、日本高圧電気の取扱説明書では負荷側のU相−V相の間につながっている(戸上電機の製品ページは「負荷側にVT内蔵」までで、どの相の間かは書かれていない)。Vに10,350VがかかってUをクリップでつかんでいないと、UはVTの巻線だけでVとつながる。Uの電位は巻線と対地静電容量の分け合いで決まり、Vと同じにならない。電流は V → VTの巻線 → U → Uの対地静電容量 → 大地 と流れ、VTに試験電圧の一部がかかる。VTは6,600Vで使う設計なので、過励磁・焼損のおそれがある。メーカーも「一相のみの印加はVT・SOG制御装置焼損の原因」としている。🟢 日本高圧電気の取扱説明書・戸上電機の製品ページ
ケーブル:芯線どうしの間に何もない
ケーブルの各心は、自分の遮へい層とのあいだに絶縁体があるだけ。心と心の間には、VTのような電流の通り道がない。浮いた心は、遮へい層(0V)に囲まれているので、電圧が上がらず試験されないだけ。壊れるものがない。しかも今回の接続では、ケーブルの心は下で短絡しているので、そもそも浮いていない。

浮いた相にどれだけの電圧がかかるかは、その相にぶら下がっている対地静電容量(ケーブルの長さなど)で変わります。ケーブルが短いとほとんどかからず、ある長さで共振に近づいて大きくなり、30mくらいでは定格の約1.7倍になる例もあります(二次開放などを仮定したモデル)。「たまたま大丈夫」かどうかは結線しだいで読めない。だから、PASのU・V・Wは必ず全部つかむ、というのが結論です。

どのくらいの電流で焼損するのか

確認したメーカー資料では「何mAで何秒」という焼損限界は分からなかった。以下は負担の換算と、条件を置いた充電電流の概算。焼損の判定値ではない。🟢 メーカー資料🟡 計算

項目値
定格負担の一次換算電流(励磁分・損失を含まない)戸上電機 25VA → 約3.8mA/日本高圧電気 10VA → 約1.5mA
1心0.32μF/km・10,350V、VTインピーダンスを十分小さいと仮定した充電電流50Hz 約1.0mA/m、60Hz 約1.25mA/m。30mで31〜37mA
ここから判断できないこと換算電流は巻線の許容電流ではない。励磁特性・巻線抵抗・熱特性を確認できていないため、発熱倍率や焼損時間は求められない
VTの二次が開いている場合電流ではなく過電圧(線形モデルで30m 約1.7倍)→ 鉄心が飽和 → 励磁電流が急増。どこまで増えるかは励磁特性しだいで数字にできない

15mなら上の仮定では約16〜19mA。ただし端子のつかみ忘れの図へ、ケーブル長を無条件に当てはめることはできない。数値で一相試験の可否を判断せず、メーカーの禁止事項を守る。負担の換算値と焼損限界の区別を、計算できる電流と、分からない焼損限界に整理し直した(2026-10-24追記)。

🛡️ 5. 安全のために2重にするなら

柱の上で口が1つ外れると、そこが浮きます。不安だったので、クリップを2個使って2重にする形を考えました。柱の上で守る優先順位は、PASのU・V・W(=内蔵VTの両端)が浮かないこと。だから、2個とも3口でPASのU・V・Wをつかみ、残りの1口でそれぞれ別のケーブル心をつかむ形(4章の図②)にしました。

外れたものどうなるかVT
PAS側の口が1つ外れるもう1個のクリップが同じ相をつかんでいるので、浮かない安全
ケーブル側の口が1つ外れるもう1個のクリップと、キュービクル側の短絡でつながったまま安全
柱の上のクリップが1個まるごと外れる残りの1個で「PAS 3相+ケーブル1心」。図①と同じで○安全
キュービクル側のクリップがまるごと外れる試験器もそこにつないでいるので、どこにも電圧がかからない安全
キュービクル側の1口だけ外れるその1心が試験されない(柱の上でつかんでいない心なら)安全

どの外れ方でも、PASの3相が柱の上でまとまっているので、VTは安全側になります。困るのは「試験したつもりで、一部に電圧がかかっていなかった」ほう。それに気づくには、試験器の充電電流が計算値と合っているかを見ます(10/7のIP-1110の日誌で計算した、あの充電電流です)。🟡 整理

クリップのないケーブル上端
見た目は浮いているけれど、芯線を通ってキュービクル側とつながっていて、10,350Vがかかる。端末のテープは巻いたままにして、腕金・電柱・架台から離す。
同じ端子に2口かませられるか
2重にすると、PASの各リードを2つの口でつかむことになる。端子の大きさと、口どうしが干渉しないかは、現場で確かめてから決める。
リードをまとめる
柱の上で口が8つになるので、リードも増える。たるんだり交差したりして、接地物に近づかないようにまとめる。
回収の数を合わせる
付けた個数と外した個数を数えて合わせる。VCTはあとで電力会社が付けるので、クリップが残ると受電時に大事故になる。

🗺️ 6. 当日の流れ(予習)

大前提:VCT未設置・引込線とつながっていない・PAS電源側リードがどこにもつながっていないことを確認。検電して無電圧、ケーブルの残留電荷を放電
↓
接地抵抗測定(A種:PAS・LA・高圧機器の外箱、B種、D種)
↓
短絡クリップを全部の口で導通確認(地上で)
↓
キュービクル側:ケーブル端末の扱い(切り離すか、試験範囲に含めるか)を確認し、4口クリップで3心を三線短絡
↓
昇柱:PAS銘板の撮影、PAS本体への接地線の確認、取扱説明書どおりに制御線の処置
↓
柱の上:4口クリップでPASのU・V・W+ケーブルをつかむ。離隔を確認。PASの開閉状態は責任者に確認
↓
耐圧前の絶縁抵抗測定(メガー)
↓
立入禁止・見張り → 試験器の接地側を先に、次に高圧側 → 10,350Vを10分。充電電流を記録して計算値と比べる
↓
電圧を0にして放電・接地 → 耐圧後の絶縁抵抗測定
↓
クリップ撤去(個数を確認)・テープ復旧・制御線の復旧
↓
継電器試験・SOG試験 → PAS操作ひもに「操作禁止」の施錠

PASの処置は、IP-1110の日誌で取扱説明書を確認した内容です。LA内蔵形のPASは、交流10,350Vの3相一括なら試験できる(上限電圧や、直流耐圧をしないことはメーカー指定あり)。制御線は全部外して端末を一括接地するなど、メーカーごとの指定があります。当日のPASの型式で取扱説明書を確認します。🟢 取扱説明書で確認済み(10/7の日誌)

「LAの接地線を外すのでは?」と最初は思っていたけれど、日誌を見返したら、確認した取扱説明書ではそうなっていなかった。思い込みで手順を足さず、型式の取扱説明書に戻る。

🔬 7. 耐圧試験(絶縁耐力試験)とメガーのちがい

ホースでたとえると、メガーは「ふだんの水圧で、じわっと水がしみていないか」を見る測定。耐圧試験は「わざと強い水圧をかけて、10分間破裂しないか」を見る試験です。

絶縁抵抗測定(メガー)絶縁耐力試験(耐圧)
調べること電気をどれだけ通しにくいか(漏れ電流)高い電圧に耐えられるか
電源直流(高圧なら1000V以上のメガー)交流10,350V(最大使用電圧6,900Vの1.5倍)を10分
結果数値(MΩ)合格/不合格
機器への影響傷めない弱いところは壊れる(壊して見つける)

ふだん、芯線と大地の間にかかっている電圧は 6,600 ÷ √3 ≒ 3,810V。耐圧試験ではそこに10,350V、約2.7倍をかけて、絶縁を「しごいて」います。施工時の傷や端末処理のミスのように、ふだんの電圧ではすぐに壊れない弱点を、送電する前の安全な状態であぶり出すのが目的です。

耐圧試験の電流計に出るのは、ほとんどが充電電流です。芯線と遮へい層がコンデンサになっているためで、本当の漏れ電流はその中に埋もれてしまいます。だから耐圧試験は数値を読む試験ではなく、「何も起きずに耐えたか」を確かめる試験。漏れ電流(絶縁の良し悪し)を見るのは、前後のメガーの役目です。

メガー:今の絶縁は良いか(悪ければ耐圧に進まない)
↓
耐圧:高い電圧に耐えるか(弱点があれば、ここで絶縁破壊する)
↓
メガー:耐圧で絶縁を傷めていないか

💥 8. 現場でいう「はねた」とは

先輩たちがよく「はねた、はねた」と言っていたけれど、何が起きているのかわかっていませんでした。絶縁破壊は、限界を超えた電圧で、絶縁物を電気が突き破って一気に流れてしまう現象(空気なら1mmあたり約3,000Vが目安)。「はねた」は、そのときの大きな電流で、試験器の過電流保護が働いて出力が切れたことを言っています。

10,350Vをかけている。ふだんは充電電流だけ
↓
どこかで絶縁が負けて、放電・絶縁破壊
↓
芯線から大地へ一気に電流が流れる
↓
試験器の過電流保護が働いて、出力を切る ← 「はねた」
はねる原因どこでケーブルは?
貫通破壊架橋ポリエチレンに穴があき、芯線と遮へい層がつながる壊れている。補修・交換
沿面放電ケーブル端末の表面を伝って放電(汚れ・湿気・端末処理の不良)本体は無事なこともある
リード・クリップからの放電試験用のリードやクリップが、腕金・盤に近すぎて空気中で放電無関係
試験器の容量オーバー絶縁は悪くないが、ケーブルが長くて充電電流が試験器の上限を超えた無関係

はねたら「ケーブルが壊れた」と決めつけずに、電圧をどこまで上げたときか、放電の音や光はあったか、メガーで測り直してどうかを見て切り分けます。メガーの値が大きく下がっていれば貫通の可能性が高く、良いままなら端末の表面やリードまわりを疑います。柱の上でクリップの離隔を気にするのは、3つ目の「ケーブルは悪くないのにはねる」を防ぐためでもありました。🟡 整理

🛟 今日のうきわメモ

① 3相一括の耐圧は、9つの点(PAS 3・ケーブル上端3・下端3)を全部同電位にすれば、つなぎ方は何通りあってもいい。

② ケーブルの芯線は上から下まで1本。下で短絡していれば、上端はつかまなくても同じ10,350V。

③ PASのU・V・Wは、柱の上で必ず全部つかむ。相の間にVTがあるので、1相でも浮くとVTに電流が流れる。ケーブルは心の間に何もないので、浮いても試験されないだけ。2重にするならPAS側を2重に。

④ 電圧がかかっているのは「芯線と遮へい層・大地の間」。相どうしは0V。

⑤ メガーは絶縁の良し悪しを数値で、耐圧は「壊れずに耐えるか」を合否で。「はねた」は試験器の保護が働いたことで、原因は4つに分けて考える。

セブンのときは「言われたところをつまむ」で精一杯だった作業が、電圧がどこにかかっているかを描いたら、つなぎ方を自分で選べるようになった。ローソンでは、どう付けたかと充電電流を記録して、この記事の答え合わせをします。

※ この記事は、竣工検査に向けた予習の日誌です。柱上VCTの有無、PASの形式(内蔵VT・LA・制御線)、試験範囲、PASの開閉状態、試験電圧・時間、短絡クリップの仕様は設備と現場で異なります。実際の作業は、単線結線図・竣工図、PASと試験器の取扱説明書、社内手順・操作票、作業責任者の指示に従い、高所作業では墜落制止用器具と親綱の掛け替えで安全措置が途切れないことを前提とします。耐圧試験の一括用クリップと作業用短絡接地器具は用途が異なり、相互に代用しません。
2026.10.20|連動試験・引外し方式

ヒューズクリップでT1-T2をつなぐと、なぜ遮断器が動くのか。
電圧引外しの連動試験を、回路から考える。

この記事について
遮断器との連動試験で、ずっと「なぜ動くのか」がわからなかったことを整理した記録です。図は自分で描いた原理図で、端子の名前(T1・T2)や引外し電源の種類は機種ごとにちがいます。実際の試験は、展開接続図、継電器・遮断器の取扱説明書、作業責任者の指示に従います。本記事は日誌であり、作業手順書ではありません。

遮断器との連動試験で、継電器のT1-T2端子をヒューズクリップでつなぐと遮断器が動作します。最初はなぜ動くのかわかりませんでした。でも、a接点(ふだん開いている接点)で引き外す方式だと考えると納得できました。保護継電器の研修で習った「引外し方式」の続きです。

ふだん電源DC・VT・コンデンサT1T2a接点(開)TC接点が開いていて、TCに流れない
クリップでT1-T2をつなぐ電源DC・VT・コンデンサヒューズクリップT1T2TC接点が閉じたのと同じ → TCへ → 引外し

自分で描き直した原理図。端子の名前(T1・T2)や引外し電源の種類は、機種ごとの展開接続図で確認する

電圧引外し(DC・コンデンサ・VTの電圧で引き外す方式)は、引外し用の電源 → 継電器の接点(T1-T2)→ TC → 電源の順に回路ができています。ふだんは接点が開いているのでTCに電流は流れず、継電器が動作して接点が閉じると、電源からTCに電流が流れて遮断器が引き外れます。

ヒューズクリップでT1-T2をつなぐのは、継電器を動かさずに「接点が閉じた状態」を手で作るということ。これで、接点から先の配線・TC・遮断器本体がちゃんと動くかを確かめられます。

電流引外しではこの方法は使えない
電流引外しは、b接点が開くことでCT二次電流をTCへ流す方式。端子をつないでもTCをバイパスするだけで、遮断器は動かない。そもそも停電中はCTに電流がなく、引外しのエネルギーがない。こちらは試験器で継電器に電流を流し、実際に動作させて連動を確かめる。
クリップで動いたら方式がわかる
つないで遮断器が動くなら、その盤はa接点で引き外す方式(DC・コンデンサ・電圧引外し、GR・DGRの出力など)。どの端子をつなぐかは、必ず展開接続図で確認してから。
クリップの外し忘れに注意
つないだままだと「接点が閉じっぱなし」と同じなので、遮断器を投入してもすぐ引き外れる。試験が終わったら外して、作業責任者と確認する。

🛟 今日のうきわメモ

① 電圧引外し(DC・コンデンサ・VTの電圧)は、引外し電源 → 継電器の接点(T1-T2)→ TC の回路。

② T1-T2をクリップでつなぐのは、継電器を動かさずに「接点が閉じた状態」を手で作ること。接点から先の配線・TC・遮断器本体を確かめられる。

③ 電流引外しは、b接点が「開く」ことでTCに電流を流す方式なので、クリップでつないでも動かない。試験器で継電器に電流を流して確かめる。

④ 試験が終わったらクリップを外す。つないだままだと、投入してもすぐ引き外れる。

※ 引外し方式、端子番号、引外し電源は盤ごとに異なります。どの端子をつなぐか、つないでよいかは、必ず展開接続図と作業責任者に確認します。通電中のCT二次回路は開放しません。
2026.10.13|スマート保安・三相4線式・CT

三相4線式のトランスにスマート保安を付けてきた。
負荷電流を見るのに、なぜCTは2つではなく3つなのか。

この記事について
今日の現場で見たこと(🔵)に、電気回路の基本、メーカーの資料、大学・高専の講義資料、電気保安協会や電気管理事務所の解説(🟢)を突き合わせて整理した記録です。「推定」(🟡)と書いたところは自分で読み取ったり計算したりしたもので、資料に書いてあることではありません。取付けや設定は、装置の取扱説明書、社内手順、作業責任者の指示に従います。

今日は、6600V/420Y/242V・200kVAの油入変圧器(2024年製)の二次側に、スマート保安の負荷監視用のCTを3つ付けてきました。高圧の受電点のCTはR相とT相の2つなのに、なぜここは3つ要るのか。「そもそも三相4線式とは?」から順番に、一本の線でつなげます。

📷 1. 今日の現場:二次側から線が4本出ている変圧器

写真の製造番号は伏せています。🔵 今日の現場

油入変圧器の上面。手前に一次側のU・V・Wのがいし3つ、奥に二次側の端子が4つ並ぶ。右下に銘板。

手前が一次(6600V)のU・V・W。奥に並ぶ二次の端子が4つ。3相+中性点です。

盤内の端子台。T1P01からT1P04、T1C1からT1C4の札。その下に黒い分割形のCTと灰色の線。下に検相の記録票。

端子台のT1P01〜04とT1C1〜C4。下に黒い分割形のCTと灰色の線。いちばん下は検相の記録票。

銘板から読んだことです。容量の数字はかすれていましたが、定格電流から計算すると200kVAで合います。🔵 銘板

項目銘板読み方
相数・周波数3・50/60Hz三相
定格電圧一次 6600V
二次 420Y/242V
「Y」は二次がY(星形)結線という意味。線と線の間が420V、線と中性点の間が242V。420÷√3≒242.5
定格電流一次 17.5A
二次 275A
200kVA÷(√3×6600V)≒17.5A、200kVA÷(√3×420V)≒275A。二次の1相あたりの上限の目安
結線図一次は三角(Δ)、二次は星形(Y)二次の3つの巻線をまとめた点(中性点)を、4本目の端子として外に出している
電圧:T1P01〜04の4本
3相+中性線の4本を装置に入れていると読みました。🟡 推定
電流:T1C1〜C4の4本
CTを3つ使い、二次側の片方を共通線でまとめると「各相3本+共通1本」の4本になります。その形だと読みました。🟡 推定
共通線に流れるもの
3つのCTの二次電流が合流するので、共通線には3相の電流の和(=中性線の電流に比例する分)が流れることになります。3章の式そのものです。🟡 推定
検相の記録
検相器の赤・白・青 → 電線の赤・黒・青で正回転。CTを付ける相も、この色の順番でそろえます。🔵 記録票

🔺 2. そもそも三相4線式とは

変圧器の二次の3つの巻線をY(星形)につなぎ、3つがまとまる点=中性点から、4本目の線(中性線、N)を引き出す配電方式です。相の線3本+中性線1本で4本。

三相4線式:Y結線の中性点から4本目を出す 変圧器の二次(Y結線) 中性点 B種接地 R S T N iR iS iT iN(中性線を戻る) M 線と線の間 420V 三相電動機など(動力) R–NS–NT–N 相と中性線の間 242V(照明・単相の機器など) 中性線に戻る電流=3相の電流の和(瞬時値) iN = iR + iS + iT

← 図は横にスクロールできます →

模式図です。線の色は図の見分け用で、現場の電線の色とは関係ありません。

線と線の間:420V
三相の電動機やポンプなど、動力に使う。
相と中性線の間:242V
照明や単相の機器に使う。中性線は、その電流の戻り道。

4本の線と1台の変圧器で、動力と電灯を両方まかなえるのがいちばんの特徴です。パナソニックの解説では、三相4線式は大型のビルや工場で、電灯と動力をまとめた回路に使う方式として、415V/240Vなどの電圧と一緒に紹介されています。🟢 パナソニック

1977年の日立評論の論文では、ビルの配電で415/240Vの三相4線式が、それまでの200/105Vに代わって広がりつつあると書かれています。理由は、中間の変圧器が要らない、400V級の電動機が使える、電灯と動力を同じ4本で送れる、配電設備費を減らせる、など。🟢 日立評論 1977

方式線の数電圧の例主な使いどころ
単相3線式3100V/200V住宅・店舗の照明・コンセント
三相3線式3200V(高圧の受電は6600V)動力。高圧の受電もこの形
三相4線式4415V/240V、今日の420V/242Vなど大型ビル・工場の照明と動力

中性点は、B種接地をとる点でもあります。B種接地は、高圧を低圧に下げる変圧器の低圧側の中性点に施す接地で、高圧と低圧が混ざったときに低圧側の電位が上がるのを抑えるためのものです。🟢 パナソニック

➕ 3. 電流の足し算:3本なら和はゼロ、4本目があると決まらない

負荷側をまるごと1つの箱で囲んで考えます。箱に入る電流と出ていく電流は、どの瞬間も等しい(キルヒホッフの電流則)。この「箱から何本の線が出ているか」で、すべてが決まります。

三相3線式 戻り道がない(線は3本だけ) 負荷側 RST CTCT ? iR + iS + iT = 0 → iS = −(iR + iT) 計算で出る
三相4線式 中性線という戻り道がある 負荷側 RSTN CTCT ? ? iR + iS + iT = iN → 式は1本、分からないのは2つ。決まらない

三相3線式:3本の電流の和は、どんなに不平衡でも、どの瞬間もゼロ。だから2つ測れば、3つ目は引き算で出る。
三相4線式:3本の和は中性線の電流。中性線の電流は、相と中性線の間につないだ負荷の偏りしだいで変わる。だから2つ測っても、残りの相と中性線の2つが分からないまま。3つ目のCTを付けると、3相がそろい、中性線の電流も足し算で出せる。

電力計測器メーカーeGaugeの解説も同じ説明です。中性線のない3線式は3相の電流の和がゼロなので、残りの相の偏りは測った2相に表れている。4線式は3相すべてにCTを付け、中性線には付けない。中性線に流れる偏りは、3相の測定にすでに含まれている。🟢 eGauge

高圧の受電(6600Vの三相3線式)でCTがR相とT相の2つで済み、電流計切換スイッチでS相も表示できるのは、この「和がゼロ」を使っているからです。OCRタップ計算のImax方式で「相ごとの最大を見る」話も、根っこは同じです。

🧮 4. 数字で確かめる:R・Tの2つだけだと、S相の過負荷が見えない

今日の変圧器(二次の定格275A)で、相と中性線の間の単相負荷だけがある例を考えます(力率1)。R相とT相にだけCTを付けて、三相3線式と同じように「S相=−(R+T)」と計算すると、こうなります。🟡 計算例

ケースR相(実際)S相(実際)T相(実際)中性線(実際)2つのCTの読み
R/T
3線式とみなして
計算したS相
① S相に負荷なし200A0A200A200A200A/200A200A ✗
② 3相がそろう200A200A200A0A200A/200A200A ✓
③ S相だけ多い200A300A(定格275A超)200A100A200A/200A200A ✗

3つのケースで、2つのCTの読みはまったく同じ。当たるのは3相がそろった②だけです。③では、S相が定格275Aを超えているのに、2つのCTからは「全相200A、余裕あり」に見えてしまう。

③ S相だけ多いとき(力率1) 各相の電流は、その相の電圧と同じ向き IR 200A IT 200A IS 300A 定格275Aを超えている IN 100A 順につなぐと 戻ってくる

3つの電流を矢印(ベクトル)で順につなぐと、原点から少し左下に戻ってきます。その矢印が中性線の電流で、100A。向きはS相と同じです。R・S・Tの200Aずつはぐるっと一周して打ち消し合い、S相の「多いぶん」の100Aだけが中性線を戻る、と読めます。3相がそろっていれば原点に戻り、中性線はゼロです。

⚡ 5. 電力でも同じ:ブロンデルの定理

電流だけでなく電力も同じ理屈です。フランスの技術者ブロンデルが1893年に発表した定理で、線がN本の回路の電力は、N−1個の電力計(測定要素)で正しく測れる。🟢 Wikipedia

三相3線式:3−1=2
二電力計法。電圧2つ・CT2つ。大学・高専の講義でも、n相n線式はn−1個の電力計で測れる、と習う形。🟢 講義資料
三相4線式:4−1=3
中性線を基準にして、3相それぞれの電圧と電流を掛ける。電圧3つ(+N)・CT3つ。

メーカーの施工説明書でも、そのとおりになっています。パナソニックの多回路エネルギーモニタでは、三相3線式はR相とT相のCT、三相4線式のユニットはR・S・T相の3つのCTで、電圧はR・S・T・Nの4本をつなぎます。🟢 パナソニック 施工編

三相4線式なのに二電力計法(S相を基準に、R相とT相の2つだけ)で測ったら、どれだけずれるか。式を立ててみると、ずれはS相の電圧と中性線の電流の積(の有効分)になりました。中性線に電流が流れなければ、ずれもゼロです。🟡 自分で計算

本当の電力 −(二電力計法の値)= VS × IN × cos(VSとINの角度) 相電圧242V、4章の例で計算すると ① 本当は96.8kW → 二電力計法では145.2kW(+50%) ② 本当は145.2kW → 145.2kW(ずれなし) ③ 本当は169.4kW → 145.2kW(−14%)
「2相だけ測って1.5倍」は、そろっている前提
電力計測器メーカーCCSの解説では、4線式で2相だけ測って1.5倍する方法は、3相の電流と電圧がそろっていることが前提。偏りがあれば、そのぶん外れる。🟢 CCS
節約形の計器でも、電流は3つ
4線式用に、電圧コイル2つ・電流コイル3つの「2.5素子」と呼ばれる計器があったそうです。電圧は削っても、電流の3つ目は削れなかった。🟢 Wikipedia

高圧の取引用計器(VCT)が、CTとVTの2組で済んでいるのも、高圧の受電が三相3線式だからです。

🌀 6. 中性線には、3相がそろっていても流れる電流がある

3相の負荷が同じ大きさでも、LED照明やパソコンのような、単相で整流器を通す負荷が多いと、第3高調波(基本波の3倍の周波数)の電流が流れます。第3高調波は、3相とも同じタイミングで山と谷が来るので、中性線で打ち消し合わずに足し算になります。

Fluke:第3高調波が33%を超えると
3相がそろった負荷でも中性線の電流は主に第3高調波によるもので、第3高調波が33%を超えると、中性線の電流が相の電流より大きくなる。3相のLED照明で、中性線の電流が各相の電流の合計に近くなる例も紹介されています。🟢 Fluke
シュナイダー:パソコンの多い建物
パソコンの多い建物では、中性線の高調波電流が相の電流と同じくらいになることがある。中性線を細くしないように、とのことです。🟢 シュナイダー

自分でも確かめました。各相の第3高調波が基本波のh倍なら、中性線には3h倍が流れます。h=1/3あたりで、中性線の電流は相の電流とほぼ同じ大きさになります。🟡 自分で計算

3つのCTで中性線の電流が「出せる」条件
3相のCTの波形(瞬時値)を足せば、高調波も含めた中性線の電流を計算できます。ただ、相ごとの実効値(電流の大きさ)を3つ足しても、中性線の電流にはなりません。向きと波形の情報が要るからです。今回の装置が中性線の電流まで出すかは、まだ確認していません。🟡 推定

🔁 7. 高圧側(一次)のCTでは、二次の偏りが見えにくい

「受電点のCTで電流は見ているのに、なぜ変圧器ごとにわざわざ付けるのか」も、三相4線式の変圧器だと理由がはっきりします。

中性線に戻る分は、一次のΔの中を回るだけ
Δ−Yの変圧器では、二次の中性線に戻る成分(零相分。第3高調波もこの仲間)は、一次の線には出てこず、一次の閉じたΔ巻線の中を回る。🟢 TestGuy 第3高調波がΔの中を循環して外に出ないことは、高専の電気機器の講義資料にもあります。🟢 講義資料
出てくる分も、形を変えて出てくる
一次はΔなので、二次の1つの相の負荷は、一次では2本の線に分かれて現れます。一次の2つのCTから「二次のどの相が重いか」を読むのは難しい。しかも受電点の電流は、全部の変圧器の合計。🟡 推定

だから、変圧器の過負荷は変圧器ごとの二次側で、3相それぞれを見る。Y結線の二次では、線の電流がそのまま巻線の電流なので、1相ずつ定格275Aと比べればよい。

📋 8. スマート保安(負荷の監視)の要件とつながる

2025年4月から、外部委託の月次点検を3か月に1回にできる条件の一つに、低圧電路の絶縁状態と負荷を的確に監視できる装置が加わりました。🟢 東北電気保安協会

電気管理事務所の解説(経済産業省のQ&Aをもとにした整理)によると、負荷監視装置に求められるのはおおむね次のことです。🟢 貝瀬電気管理事務所

求められること中身
何を測るか各フィーダー、つまり各変圧器の二次側の電流を連続して測り、離れた場所で監視・警報できる
記録30分ごとの電流値を1年以上残し、履歴を見られる
警報変圧器の負荷電流が4時間以上続けて定格電流を超えたら警報。離れた場所ですぐに分かる
装置の異常装置が正しく動いていないときも、離れた場所で分かる。年次点検などで動作を確かめられる
ほかの条件絶縁監視装置(隔月の条件)と、主遮断装置から責任分界点までの機器・配線の更新計画

「定格電流を4時間以上超えたら警報」を三相4線式の変圧器で守るには、3相それぞれが定格275Aを超えていないかを見る必要がある。CTが2つだと、4章の③のように、CTのない相の過負荷を見逃す。だから3つ。

確認できていないこと
告示やQ&Aの原文が「三相4線式はCT3つ」と個数まで書いているかは、今回は原文を開いて確かめられていません。ここは回路の理屈からの結論です。数字や条件も、最終的には経済産業省の告示・Q&Aの原文で確かめます。🟡 未確認

✅ 9. CTを付けるときに確かめること

3つとも相の線に。中性線にはかけない
中性線の電流は、3相の測定から出せる(3章)。🟢 eGauge
3つとも同じ定格に
パナソニックの施工説明書でも、R・S・T相のCTは同じ定格のものを使うよう書かれています。🟢 パナソニック 施工編
CTの相と、電圧の相をそろえる
電流の大きさだけなら見落としやすいけれど、電力や力率は同じ相の電圧と電流の組み合わせで計算するので、ずれると値がおかしくなる。検相の色の順番(赤・黒・青)で合わせる。🟡 推定
CTの向き(電源側→負荷側)
大きさだけなら向きは関係ないけれど、3つを足して中性線の電流を出すときや、電力を出すときは、1つでも逆だと答えが変わる。🟡 推定

🛟 今日のうきわメモ

三相4線式は、Y結線の中性点から4本目(中性線)を出す方式。線と線で420V(動力)、相と中性線で242V(照明)。

3線なら3本の電流の和はいつもゼロ。だから2つ測れば3つ目は計算で出る。4線だと和は中性線の電流になって、3つ目は計算できない。

線がN本なら、測る要素はN−1(ブロンデルの定理)。三相4線式は3。

CTが2つだと、CTのない相の過負荷を見逃す(例:R・T 200A、S 300A > 定格275A でも、2つのCTの読みは同じ)。

中性線に戻る分は一次のΔの中を回るだけ。だから変圧器ごとの二次側で、3相それぞれを見る。

📚 根拠・確認状況

※ 装置の型式によって、CTの付け方・端子の名前・設定は異なります。実際の取付けは、装置の取扱説明書、社内手順、作業責任者の指示に従ってください。本記事は自分用に整理した日誌であり、作業手順書ではありません。
2026.10.07|継電器試験・IP-R2000

IP-R2000のコンタクトモード(接点構造切換スイッチ)を全部まとめる。
「止めるか、鳴らすか」と「何を見て止めるか」の2つで選ぶ。

この記事について
ムサシインテック「IP-R2000 マルチリレーテスタ 取扱説明書」(4104-000ST026 第28版)と、富士電機「AUTO.V 取扱説明書」(INB-F8663c)を読んで整理した記録です。「推定」と書いたところは、仕様の数字や手順から自分で読み取ったもので、メーカーが書いていることではありません。実際の試験は、取扱説明書、社内手順、作業責任者の指示に従います。

IP-R2000の計器部にあるCONTACT MODE(接点構造切換スイッチ)は、左のTRIP側に3つ、右のC.CHECK側に3つ、ぜんぶで6ポジションあります。

🎛️ 1. まず全体像:6つのポジション

選び方は2段階。① 動作したら試験器を止めたい(時間を測る)か、鳴らすだけでいい(値を読む)か。② 継電器から出てくるのは「接点の開閉」「電流」「電圧」のどれか。

TRIP(トリップ)側 動作したら試験器の出力を止める a/b (AUTO) 電圧のない接点の「開⇄閉」で止める AC.CT 電流引外し形OCRの「電流」で止める AC.DC.V 接点に出てきた「電圧」で止める
C.CHECK(接点確認)側 止めずに、ブザーで知らせるだけ a/b 接点が閉じている間、ブザー OFF ブザーを鳴らさない(カウンタ不使用) AC.DC.V 電圧が出ている間、ブザー

CONTACT MODE(接点構造切換スイッチ)の模式図。1つのつまみで、左のTRIP側3つと右のC.CHECK側3つを選びます。つまみの形や目盛の位置は実機と同じではありません。

取扱説明書の言葉では、TRIP側は「継電器の接点状態を内蔵マイコンが自動判定し、接点の状態が変化した時点で自動的に試験器出力を遮断」、C.CHECK側は「継電器が動作しても試験器の出力を遮断せずに、内蔵ブザーで動作の確認を行いたい時に使用」です。🟢 取扱説明書 2.2

⏱️ 2. TRIP側とC.CHECK側:止めるか、鳴らすか

TRIP(トリップ)側C.CHECK(接点確認)側
継電器が動作したら試験器の出力を止める出力は止めない。ブザーが「ピーーー」
カウンタ止まった時点の値が動作時間。表示に「TRIP」接点が閉じている間・電圧が出ている間、「TRIP」を表示
使う試験動作時間試験、CB連動試験動作電流値・動作電圧値など、値を読む試験
ポジションa/b (AUTO)、AC.CT、AC.DC.Va/b、OFF、AC.DC.V

表の内容は取扱説明書 1.6.3・2.2 の記載です。🟢

OFFはC.CHECK側にある
ブザーを鳴らさない位置。取扱説明書では「カウンタを使用しない時は、C.CHECK側のOFFレンジに」。各試験の準備でも、まずOFFにしてから始めます。🟢
C.CHECK側にAC.CTはない
電流引外し形OCRは、動作したらすぐ止めないと継電器の接点を傷めます(3章で説明)。だから「止めずに鳴らすだけ」の側には用意されていないのだと思います。🟡 推定

🔍 3. 試験器は「何」を見て、動作したと判断するのか

TRIP側の3つは、トリップコード(No.2522)の先で何を見るかが違います。

a/b (AUTO) 試験器のトリップ入力 DC約150V 約0.5mA 電圧のない接点 開⇄閉が変わった瞬間に止める 例:継電器のa–c、外したT1–T2   CBの主接点・補助a接点 a接点かb接点かは自動で判定
AC.CT トリップ入力 試験電流 動作すると Tへ回る C T CC OCR(電流引外し形) AC3.5A±10% 流れたら止める トリップコードはT端子–CC端子へ 止めないと、継電器の接点が 開閉のアークで傷む
AC.DC.V トリップ入力 約23kΩで聞くだけ ~ / +− 動作で電圧が出る 継電器の出力 電圧が出たら止める AC:30V以上で有電圧 DC:24V以上で有電圧 入力はAC120V・DC150Vまで
モード使う相手(取扱説明書)検出の仕様(取扱説明書 1.6.2)
a/b (AUTO)継電器からの接点出力が無電圧接点のみの場合入力インピーダンス 約23kΩ/検出電圧 DC140〜170V(電源AC100V±10%のとき)/検出電流 約0.5mA
AC.CT
(電流トリップ)
OCR電流引き外しタイプの保護継電器の場合検出電流 AC3.5A±10%
AC.DC.V
(電圧トリップ)
継電器の動作時に、接点に電圧が出力される場合(AC・DCどちらでも入力範囲内で共通)入力インピーダンス 約23kΩ/AC 0〜120V、DC 0〜150V(判定の境目は次の章)

a/b (AUTO):試験器が自分で電圧をかけて、接点の開閉を見る

トリップコードの先の接点にDC約150V(流れる電流は約0.5mA)をかけて、閉じているか開いているかを見ます。a接点(ふだん開いていて、動作で閉じる=MAKE)でも、b接点(ふだん閉じていて、動作で開く=BREAK)でも、状態が変わった瞬間に止めます。どちらの接点かは内蔵マイコンが判定するので「AUTO」です。🟢 取扱説明書 1.2・1.6.2・2.2

CBの主接点も、閉じている(入)→ 引き外されて開く、なので同じように見られます。だからCB連動試験はどの継電器でもa/b(AUTO)です(5章)。

a/b(AUTO)の中で起きていること

トリップコードの2本を接点の両端につなぐと、試験器の中の直流電源と、電流を約0.5mAに絞る抵抗と、接点とで、ひとつの輪ができます。🟡 内部回路は取扱説明書にないので、仕様から読み取った推定

a/b(AUTO)の輪(推定) 試験器の中 DC約150V 電流を絞る トリップコード V 継電器の接点 開いている:接点に約150V・電流0 閉じている:接点にほぼ0V・約0.5mA
開いているとき
輪が切れているので電流は0。電源の約150Vが、ぜんぶ接点の両端にかかります。

閉じているとき
輪がつながって約0.5mA流れます。電圧はぜんぶ中の抵抗にかかり、接点の両端はほぼ0Vになります。接触抵抗のぶん完全な0Vではないので、境目より上か下かで判定します。🟡 推定
a接点(MAKE)
動作前:開 → 約150V・0mA
動作後:閉 → ほぼ0V・約0.5mA
止める合図:電流が流れ始めた(電圧が0になった)瞬間
b接点(BREAK)
動作前:閉 → ほぼ0V・約0.5mA
動作後:開 → 約150V・0mA
止める合図:電流が止まった(電圧が現れた)瞬間
CBの主接点
入(閉)→ 引き外されて切(開)
b接点と同じ向きの変化
止める合図:電流が止まった(電圧が現れた)瞬間

電圧と電流、どっちを見ている?
「両端に電圧が現れる」と「電流が流れなくなる」は、同じ出来事の裏と表です。どちらを見ても同じ瞬間に分かります。試験器が実際にどちらを測っているかは取扱説明書にありませんが、仕様が「検出電流 約0.5mA」なので、輪に流れる電流を見ていると読むのが自然です。🟡 推定

取扱説明書の言葉では「接点状態を内蔵マイコンが自動判定し、接点の状態が変化した時点で」止めます。スタート時が閉か開かを見ておいて、そこから変わったら止める、と読めます。これが「AUTO」です。🟡 読み取り

なぜ交流ではなく直流?
取扱説明書で確認できるのは、検出電圧DC140〜170V・検出電流約0.5mAという仕様です。直流を選んだ設計理由や内部の判定回路は公開されていません。

直流検出を理解するための補足

直流は定常状態で周期的なゼロクロスを持たず、容量性の過渡電流が収まった後の接点状態を考えやすくなります。ただし交流検出でも回路設計によって応答は異なり、「必ず半周期(50Hzで10ms)待つ」とは言えません。約150Vを酸化膜対策とする説明や、内部電源・検出方式の断定も、メーカーの設計資料がないため行いません。上の輪は仕様を理解するための模式モデルです。

a/b(AUTO)は電圧のない接点専用
取扱説明書は、a/b(AUTO)を「継電器からの接点出力が無電圧接点のみ」の場合に使うとしています。🟢 取扱説明書 1.6.2 接点にもともと継電器側の電圧が出ている回路だと、試験器の約150Vとぶつかって正しく判定できず、機器を傷めるおそれもあります。🟡 推定 電圧が出る接点はAC.DC.V(4章)を使います。

AC.CT:電流引外し形OCRが回してくる「電流」を見る

電流引外し形のOCRは、端子が C・CC・T の3つ(取扱説明書では「3端子OCR(電流引き外し式)」)。単体試験では、試験電流をC端子とCC端子の間に流し、トリップコードを T端子とCC端子 につなぎます。🟢 取扱説明書 3.3

電流引外し形は、ふだんCTの電流が C → コイル → CC と流れていて、動作すると内部の接点が切り替わり、その電流が T(引外しコイル側)へ回ります。試験では、動作した瞬間に試験電流そのものがトリップコードへ流れ込んでくる。それを試験器が電流として受けて、AC3.5A±10%を超えたら止める、という仕組みだと読み取れます。🟡 推定

取扱説明書の警告(3.3.3) 🟢
「3端子OCR(電流引き外し式)で、試験器のトリップが確実に行われないと試験電流による接点開閉アークにより、継電器内の接点を焼損することがあります。」

a/b(AUTO)は「小さなDC電圧をかけて開閉を見る」方式なので、数A〜数十Aの試験電流が回ってくるT–CC間には向きません。電流を見るAC.CTが用意されているのはこのためだと思います。🟡 推定

検出の境目が3.5A±10%(3.15〜3.85A)なので、トリップコードを流れる試験電流が約3.9Aより小さいと、確実には止まらないと考えられます。5A定格のOCRなら、限時の300%・700%や瞬時の試験電流はこれより大きいので問題になりにくい。🟡 推定

AC.DC.V:接点に出てくる「電圧」を聞くだけ

継電器が動作すると、出力の端子に電圧が出てくるタイプ(継電器側の電源で引外し電圧を出すものなど)に使います。入力は約23kΩで、試験器からは何もかけずに電圧を聞くだけです。ACでもDCでも、入力範囲内なら同じ位置で使えます。🟢 取扱説明書 1.6.2・2.2

📏 4. AC.DC.Vの「有電圧/無電圧」の境目

AC.DC.Vには、有電圧とも無電圧とも決まらない不確定領域があります。🟢 取扱説明書 1.6.2

AC.DC.Vの判定(入力インピーダンス 約23kΩ) AC 0〜120V 無電圧 不確定 有電圧 30〜120V 入力範囲外 0830120V DC 0〜150V 無電圧 不確定 有電圧 24〜150V 0824 150V ← DC24V系の出力は、ちょうど境目。少し低いと不確定に入る(推定)

スマホでは図を横にスクロールできます。

小さい電圧の出力は苦手
DC24Vの出力は「24V以上で有電圧」の境目ちょうど。電源の電圧が少し下がると不確定領域に入るので、止まり方が安定しないことがありえます。🟡 推定
上限を超える電圧はつながない
入力範囲はAC120V・DC150Vまで。DC200V系などの回路は範囲外です。🟢 仕様

📋 5. 試験ごとの使い分け(取扱説明書の手順から)

トリップコード(No.2522)は白・黒・赤の3本。手順書どおりに並べると、こうなります。🟢 取扱説明書 3.3〜3.7

試験トリップコードのつなぎ先コンタクトモード
OCR 単体
(瞬時の動作電流、限時・瞬時の動作時間)
白 → R相継電器のT端子
黒 → T相継電器のT端子
赤 → CC端子
継電器の接点構造に合わせる
電流引外し形(3端子)→ AC.CT
無電圧接点 → a/b(AUTO)
電圧が出る → AC.DC.V
GR 動作時間白 → 継電器のa端子/赤 → c端子継電器の接点構造に合わせる
DGR 動作時間白 → 継電器のa1端子/赤 → c1端子継電器の接点構造に合わせる
OVR・UVR 動作時間T1・T2の配線を外してから
白 → T1端子/赤 → T2端子
a/b(AUTO)
CB連動
(OCR・GR・DGR・OVR・UVR)
白・黒 → CBの任意の1相の電源側
赤 → 同じ相の負荷側
a/b(AUTO)
動作電流値・動作電圧値を読む(手順書では使わない)準備どおりOFF。ブザーで知らせてほしいときはC.CHECK側
時間試験の流れ(取扱説明書の手順)
電流出力切換をSETにして試験電流を合わせる → STOP
↓
電流出力切換をTESTへ
↓
コンタクトモードを継電器に合わせる
↓
START → 継電器が動作すると、カウンタと出力が止まる → カウンタの値が動作時間

SETは0.25Ωの疑似負荷で電流を合わせる機能で、実際に継電器へ流れる電流とは少し違うことがある、と取扱説明書にあります。気になるときは継電器の動作をロックして、TEST側で電流を合わせます。🟢 取扱説明書 2.2

R相/T相切換スイッチ
OCRのときは電流を出す相を切り換え、さらにトリップコードでどちらを見るか(白=R、黒=T)も切り換えます。電流を流す相と見る相が、1つのスイッチで一緒に変わる。🟢 取扱説明書 2.2
CB連動は「主接点の開」を見る
CB連動では、継電器の端子ではなくCBの主接点の電源側と負荷側にトリップコードをつなぎます。継電器の動作時間+CBの開極時間をまとめて測ることになります(AUTO.Vの取扱説明書でも「遮断器の開極時間を含む連動試験」)。

🔗 6. AUTO.VのOCR(51)のときは?

同じ日に調べたAUTO.Vの51連動試験につながる話です。AUTO.VはCT・OCR内蔵の電流引外し式ですが、AUTO.Vの取扱説明書には、こう書いてあります。🟢 AUTO.V 取扱説明書 7.4.3

AUTO.V 取扱説明書(7.4.3 接続) 🟢
「TRIP−T は AUTO.V 主接点または補助開閉器 a 接点に接続し,コンタクトモード SW は Break にします。」

電流引外し式なのに、AC.CTではなく主接点(または補助開閉器のa接点)の開閉を見る指定です。IP-R2000には「Break」という名前の位置はありませんが、a/b(AUTO)は閉→開(BREAK)の変化も見るので、IP-R2000ではa/b(AUTO)にあたると読みました。🟡 推定

AC.CTでは見えない電流
AUTO.VのOCRは定格0.1A。試験電流は始動0.1A、300%で0.3A、700%で0.7A、瞬時200%でも2A。どれもAC.CTの検出3.5A±10%に届きません。だから主接点で見るのだと考えられます。🟡 推定
主接点・a接点は「閉→開」
試験のときAUTO.Vは「入」。主接点も補助開閉器のa接点も閉じていて、引き外されると開く。だからBreakです。

🧭 7. 迷ったとき・注意すること

接点構造が分からないとき
取扱説明書では AC.DC.V → AC.CT → a/b(AUTO) の順に切り換えて試験。🟢
聞くだけのAC.DC.Vから始めて、自分でDC約150Vをかけるa/b(AUTO)を最後にする順番だと読めます。🟡 推定
電流を出したまま切り換えない
取扱説明書:スイッチの破損の原因。切り換えはSTOPしてから。🟢
所内電源で時間試験をするなら a/b(AUTO)
取扱説明書:所内電源が喪失してもカウンタに動作時間が表示される。表示器のバックアップは60秒。🟢
CB主接点にトリップコードをつなぐのは停電のときだけ
取扱説明書:無停電や所内電源で試験するときは、No.2522トリップコードを絶対に接続しない(高圧がかかっていて非常に危険)。🟢
OCRの単体試験で、試験器が止まらなかったら
電流引外し形なのにAC.CT以外を選んでいる、試験している相の継電器にトリップコード(R相は白、T相は黒)がつながっていない、試験電流が小さすぎる、などが考えられます。止まらないまま流し続けると、継電器の接点やコイルを傷めます。すぐに電圧電流調整器を0に戻してSTOP。🟡 推定

🛟 今日のうきわメモ

コンタクトモードは6つ。時間を測るならTRIP側、値を読むだけならC.CHECK側。

何を見て止めるか:接点の開閉はa/b(AUTO)、電流引外し形OCRの電流はAC.CT、出てくる電圧はAC.DC.V。

CB連動とAUTO.Vは、主接点の「閉→開」を見るのでa/b(AUTO)。

a/b(AUTO)は無電圧接点の状態変化を検出する。仕様はDC140〜170V・約0.5mA。内部回路や直流を選んだ設計理由は未確認。

📚 根拠・確認状況

  • 🟢接点構造切換スイッチの6ポジションと使い方、検出の仕様(a/b・AC.CT・AC.DC.V)、ブザーとカウンタの表示、接点構造が分からないときの順番、各試験のトリップコードのつなぎ先とモード、所内電源・無停電時の警告:ムサシインテック「IP-R2000 マルチリレーテスタ 取扱説明書」4104-000ST026 第28版 1.2・1.4・1.6・2.2・3.3〜3.7(製品ページ)
  • 🟢AUTO.Vの試験でTRIP−Tを主接点または補助開閉器a接点につなぎ、コンタクトモードをBreakにすること、OCR定格0.1A:富士電機「高圧真空遮断器 MULTI.VCB シリーズ AUTO.V(固定形)取扱説明書」INB-F8663c 7.4
  • 🟡AC.CTの仕組みの読み取り、C.CHECK側にAC.CTがない理由、AC.CTでは約3.9A未満を確実に検出できないこと、DC24V出力が境目にあること、IP-R2000でのBreakはa/b(AUTO)にあたること、迷ったときの順番の理由、a/b(AUTO)の中の輪の考え方:説明用の推定モデル。直流を使う設計理由は未確認。
※ 試験器の型式や版によって、スイッチの表記や仕様は異なります。実際の試験は、継電器・遮断器・試験器の取扱説明書、社内手順、作業責任者の指示に従ってください。本記事は自分用に整理した日誌であり、作業手順書ではありません。
2026.10.07|継電器試験・試験器の容量(10.09 訂正)

AUTO.Vの51連動試験でいう「容量」とは?
電流出力の負担と、試験器を動かす電源を分けて考える。

現場では「AUTO.Vの51(OCR)で遮断器との連動を見るなら、VSではなくIPで」と教わりました。以前は0.7VA以下の負担から「7Vが必要だからVSでは足りない」と説明しましたが、上限値から実際の必要電圧を断定した誤りでした。ここを訂正します。

🎯 1. 仕様だけで分かること・分からないこと

電流引外し式の連動試験では、試験電流が引外しのエネルギー源にもなります。必要なのは試験電流を、動作前後の負担に対して維持できる出力です。OCR負担の上限だけでは、GCR-mini VSの使用可否も、IP-R2000での成立も確定できません。

⚡ 2. 0.7VA「以下」を正しく読む

手元の記録で参照した富士電機AUTO.V取扱説明書INB-F8663cでは、対象の電流引外し形のOCR定格は0.1A、負担は0.7VA以下です。この原典は今回の公開資料確認では再取得できていないため、実機の型式・版で再確認する項目とします。

定格0.1Aで負担 S ≤ 0.7VA なら、端子電圧の大きさは |V| = S / I ≤ 7V

「7V以下」は「7V必要」と同じではありません。また、これは定格電流でのOCR負担の上限からの換算です。他の試験電流や引外し動作中の必要電圧を示しません。コイル、配線、試験コードを含む負担と動作時の変化を確認する必要があります。

💪 3. VSの電流出力を負担と照合する

GCR-mini VS第21版1.5.2の電流出力仕様は次のとおりです。

レンジ容量定格端子電圧
25mA10mVA(16Ω以下)0.4V
0.5A3VA6V
2.5A15VA6V
5A25VA5V

0.5Aレンジの3VAは0.5A×6Vに対応します。仮に0.1Aで6Vを維持できる条件なら0.6VAですが、AUTO.Vの実負担が0.6VAを超えるかは「0.7VA以下」だけでは分かりません。さらにVSの取説が対象とする継電器の種類・接続条件への適合確認が必要です。A.OPENは電流出力の開放または容量超過等を示す表示であり、これを出す試行で適否を決めるものではありません。

🔧 4. IP-R2000の取説が説明すること

IP-R2000の取説3.3.6には、電流引外し形VCBの連動で、引外しコイルの負担により動作電力が不足し不安定になる場合があると記載されています。その場合の抵抗レンジ変更も示されています。これは出力の電圧と負担が関係する根拠ですが、全てのAUTO.Vに対する適合保証ではありません。

電源抵抗部のブロック図から内部の電源電圧を推定し、それをそのままGCR端子の保証出力として比較することはできません。実際のレンジ・電流・負担・使用時間と、双方の取説に指定された試験方法を照合します。

🟢 5. コードの呼び名だけで出力を決めない

IP-R2000の付属品にはNo.2516「電流コード GCR/DGR」(緑)があります。同じ「DGR用」でも他の試験器と出力仕様が共通とは限りません。AUTO.V側の試験コネクタ、試験電流、検出用接点の接続は、対象型式の取説で確認します。

🔋 6. 入力電源の容量は別に確認する

試験器を動かす電源のW・VA・電流上限と、試験器が負荷へ出す能力は別です。IP-R2000の最大消費電力を常時消費するわけではありませんが、小電流試験だから特定のポータブル電源で確実に動く、とも断定できません。試験器内部の損失、補助出力、過渡応答、電源電圧・周波数・波形を含めて確認します。

IP-R2000第28版は発電機について定格容量2.4kVA以上を推奨しています。これはポータブル電源の機種適合を示す値ではありません。以前の「1500VAなら余裕あり/足りない」という一律の表は、根拠が不足していたため取り下げました。

📝 確認すること

遮断器側
型式・引外し方式・取説の版・試験電流・動作前後の負担・指定試験器。
試験器側
対象用途・出力レンジ・負担に対する端子電圧・出力時間・入力電源条件。

🛟 今日のうきわメモ

0.7VA以下÷0.1Aは7V以下。必要電圧を7Vと決める根拠にはならない。

電流引外しの連動は、OCRだけでなく引外し時の負担まで照合する。入力電源の容量も別に確認する。

📚 根拠・確認状況

  • 富士電機AUTO.V INB-F8663c 表1・7.4:従来記事の参照記録。今回原典未再取得。型式・版の照合が必要。
  • GCR-mini VS 第21版:対象用途、1.5.2の出力仕様、2.3の表示。
  • IP-R2000 第28版:電源抵抗部、3.3.6の電流引外し形VCB連動、発電機の条件。
2026.10.07|サイトづくり・耐圧試験

耐圧試験シミュレーターを作った。
VTの中を電流がどう流れるか、描いて確かめる。

この記事について
うきわメモに「VT内蔵PAS 耐圧試験シミュレーター」を作った記録と、作りながら分かったこと・間違えて直したことのまとめです。図と計算は原理を説明するためのもので、実際の試験結線図・実測値ではありません。VTの励磁特性などは仮の値です。実際の試験は、PAS・試験器の取扱説明書、社内手順、作業責任者の指示に従います。

きっかけは、「PASの耐圧試験で、内蔵VTがあるのに三線短絡しないでやるとどうなる?」という疑問でした。言葉で説明を読んでも、1相・2相・3相の違いや、なぜVTに電流が流れるのかがどうしてもイメージできない。そこで、VTを実際に描いて、電流の通り道を動かして見るページを作りました。

🗺️ 1. ページの中身

節何が分かる?
ケーブルの中の電流導体 → 絶縁体 → 遮へい層 → 遮へい接地線 → 大地。健全・劣化・絶縁破壊を切り替えて、充電電流と漏れ電流の大きさを比べる
PASの中の電流外箱・主接点・ZCT・負荷側の内蔵VT・制御線・負荷側ケーブル。3相一括/U・V・W相だけ/2相短絡の7パターンで、VTの巻線を電流が通るかどうか
なぜV相へ流れる?等価回路と式で、電圧をかけていない相のケーブルへVT経由で電流が流れる理由
つなぎ方を変えてみる各相を「試験電圧/接地/開放」に切り替え、ケーブル長・周波数・VTの台数を変えて、各相の対地電圧とVTの電圧(定格の何倍か)を計算
電流の流れPAS内蔵VTとVT単体の巻線・鉄心を描いて、つなぎ方ごとの電流の道を動きで見る
EVTY結線・中性点接地のEVTは、3相一括でも各巻線に試験電圧がかかる

👆 2. まず試すこと

① PASの中の電流で「U相だけ」
U相から入った電流が、VTの一次巻線を通ってV相のケーブルへ抜けていく(赤)。3相一括に戻すと、赤が消える。
② 「U+V短絡」と「V+W短絡」を比べる
このモデルではU・Vが等電位なら一次巻線の両端電圧は0。片方だけへの印加は過電圧・焼損のおそれがあります。実機は指定の三相一括で扱います。
③ シミュレーターで「1相・他相を開放」にして、ケーブル長を動かす
0mでは開放した相が試験電圧に近づき、30mでは逆向きになってVTに定格の約1.7倍。途中の数mで共振に近づいて大きな値が出る。
④ EVTで「中性点を接地したまま」
3相一括でも、3つの巻線すべてを通って中性点から大地へ抜ける。V結線のVTとの違いが一目で分かる。
① U相だけに印加したときの電流経路
現行のPAS模式図を見る。一次巻線を通る経路と、制御線の切離し・一括接地の指定を分けて確認します。この下のL−C数値例は二次開放相当で、二次短絡する実試験の電流を再現したものではありません。

💡 3. 一番大事な理屈

ここで扱う相間VTは相と相の間につながっている。三線短絡でU・V・Wを同電位にすると、一次巻線の両端電圧を0にできる。これに加え、制御線の処置などもメーカー指定に従う。

U相だけに試験電圧をかけると、なぜV相のほうへ電流が流れるのか。

二次開放・相互静電容量省略のモデルで考える
↓
V相は開放でも、心線と遮へい層のあいだはコンデンサ
↓
このモデルでは、V相を充電する通り道がU相とのあいだのVTの一次巻線になる
↓
試験器 → U相 → VTの一次巻線 → V相 → V相ケーブルのC → 大地 → 試験器、と一周する
↓
VTのコイル(L)とケーブルのコンデンサ(C)の直列に10,350Vがかかり、条件によってVTに過電圧・過励磁が生じ、焼損のおそれ(実機の電流上限や焼損時間は未計算)
訂正した等価回路
旧図にはVTコイルを迂回する配線が描かれていたため取り下げました。修正済みの等価回路と、二次開放を仮定して相互静電容量を省いたモデルの条件を見る。

くわしい式と数値は、今日のIP-1110の日誌とシミュレーターのページの「なぜV相へ流れる?」にまとめました。

🔧 4. 作りながら間違えて、直したこと

何度も「あれ?」と思って聞き直し、そのたびにページを直しました。同じところで迷う人もいると思うので、残しておきます。

最初の思い込み・書き方直したあと根拠
内蔵VTは2台(V結線)主要メーカーの取扱説明書では負荷側のU相−V相の間に1台。ページは1台を基本にして、2台にも切り替えられるようにした🟢 日本高圧電気・戸上電機の取扱説明書
LA内蔵は試験電圧で動作してしまう交流10,350Vの3相一括はできる。AC12kV以上・DC17kV以上や直流耐電圧試験はできない🟢 戸上電機・日本高圧電気
「他相を接地」の「接地」がVTの接地に見えるVTの一次側に接地点はない。図の接地は電線の接地(作業用接地の外し忘れなど)。VTで接地するのは二次側(D種)🟢 電技解釈 第28条(二次側の接地)
U相の道もあるのに、なぜV相にだけ流れる?電流はU相にもV相にも流れる。VTを通るのはV相側だけ。等価回路にU相の電流(青)を描き足した🟡 回路の考え方
VTの二次側の接地があるから流れる?二次の一点接地は一次電流の直接の帰路ではない。ただし一次と二次は磁気結合しており、二次負担や端子間の短絡は一次電流に影響する。現行の励磁Lモデルは二次開放相当🟡 回路の考え方
図にシースを描いていたシースは電流の通り道ではないので外した。遮へい層 → 遮へい接地線で大地へ戻る形に直した🟡 ケーブルの構造
相をR・S・Tで書いていたメーカーの取扱説明書(「U相とV相に接続」)とVT単体の端子名に合わせてU・V・Wに統一🟢 取扱説明書の表記
「1相」と「単相」この話の「1相」はU・V・Wのうち1本のこと。「単相」は回路の種類。耐圧試験器の出力はもともと単相で、違うのは何本の相につなぐか🟡 用語の整理

⚠️ 5. このシミュレーターでできないこと

鉄心の飽和は計算していない
VTは二次開放相当の線形モデル。定格電圧との比は表示しますが、飽和の開始点・実機の異常電流・焼損時間は判定できません。
VTの特性は仮の値
励磁電流・損失・PAS内部の静電容量はメーカー資料で確認できなかった。ページ下の「計算モデルと仮定」で変えられる。
実物の配置ではない
VTの台数・つなぐ相、ZCT・LAの有無と位置はメーカー・型式で違う。銘板と取扱説明書で確認する。
結論は仮の値によらない
「相間VTの両端を同電位にすると一次両端は0V」「VTの片端に10,350Vをかけ、もう片端を接地すると一次両端は10,350V」は、このモデルのL・Cの仮定によらない。

🛟 今日のうきわメモ

分からないときは、描いて電流を流してみる。電流は一周できる道にしか流れない。

相間VTの一次両端を同電位にするため、メーカー指定の三線短絡・3相一括を守る。制御線などの処置も別に必要。

📚 根拠・確認状況

※ 本記事はシミュレーターを作った記録と、理解したことの整理です。実際の試験では、PAS・試験器の取扱説明書、社内手順、作業責任者の指示を確認してください。作業手順書ではありません。
2026.10.07|現場・絶縁耐力試験

IP-1110で絶縁耐力試験。充電電流88mAで、定格91mAぎりぎりだった。
VT内蔵PASを三線短絡で3相一括にする理由まで、一本につなげる。

この記事について
今日の試験の数値と、そのあと調べたことを自分の言葉で整理した記録です。現場名・お客さまの情報は書いていません。器具の定格はメーカーの公開資料、PASの扱いはメーカーの取扱説明書で確認したものを書き、確認できなかったところはそう書いています。実際の試験は、試験器・PASの取扱説明書、社内手順、作業責任者の指示に従います。

今日は、PASと負荷側ケーブルの絶縁耐力試験。試験器はムサシインテックのIP-1110(一体型の交流耐電圧試験器)を単体で使い、ケーブル端末の3心を黄色い線で三線短絡して、3相一括で10,350Vを10分間かけました。結果は異常なし。

ただ、終わってから数字を見直すと、試験器の容量がほぼいっぱいだったことに気づきました。もうひとつ、午前中に調べていた「VT内蔵PASは、なぜ1相ずつ試験してはいけないのか」も、今日の試験とつながる話なので、まとめて整理します。

🟢 公開資料で確認🔵 今日の現場の値🟡 自分の計算・考え

📟 1. 今日の数値

器具表示値
充電電流チェッカー
CC-50MN(試験前)
静電容量(0.5μFレンジ)0.028μF
充電電流(10,350V・50Hz設定)91mA
IP-1110(試験中)二次電圧10.38kV
二次電流88.0mA
一次電流10.00A
遮断電流の設定100mA

🔵 現場の値 試験時間は10分。PASは「入」、負荷側ケーブルを含めて試験。

🔍 2. チェッカーは91mA、実際は88mA。わざと高めに出している?

チェッカーの91mAは、測った静電容量からの計算値です。🟡 計算

I = 2πfCV = 2π × 50 × 0.028μF × 10,350V ≒ 91.0mA

実測から逆に静電容量を出すと、10.38kVで88.0mAなので

C = 88.0mA ÷(2π × 50 × 10,380V)≒ 0.0270μF 10,350Vに直すと ≒ 87.8mA(チェッカーより約3.5%少ない)
表示桁による幅も考える
0.028μFという表示を0.001μF単位の四捨五入と仮定すると、丸め前の表示相当値は0.0275〜0.0285μF、換算電流は89.4〜92.7mAです。これは丸めだけの試算で、真の容量の範囲や実機の内部計算方式を保証しません。
差の原因はまだ確定できない
IP-1110第5版の2.0〜400.0mAの確度は±(0.5%rdg+20dgt)、分解能0.1mAなので、88.0mAでの仕様上の幅は±2.44mAです。ただし当日の実機の版とCC-50MNの確度が未確認のため、残差を両計器の誤差だけで説明できたとは言えません。

わざと高めに出しているかは、公開されている資料(メーカーの製品情報・販売店の仕様)では確認できませんでした。チェッカーの確度も未確認です。今回計算値が高かったことを、毎回一定の余裕が加算される保証として扱うことはできません。

⚡ 3. IP-1110の容量は、ほぼいっぱいだった

IP-1110の定格 🟢値今日
定格容量1kVA(10分定格)
10分使ったら10分休止
10.38kV × 88.0mA ≒ 913VA(約91%)
定格二次電流91mA88.0mA(約97%)
一次電流計(製品ページの仕様)1.00〜10.00A当日の表示10.00A(実機の版は未確認)
遮断電流10〜100mA(10レンジ)、動作は設定値の±20%以内100mA設定 → 80〜120mAのどこかで切れる
電源AC100V ±10%、50/60Hz
⚠️ 気になった2つのこと

10.00Aを「表示上限への張り付き」とは断定しない。第5版取説のLCD仕様は有効測定範囲0.10〜10.00A、表示範囲0.00〜13.00Aで、13.01A以上は「----」です。製品ページのLED仕様と区別し、当日の実機の版を照合します。

遮断の余裕がほとんどない。100mA設定でも、±20%なので80mAで切れることもありうる。88mA流れて切れなかったのは、この個体がたまたま80mAより上で動いているから。設定は100mAが上限なので、これ以上の余裕は作れない。

1,000は「W」ではなく「VA」。100V × 10A = 1,000VA は皮相電力。容量性負荷では有効電力と皮相電力は一致しません。一次電流計は高圧トランス一次側を測るため、外部電源の入力電流とそのまま同一視もできません。出力側の10.38kV×88.0mAは約913VAですが、一次側の実電圧・位相・損失が未確認なので、表示10.00Aとの差の原因は断定できません。🟡 計算・条件未確認

IP-1110だけで試験できる静電容量の上限

定格91mAから逆算すると 🟡 計算

50Hz:C = 91mA ÷(2π × 50 × 10,350V)≒ 0.028μF 60Hz:≒ 0.023μF

今日のチェッカーの表示がちょうど0.028μF。定格から逆算した目安の上限に近い値でした。ケーブルの長さに直すと、だいたいこのくらいです。

CVケーブル(6,600V・3心)1心の静電容量50Hzの上限60Hzの上限
22mm²0.27μF/km約34m約28m
38mm²0.32μF/km約29m約24m
60mm²0.37μF/km約25m約21m
100mm²0.45μF/km約20m約17m
150mm²0.52μF/km約17m約14m

1心の静電容量はSFCCカタログの値(充電電流のページと同じ)。3心ぶん・試験電圧10,350V・PASや端末の容量は含まない目安。実際はチェッカーで測った値(PAS込み)で判断する。

上限を超えそうならリアクトル
カタログの推奨はDR-1115MH、組合せ機種はDR-1200MHシリーズ 🟢。リアクトルで補償しても、ケーブルに流れる充電電流そのものは減らない(試験器側の電流が減る)。
続けて試験するなら10分休む
10分定格なので、別のバンクやケーブルを続けて試験するときは10分休止 🟢。
電源は10A流しても下がらないところから
長い延長コードや小さい発電機だと、10A流したときに電圧が下がって試験電圧が上がらないことがある 🟡。
次からの目安
チェッカーで 0.026μF(50Hz)を超えたら、リアクトルを持っていく 🟡 自分の目安。

🔬 4. そもそも、耐圧試験は何を見ている?

今日の88mAは、ほとんどが充電電流です。高圧ケーブルは、導体と遮へい層が電極、絶縁体がそのあいだのコンデンサ。遮へい層は接地されているので、電流は 導体 → 絶縁体 → 遮へい層 → 遮へい接地線 → 大地 → 試験器 と一周します。

絶縁体の悪いところから本当に漏れる電流(抵抗ぶん)は、健全ならμAの単位でごくわずか。しかも充電電流と直角に足し算されるので、多少増えても電流計の値はほとんど変わりません。耐圧試験は「この電圧を10分かけても、絶縁が破れないか」を確かめる試験で、破れると電流が急に増えて試験器が止まります。劣化の具合を見るのは、絶縁抵抗測定などの役割です。🟡 整理

🧲 5. VT内蔵PASは、三線短絡で3相一括

PASの内蔵VT(SOG制御装置の電源用)は、主要メーカーの取扱説明書では負荷側のU相−V相の間に1台つながっています(6,600/105V・25VA の例)。🟢

3相一括なら、U・Vが同じ電圧なのでVTの巻線に電圧はかかりません。ところがU相だけへの印加では過電圧・過電流が生じ、VT焼損のおそれがあります。メーカーは一相ごとの試験を禁止しています。

なぜ、電圧をかけていないV相のほうへ電流が流れるのか

前提:二次開放・相互静電容量省略のモデル
↓
① V相は開放でも、心線と遮へい層のあいだはコンデンサ
↓
② このモデルでは、V相のコンデンサへの通り道がU相とのあいだのVTの一次巻線になる
↓
③ 試験器 → U相 → VTの一次巻線 → V相 → V相ケーブルのC → 大地 → 試験器、と一周する
↓
④ VTのコイル(L)とV相のコンデンサ(C)の直列に10,350Vがかかる
VTにかかる電圧 = 10,350V × XL ÷(XL − XC) 例:38mm²・30m(XC ≒ 330kΩ)、XLを仮に3.3MΩとすると ≒ 11,500V(定格6,600Vの約1.7倍)

これは二次開放で損失を省いた線形L−Cモデルの計算です。約31mAは9.6nFの容量だけに10,350V・50Hzを加えたときの値で、直列L−C回路の電流上限ではありません。実機の励磁曲線・巻線抵抗・熱特性が未確認なので、飽和の開始電圧や焼損までの時間は決められません。二次短絡時は一次から見たインピーダンスも変わり、この励磁Lだけの式は使えません。🟡 条件付きの説明モデル

U相の電流はVTを通らない
U相のケーブルの充電電流も同時に流れるが、このモデルではU相から対地容量へ流れる経路で、VTを通るV相側の経路とは分かれる。実機の損傷箇所や焼損時間を判定する説明ではない。
二次の一点接地と二次短絡を分ける
二次の一点接地は、健全な一次絶縁を通る直接の導通路を作らない。一方、二次両端の短絡や両端を含む一括接地は、磁気結合を介して一次電流に影響する。この節の数値モデルは二次開放相当。

パターン別

試験電圧をかける相(残りは開放)相互静電容量を省いたモデルの一次VT(U−V間)実試験との区別
3相一括(三線短絡)一次両端は同電位メーカー指定方式。制御線・開閉状態等の条件も照合
U相だけ/V相だけ焼損のおそれ間違い
W相だけこのモデルでは一次両端の電位差0U・Vが試験されず、実機の分割試験を認める意味ではない
U+V短絡一次両端は同電位Wが試験されず、実機の分割試験を認める意味ではない
V+W短絡/U+W短絡焼損のおそれ間違い

上の表は接続条件による電位差を比較するモデルで、分割試験の可否を判定するものではありません。メーカーの「三相一括で実施」「一相ごとの試験は行わない」という指定を守り、VTの接続相が分かっていても自己判断で分割しません。🟢

「他の相を接地」になってしまう場面
停電作業では、検電・放電のあと短絡接地器具で3相の電線を短絡接地します。これを外し忘れたまま1相だけ外して試験電圧をかけると、U相−V相のあいだに試験電圧がそのままかかり、VTが過励磁になります。ほかにも、リアクトルがなく容量が足りないからと1相ずつに分けた結果、VTが焼損してPASが爆発した事例が紹介されています(下の根拠資料)。

VT単体のとき

教材のVT単体モデルは、一次のU・Vを同電位にし、二次のu・vと外箱を接地する条件を示しています。実機の試験接続・電圧・時間は対象取説で確認します。試験後は二次短絡を解除して規定の結線へ復旧します。二次を短絡したまま一次へ相間電圧を加えると過電流・焼損のおそれがあります。U端子だけにかけると、V端子の先に何がつながっているかで結果が変わる「設備まかせ」の試験になってしまいます。🟡 整理 → VT単体の電流の流れ

🧰 6. 3相一括でも気をつけるもの:EVT・LA・制御線

ものつながり方扱い
EVT(接地形計器用変圧器)一次はY結線で中性点を接地。巻線は「相と大地の間」3相一括でも各巻線(定格 約3,810V)に10,350V=約2.7倍。一次6,600/√3V・三次190/3Vの例では、三次オープンデルタの巻数比換算が約520V。ただし過励磁時の実機出力を予測した値ではない。切離し・中性点の処置は取扱説明書の指定による 🟡
LA内蔵形のPAS相と大地の間交流10,350Vの3相一括はできる。ただしAC12kV以上・DC17kV以上はかけられない(戸上電機)、直流耐電圧試験は行わない(日本高圧電気) 🟢
制御線・SOG制御装置VTの二次側など全ての制御線を外し、端末を一括接地(日本高圧電気)。SOG制御装置の端子間の耐電圧試験は行わない(戸上電機) 🟢

→ EVTの電流の流れ → 10/4の日誌:電磁形EVTとコンデンサ形ZPD

🤔 持ち帰った疑問

一次電流計の版を照合
10.00Aは第5版では有効測定範囲の上端であり、表示上限ではありません。当日の型式・表示器・取説版を確認する。
CC-50MNの確度
静電容量の確度と、充電電流の計算に余裕を足しているかを、取扱説明書かメーカーに確認する。
リアクトルの手配
今回の0.028μFは、50Hz・10,350Vで定格電流から逆算した目安の上限に近い値。もう少し長い現場では、どのリアクトルを使えるかを確認しておく。
VTが2台のPASはある?
今回確認した2社の取扱説明書はVT 1台(U−V間)。2台のPASがあるなら、型式と結線を確かめる。

🛟 今日のうきわメモ

IP-1110単体では、50Hz・10,350Vの純容量モデルで約0.028μFが定格電流から逆算した目安の上限。0.026μF超でリアクトルを準備するのは自分の手配目安で、実試験の適合判定とは分ける。

電流計の88mAは、ほとんどが充電電流。耐圧試験は「破れないか」を見る試験。

相間VTの一次両端に電位差を作らないため、指定の三線短絡・3相一括を守る。制御線の切離し・接地などの指定も照合する。

📚 根拠・確認状況

※ 試験器の容量、試験の結線、VT・EVT・LA・制御線の扱いは、機器と型式によって異なります。実際の試験では、試験器・PAS・各機器の取扱説明書、社内手順、作業責任者の指示を確認してください。本記事は自分用に整理した日誌であり、作業手順書ではありません。
2026.10.07|研修・絶縁監視と漏電探査

絶縁監視と漏電探査の研修に行ってきた。
漏れ電流の通り道から、どこを測ってどう絞り込むかまで整理する。

この記事について
研修で学んだことを、自分の言葉で整理した記録です。研修テキストは社内向けのため、テキストの図・写真・表、社内の基準や運用、システムの操作手順、事故事例の詳細は載せていません。図はすべて自分で描き直しました。数値や定義は、公開されている資料(国の様式、メーカー資料、学会誌)で確認できたものだけを書き、確認できなかったところはそう書いています。
活線での測定を含む話です。実際の作業は、測定器の取扱説明書、社内手順、現場責任者の指示に従います。

今日は一日、絶縁監視装置と漏電探査の研修でした。絶縁監視装置のしくみ、警報が出たときの考え方、漏電探査の進め方、探査のヒント、探査中の事故事例、という流れ。

8月にIgr絶縁監視装置の記事を書いたけれど、今回はその手前の「漏れ電流はそもそもどこを通るのか」から、もう一度つなげ直します。

① 漏れ電流はどこを通る?
↓
② どこで、何を測って見張る?(Io・Ior・Igr)
↓
③ 警報が出たら、まず何をする?
↓
④ どこから探す?(大きい範囲 → 小さい範囲)
↓
⑤ 何をヒントに探す?(天気・時間・季節・作業)
↓
⑥ 探査中にけがをしない

🟢 公開資料で確認🔵 研修で聞いた🟡 自分の考え・例

🌍 1. 漏れ電流の通り道:B種接地線で見られる範囲を考える

使っている機器の絶縁が悪くなると、電気が機器の外箱へ漏れます。漏れた電流は、機器の接地(D種など)→ 大地 → 変圧器のB種接地 → 変圧器の順に流れて、変圧器へ帰ってきます。

漏れ電流の通り道(説明用の図) 変圧器 低圧側 非接地側(対地電圧あり) 接地側(図では対地0Vと仮定) 使用機器 絶縁不良 EB ED 検出用CT (B種接地線1本を挟む) 漏れ電流:機器 → ED → 大地 → EB → 変圧器

この図では、低圧電路と大地の接続がB種接地の1か所だけで、他の帰路がないと仮定しています。この条件ならB種接地線の電流から監視範囲の漏れ電流を捉えられます。実設備で接地が複数ある場合、共用接地・金属配管・中性線などへ分流すると、1本の測定値が電路全体の漏れ電流と一致するとは限りません。🔵 研修

⚠️ 接地側の絶縁不良を、Ioが小さいだけで否定しない

接地側を大地と同電位とする理想モデルでは、接地側の絶縁抵抗が低下しても商用周波数の漏れ電流はほとんど生じません。実設備には中性線の電圧降下や接地電位差があり、電流が流れる場合もあります。Io・Iorだけでは接地側の絶縁不良を捉えにくく、値が小さいことは健全の保証になりません。適用条件を満たすIgr方式は、監視信号を重ねて接地側も監視します。

B種接地はそもそも何のため?
高圧と低圧が変圧器の中で接触(混触)したときに、低圧側の電圧が上がりすぎないように抑えるための接地です。接地抵抗の上限は「150 ÷ 1線地絡電流」などで決まります(電気設備技術基準の解釈 第17条)。🟢 公開資料
→ A・B・C・D種の接地はどこを測る?(10/4の日誌)

🔍 2. 「検出用CT」と「ZCT」はどう違う?

テキストでは、B種接地線に付けるものを「検出用CT」と書いていました。漏電遮断器の中にあるのはZCT(零相変流器)。どちらも漏れ電流を測るのに、名前がちがうのが気になったので調べました。

測定位置の比較(センサは指定品を使う) B種接地線に付けるCT Io 通すのは接地線1本だけ この接地線に流れる電流を測る ZCT(零相変流器) 電路の全部の線をまとめて通す 行き・帰りは打ち消し、差(零相電流)だけ残る
B種接地線のCTZCT(零相変流器)
通す線B種接地線1本保護接地線を除く全ての電路導体(中性線も含む。三相3線は3本、三相4線は4本)
出てくるもの接地線を通る電流(他の帰路がなければ漏れ電流の合計)各線の電流の総和。電路内で往復する負荷電流は打ち消し合い、大地への漏れ電流などが残る
主な使いどころ絶縁監視装置、漏電探査の最初の測定漏電遮断器、漏電リレー、幹線・分岐での一括測定

センサは、通す線の本数だけでは選べません。B種接地線の監視には、必要なmA感度・周波数特性・出力仕様・監視装置との組合せに適合した指定センサを使います。一般の計器用CTで代用できるという意味ではありません。接地線に1本通すセンサをCTと呼ぶかZCTと呼ぶかはメーカーの定義・用途によります。今回のセンサ型式が未確認なので構造は断定しません。

リーククランプによる接地線1本の測定と、全ての電路導体をまとめた残留電流の測定は、測定位置の違いです。後者では中性線があればそれも含め、保護接地線は含めず、対象計器の取説に従います。

ZCTの説明は三菱電機の製品ページ「全ての一次側電線を貫通させて地絡事故時の零相電流(各相電流のベクトル和)の検出に使用」で確認しました。

📐 3. Io・Ior・Igr:何を測って見張るか

Io は「抵抗ぶん」と「静電容量ぶん」の合計

電線と大地の間には、絶縁抵抗 R と 対地静電容量 C の両方があります。だから漏れ電流 Io には2種類が混ざっています。

Io をベクトルで見る(説明用の図) 電圧 V の向き 90°進み Ir:絶縁抵抗ぶん Ic:静電容量ぶん Io 見るべきなのは Ir Ir:絶縁が悪いと増える Ic:絶縁が良くても流れる (長いケーブル、ノイズフィルタ、 インバータ機器などで増える) Io = Ir と Ic のベクトル和

絶縁が悪くなって増えるのは Ir のほう。ところが Io だけを見る方式では Ic も一緒に測ってしまうので、静電容量の大きい設備では、絶縁が悪くなくても警報値に届いてしまうことがあります。研修では、NC工作機械・コンピュータ・無停電電源装置のような機器が増えて、こういう設備が多くなっている、という説明でした。🔵 研修

そこで「抵抗ぶんだけを取り出したい」という考えから、Ior方式とIgr方式があります。

方式どうやって抵抗ぶんを見る?接地側の絶縁不良弱いところ
Io見ない(合計をそのまま測る)捉えにくい(対地電圧がほぼ0のとき)静電容量が大きいと、絶縁が良くても値が大きくなる
Ior商用周波数のまま、電圧を基準にした位相から、電圧と同じ向きの成分だけを計算で取り出す捉えにくい(対地電圧がほぼ0のとき)非接地側の各相の静電容量が等しいことを前提に計算するので、かたよっていると誤差が出る
IgrB種接地線から商用とちがう周波数の小さな監視電圧を重ねて入れ、その周波数の電流から抵抗ぶんを取り出す適用条件内で監視できる監視信号がうまく入らない・拾えない状態(大きな地絡、CTや注入トランスの不具合など)だと監視できない

表の「接地側」と「弱いところ」は研修の説明と、下の公開資料をもとに自分でまとめたものです。

Ior:位相を使って計算する

三和電気計器の資料では、Io = Ior + Ioc(ベクトルの和)として、次の式が示されています。θ は基準電圧と Io の位相角です。🟢 メーカー資料

単相:Ior = Io × cosθ 三相:Ior = Io × sinθ ÷ cos30°

単相なら「電圧と同じ向きの成分=cos」でわかりやすい。三相の式に sin と cos30° が出てくるのは、どの電圧を基準に取るかによるもので、式は機器ごとの決まりに従います。🟡 自分の考え

三相3線(1線接地)では、接地していない2つの相がそれぞれ大地へ静電容量の電流を流します。2つの相の静電容量が等しければ、その合計の向きが決まるので、計算で取り除けます。かたよっていると、静電容量ぶんの一部が抵抗ぶんのように見えてしまう。これが「不平衡だと誤差が出る」の理由だと理解しました。🟡 自分の考え

Igr:目印の付いた電気を流して追う

監視電源:商用(50/60Hz)とちがう低い周波数の、小さな電圧
↓
注入トランスで、B種接地線に重ねて入れる
↓
電路全体が、大地から見て監視電圧のぶんだけ持ち上がる
↓
絶縁抵抗と静電容量を通って、監視周波数の電流が流れる
↓
B種接地線のCTで、その周波数の電流だけを取り出す
↓
電圧と同じ向きの成分(Igr)と、静電容量の成分(Igc)に分ける

なぜ接地側の絶縁不良も見えるのか:監視電圧はB種接地線(電路と大地の間)に入れるので、監視信号から見ると、接地側の線も含めて全部の線が大地に対して同じ監視電圧になります。三相でも単相でも、監視電源から見れば単相の回路と同じ。だから接地側で絶縁が悪くなっても、監視周波数の電流は流れて見えます。🔵 研修

小さな監視電圧で測って、実際の電圧に換算する

絶縁抵抗 R が同じなら、抵抗ぶんの電流は電圧に比例します(I = V ÷ R)。だから、監視電圧で測った値(igr)を、実際の対地電圧の値に換算します。

Igr = igr × (電路の対地電圧 ÷ 監視電圧)
例:監視電圧 0.1V の機種
100V回路:igr × 100 ÷ 0.1 = igr × 1000
200V回路:igr × 200 ÷ 0.1 = igr × 2000
監視電圧が機種でちがえば倍率も変わります。周波数・電圧は機種ごとに確認(8月の記事の「20.3Hz・0.1Vは共通仕様ではない」)。「200V回路」は、三相3線200V(1線接地)のように非接地側の対地電圧が200Vになる回路のこと。単相3線100/200Vは線間200Vでも対地は100Vです。

クランプ式の探査器には、監視周波数の電流をそのまま測る Ig(抵抗ぶん+静電容量ぶんの合成)と、そこから抵抗ぶんだけを分けた Igr があります。Ig が大きくても Igr が小さければ、それは静電容量ぶん。探査器の表示がどちらなのかを意識して読みます。🔵 研修

Igrの監視信号の作り方・異常表示の切り分けは、8月の記事に詳しく書いたので、そちらへ。

🚨 4. 警報が出たら:いきなり復帰しない

絶縁監視装置は、漏れ電流が設定値を超えると警報を出します。国の様式(設備条件確認書)では、点検の間隔を延ばす条件の1つとして、低圧電路の絶縁状態を監視する装置の警報設定値は50mAを上限とされています。🟢 公開資料

研修で教わった考え方を、自分の言葉で並べるとこうなります。🔵 研修

① どの装置(Io / Igr)の、どのCH(変圧器)で、どんな警報か確認
↓
② 表示を記録してから、復帰・試験をする
↓
③ もう一度表示と履歴を確認。警報が消えていても間欠的な不良は否定できないため、社内手順に従って原因確認・継続監視を判断
↓
④ まだ出るなら、そのCHの変圧器のB種接地線を測る(Io・Ig・Igr)
↓
⑤ その変圧器の幹線を測って、分電盤を絞る
↓
⑥ 分電盤の中で、幹線 → 各回路を測る

復帰する前の表示には、「いつ・どのくらい続いたか」の手がかりが残っています。消してしまうと原因を追う情報がなくなるので、まず記録。

漏れが大きすぎるときは Igr が使えないことがある
完全地絡のように漏れ電流がとても大きいと、監視装置を守るために監視信号を止める機種があります。そのときは監視周波数の信号がないので、商用周波数の Io で探します。🔵 研修(大電流で監視出力を止める機能は、8月の記事で書いたメーカー資料にもあります)

漏電探査は、大きい範囲から小さい範囲へ。いきなり分電盤の回路を一つずつ当たるのではなく、まず「どの変圧器か」を決めます。

幹から枝へ絞る(数値は説明用の架空の例) ① B種接地線 Tr1 5mA Tr2 150mA Tr3 4mA ② 幹線 分電盤A 6mA 分電盤B 140mA 分電盤C 3mA ③ 分岐回路 回路1 2mA 回路2 3mA 回路3 130mA 回路4 2mA ④ 負荷 回路3の先の機器・配線を調べる 合計が合わないときは、測っていない回路や、別の接地経路がないかも疑う。
レンジは回路の電圧に合わせる
Ig・Igrは換算値なので、100V系の回路か200V系の回路かで設定を変える。動力(三相200V)の幹線は200V、電灯(単相100/200V)の幹線は100V、という考え方。🔵 研修
CTの向きをそろえる
クランプには矢印(向き)がある。向きを決めて測る。🔵 研修
注入トランスから離して挟む
Igrの探査器は、注入トランスのすぐ近くで挟むと監視信号を直接拾うことがある。離す距離は探査器の取扱説明書で確認。🔵 研修
全部の線をまとめて挟む
幹線・分岐を測るときは、接地側も含めて全部の線を一括で(ZCTの使い方)。1本でも外れると負荷電流が出てしまう。🟡 自分の考え

探査器には、その場で測るクランプのほかに、何時間も記録できる記録型や、設定値を超えたらランプが点く表示器もあります。いつ漏れているか分からない「たまにしか出ない警報」には、記録型を置いて時間の傾向を見る、という使い方。🔵 研修

🌦️ 6. 探査のヒント:警報が「いつ」出ているか

測ったときに漏れていないと、探査で見つけられません。そこで、警報が出るタイミングと設備の様子から原因を推理します。研修では次の5つに分けていました。🔵 研修

手がかり疑うもの(例)
(1) 雨などの天気外灯、屋外の機器、屋外に置いた延長コード(移動電線)、屋外コンセント。雨の日・雨のあとにだけ警報が出る
(2) 時間・曜日・季節決まった時間に動くタイマーの機器、営業日だけ使う機器、冬だけ使うヒーター類など 🟡 例
(3) 水位・温度など水位で動く排水ポンプ、温度で動く機器や結露など 🟡 例
(4) 清掃作業床のコンセント付近を水で掃除したとき、機器を水で洗ったとき、洗車機など
(5) その他上のどれにも当てはまらないもの。工事・機器の入れ替えなど 🟡 例

お客さまにお話を伺うと、ヒントになることが多い。「最近つないだ機器はありますか」「雨の日に何か変わったことは」「その時間に何をしていますか」。警報の時刻と、お客さまの生活や作業のリズムを重ねると、測る場所がぐっと絞れます。

研修では、ビルの平面図に分電盤の位置を書き込んで、「この分電盤の先には何があるか」を考える練習もありました(図面は社内資料なので載せません)。

⚠️ 7. 探査中の事故:測ることに集中すると、手元の危険を見落とす

研修では、探査中に受電設備の中で手が高圧の充電部に触れてしまった事例を教わりました。CTを付け直そうとしていたときのことで、手を伸ばした先に高圧の端子があった、という内容でした。🔵 研修(事例の詳細は社内資料なので書きません)

手を入れる前に見る
CTを付ける・動かす前に、手と腕が通る範囲に充電部がないかを目で確かめる。見えない場所に手を入れない。
保護具を着ける
受電設備の中、分電盤の中の測定は、感電のおそれがあれば保護具を着ける。低圧の分電盤も充電部だらけ。
無理な姿勢でやらない
届きにくい場所のCTを動かすのは、停電の範囲や手順を相談してから。
数字を追っているときが危ない
探査は「次はどこを測る?」に頭がいっぱいになる。測る前に一度手を止めて、周りを見る。

🤔 持ち帰った疑問

検出用CTとZCT
→ この記事の2で整理した。接地線1本ならCT、全部の線をまとめるならZCTの使い方。測っている中身はどちらも零相電流。
Iorの三相の式
sinθ ÷ cos30° は、どの電圧を基準にしたときの式なのか。メーカーの取扱説明書で基準電圧の取り方を確かめる。
Iorの誤差はどれくらい?
2つの相の静電容量がどのくらいかたよると、どのくらいずれるのか。ベクトルで計算してみる。
電技解釈の「1mA」とIor
低圧電路の絶縁性能を漏えい電流で判断するとき、静電容量ぶんを除いた値で見てよいのか。電気設備技術基準の解釈の原文で確認する。

🛟 今日のうきわメモ

B種接地線の測定で監視範囲を捉えるには、他の帰路や分流がないか、接地系統を確認する。

Ioは「抵抗ぶん+静電容量ぶん」。見たいのは抵抗ぶん。Iorは位相で計算、Igrは目印の電気で追う。接地側の絶縁不良はIo・Iorだけでは捉えにくく、適合したIgr方式で監視信号を用いる。

探査は幹から枝へ。そして、数字を追う前に手元を見る。

📚 根拠・確認状況

※ 絶縁監視装置の方式・警報の設定・監視周波数・換算のしかた・探査器の使い方は、機種とメーカーによって異なります。実際の探査では、測定器の取扱説明書、社内手順、現場責任者の指示を確認してください。本記事は研修の内容を自分用に整理した日誌であり、作業手順書ではありません。
2026.10.05|研修・保護継電器

保護継電器の研修に行ってきた。
受電形式から継電器試験まで、一本の線でつなげて整理する。

この記事について
研修で学んだことを、自分の言葉で整理した記録です。研修資料は社内向けのため、資料の図・写真・手順表はそのまま載せていません。図は自分で描き直し、判定値は公開されている規格(JISなど)の値で書いています。計算例のうち「架空の設備」としたものは、この記事のために作った数字です。実際の試験は、対象リレー・試験器の取扱説明書、社内手順、作業責任者の指示に従います。

今日は一日、保護継電器の研修でした。内容は「受電形式」「保護協調」「遮断器の引外し方式」「電気計算」「配線演習」「継電器試験(OCR・DGR)」の6つ。参考としてUVR・OVRの試験も教わりました。明日は確認テストがあるので、その復習も兼ねてまとめます。

バラバラの単元に見えたけれど、通して聞くと1つの流れになっていました。

① 受電形式:何が事故電流を切るのか
↓
② 保護協調:誰が、どの順番で切るのか
↓
③ 引外し方式:どうやって遮断器を動かすのか
↓
④ 電気計算:どこに整定するのか
↓
⑤ 配線:どうつながっているのか
↓
⑥ 継電器試験:本当にそのとおり動くのか

🏗️ 1. 受電形式:主遮断装置で3つに分かれる

高圧の受電設備は、主遮断装置(事故のときに受電を切る装置)が何かで、CB形・PF・CB形・PF・S形の3つに分けられます。

形式短絡電流を切るもの過負荷・地絡を切るものポイント
CB形遮断器(CB)OCR・GR(DGR)+CB保護継電器と遮断器の組み合わせで、過負荷・短絡・地絡をまとめて守る。容量の大きい設備向け
PF・CB形限流ヒューズ(PF)OCR・GR(DGR)+CB大きな短絡電流はPFに受け持たせて、CBを小容量にする経済的な形。保護の機能はCB形と同じにできる。JIS C 4620(キュービクル)からは削除されていて、今は参考扱い
PF・S形限流ヒューズ(PF)必要なときは引外し装置付きの負荷開閉器小容量で単純な設備向けの経済的な形。負荷開閉器はPFとの協調を考えて、必要な遮断能力をもつものにする
キュービクルの容量の上限
JIS C 4620(キュービクル式高圧受電設備)は、平成4年の改正でCB形とPF・S形の2つに集約され、平成16年の改正で設備容量の上限が2,000kVAから4,000kVAに引き上げられた。キュービクルではCB形 4,000kVA、PF・S形 300kVAまで。
PF・S形で気をつけること
負荷に高圧電動機がある設備では、始動電流でヒューズが溶断するおそれがあるので採用しない。主遮断装置に非限流ヒューズを使うと限流効果が期待できないので、設備の過電流強度に注意する。

どの形式でも、守るべき順番は同じです。需要家の高圧回路で短絡したら、電力会社の配電用変電所のOCRが動く前に、需要家のOCR+CB(またはPF)が事故電流を切る。低圧回路の事故なら、配線用遮断器(MCCB)が上位のOCRやPFより先に切る。この「順番」が次の保護協調の話です。

🤝 2. 保護協調:事故は自分の構内で止める

保護協調は、上位(電源に近い側)と下位(負荷に近い側)の保護装置の感度と動作時間を整えて、事故の回路だけを確実に切り、健全な回路には送電を続けること。高圧需要家なら、構内の事故は構内の保護装置で処理して、電力会社の配電線に波及させないのが原則です。

低圧の事故 → 配線用遮断器(MCCB)が先に切る
↓
高圧構内の事故 → 需要家のOCR+CB(またはPF)が先に切る
↓
どちらも、電力会社の配電用変電所のOCRより先に

保護協調の種類

種類中身
過電流保護協調過負荷保護と短絡保護。必要な箇所にOCRを置き、主遮断装置は配電用変電所の過電流保護と動作協調をとる。動作時限の整定は電気事業者と協議する。受電用変圧器の二次側の配線用遮断器・ヒューズとも協調をとるのが推奨
地絡保護協調地絡したら自動で切る地絡遮断装置を置き、配電用変電所の地絡保護と動作協調をとる。動作時限の整定は電気事業者と協議する。負荷側の高圧電路の対地静電容量が大きいときは、地絡方向継電器(DGR)が推奨
動作協調事故点のすぐ上位の保護装置だけが動き、ほかは動かないこと。自家用の短絡・地絡なら、電力会社のリレーより先に自家用のPFやCBが切って、波及事故にしない
短絡強度協調短絡電流が流れても、遮断されるまでの間に機器が熱的・機械的に壊れないこと。短絡電流から設備を守る

ほかに、雷などの異常電圧に対する絶縁協調もあります。

OCRの特性:反限時・定限時・瞬時

OCRは反限時と定限時の両方の特性をもつタイプです。電流が大きいほど速く動く反限時の部分が過負荷を、大電流の領域で動作時間がほぼ一定になる定限時の部分と瞬時要素が短絡を受け持ちます。

瞬時要素で上位と協調
瞬時要素の整定で、配電用変電所のOCRとの協調をとる。両者の動作時間の間には余裕が必要で、研修では30ミリ秒以上の確保が必要と習った。
動いてはいけない電流
変圧器の励磁突入電流やコンデンサの突入電流では動かないように、限時・瞬時の特性を突入の領域より上に置く。
反限時の時間を計算してみる
超反限時(EI)の公称式:t = 80 ÷(M² − 1)× D ÷ 10
M:タップ値の何倍の電流が流れたか、D:ダイヤル(レバー)
300%(M=3)・ダイヤル10なら、80 ÷ 8 × 10 ÷ 10 = 10秒。ダイヤル3なら 3秒。
研修中のメモに「全メーカー同じ式」と書いたけれど、OCRタップ計算ページでは係数は機種ごとに確認する、としている。特性の種類と式は、対象リレーの資料で確かめる。→ OCRタップ計算:ダイヤルD・入力倍数M・5つの時間特性

地絡保護:ZCT・ZPD・DGR

ZCT(零相変流器)は、3相の電線をまとめて通す変流器です。地絡がなければ Ia+Ib+Ic=0 で磁束が打ち消し合うけれど、地絡で電流Igが大地へ漏れると打ち消しが崩れて、二次(k-l)に信号が出ます。kt・ltは試験用の端子で、継電器試験ではここから試験電流を入れます。

ZPD(零相基準入力装置)は、高圧の各相と大地の間をコンデンサで分圧して零相電圧V₀を取り出し、DGRへ送る装置です。完全地絡のときの零相電圧は 6,600 ÷ √3 ≒ 3,810V。試験端子T-Eから電圧を入れたときにどうなるかは、EVTとZPDの記事にまとめています。

なぜGRではなくDGRなのか。地絡電流は、電線と大地の間の対地静電容量を通って戻ってきます。構内のケーブルが長いと、構外(配電線側)で地絡したときにも、構内ケーブルの静電容量を通る電流がZCTを流れる。方向を見ないGRだと、これで不要動作(もらい事故)することがあります。DGRは零相電圧V₀を基準に、ZCTを通る電流がどちら向きかを見て、構内の事故だけで動きます。

① 構内で地絡 → DGRは動作配電線側構内Ig1Ig2ZCTC1C2✕ 地絡ZCTを通るのは Ig1(構内向き)
② 配電線側で地絡 → DGRは不動作配電線側構内Ig2Ig1ZCTC1C2✕ 地絡ZCTを通るのは Ig2(逆向き)

C1:配電線側の対地静電容量、C2:構内ケーブルの対地静電容量。①構内で地絡すると、配電線側のC1を通って戻る電流Ig1がZCTを構内向きに通る(構内のC2を通る電流Ig2は構内だけで回り、ZCTを通らない)。②配電線側で地絡すると、構内ケーブルのC2を通る電流Ig2がZCTを逆向きに通る。V₀を基準にすると、①と②でI₀の向きが逆(位相が約180°ちがう)。方向を見ないGRは、②でもIg2が大きいと動いてしまう(もらい事故)。

自分で描き直した原理図。電流の向きだけを表していて、大きさの比ではない

位相で見ると、構内事故と配電線事故では零相電流の向きが逆で、位相が約180°ちがいます。DGRの位相特性は、構内事故の電流が来る側を動作域、配電線事故の電流が来る180°付近を不動作域にして、その間に許容範囲をとっています。だから試験でも、同相(0°)で動くことと180°で動かないことの両方を確かめます。

高圧受電設備規程では、地絡遮断装置から負荷側の対地静電容量が大きいときはDGRが推奨。構内ケーブルが一定の長さ以内ならGRでよいという目安もあると聞いた(数字は規程で確認する)。

SOG制御装置の「SO」

SOは Storage Over Current の略で、「蓄勢+過電流」という意味。PASやUGSは負荷電流の開閉はできても、短絡電流は遮断できません。そこで短絡電流が流れたときは、次の順番で動きます。

過電流を検出して「開放する」を記憶し、待機
↓
電力会社の配電用遮断器が短絡電流を遮断(配電線が停電)
↓
停電を検知してから、PAS・UGSが開放(事故点を切り離す)
↓
約1分後に電力会社が再送電して、配電線は復電

1分後の再送電が成功すれば、波及事故の扱いにはならない。PASの中で実際にどう動くかは、PASの過電流ロックの記事で整理しています。

⚡ 3. 遮断器の引外し方式:どうやって遮断器を動かすか

保護継電器のしくみは、検出部(CT・VTで電流をおおむね5A、電圧を110Vに変成)→ 判定部(保護継電器)→ 動作部(遮断器の引外し)の3つに分けられます。継電器が「切れ」と判断したあと、遮断器の引外しコイル(TC)を何のエネルギーで動かすかで、引外し方式が分かれます。

方式別名引外しのエネルギー特徴
① 変流器二次電流引外し方式電流トリップ事故電流そのもの(CTの二次電流)いちばん一般的。引外し用の電源がいらない
② 直流引外し方式DCトリップ蓄電池などの直流電源信頼性が高い。受電設備に蓄電池が必要
③ 不足電圧引外し方式UVトリップ電圧がなくなること自体が合図引外し装置に電圧をかけておき、電圧がなくなったことを検出して遮断器を動かす
④ コンデンサ引外し方式キャパシタトリップ(通称「コントリ」)常時充電しておいたコンデンサVTの電圧で引外し用コンデンサを充電しておき、その放電で引き外す
ふだんCTOCRb接点TC電流はb接点を通り、TCを通らない
OCRが動作したときCTOCRb接点TCb接点が開き、電流がTCへ → 引外し

自分で描き直した原理図(TC:遮断器の引外しコイル)。実際の端子の名前や内部の配線は、機種ごとの展開接続図で確認する

電流引外しは、ふだんはOCRのb接点(ふだん閉じている接点)がTCを短絡していて、CT二次電流はTCを通らずにCTへ戻っています。OCRが動作するとb接点が開き、行き場を失ったCT二次電流がTCに流れて遮断器を引き外す。事故電流そのものが引外しのエネルギーなので、引外し用の電源がなくても動くのがポイントです。

電圧引外しの連動試験で、ヒューズクリップでT1-T2をつなぐと遮断器が動く理由は、10/20の日誌に独立させてまとめました。

🧮 4. 電気計算

変圧器の定格電流

単相 I = S ÷ V
三相 I = S ÷(√3 × V) V:線間電圧、I:線電流
例:単相 50kVA・210V → 50,000 ÷ 210 ≒ 238 A
例:三相 150kVA・210V → 150,000 ÷(√3 × 210)≒ 412 A

研修中のメモ:低圧側の定格電流に0.052を掛けると、B種接地線の太さの目安(mm²)になり、その直近上位の電線サイズを選ぶ(例:238A × 0.052 ≒ 12.4 → 14mm²)。根拠の式と表は内線規程で確認する。

V結線の容量

V結線は、線間電圧=相電圧、線電流=相電流になるので、S = √3 × E(相電圧)× I(相電流)。同じ容量の2台なら、√3 × 1台分の容量です。

容量がちがう2台なら、√3 ×(小さい方)+(大きい方 − 小さい方)。三相として使える分は小さい方で決まり、大きい方の残りを足す、と覚えました。

例:75kVA × 2台 → √3 × 75 ≒ 129.9 → 129kVA
例:50kVA と 100kVA → √3 × 50 +(100 − 50)≒ 86.6 + 50 = 136.6 → 136kVA
契約に使う容量は、小数点以下を切り捨て。

OCRタップ計算(Imax方式)

単相Trと三相Trが混ざっていると、相によって流れる電流がちがいます。いちばん大きい相に合わせてタップを決めるのがImax方式です。

三相Trは容量を3等分して各相間へ、単相Trはつないだ相間へ
↓
相間容量を大きい順に A ≧ B ≧ C(各相間の差が小さくなるようにつなぐのが基本)
↓
Imax = √(A² + AB + B²) ÷ 6.6[A]
↓
CT比で二次へ:Imax × 5 ÷ CT一次
↓
計算値の直近上位のタップ(研修では3〜5Aの範囲。5Aを超えたらCTを交換)
例(架空の設備):三相Tr 150kVA、単相Tr 100kVA(RS間)、単相Tr 50kVA(TR間)、CT 50/5A
相間容量:RS = 50 + 100 = 150、TR = 50 + 50 = 100、ST = 50 kVA
Imax = √(150² + 150 × 100 + 100²) ÷ 6.6 ≒ 33.0 A → 二次 33.0 × 5 ÷ 50 ≒ 3.30 A
0.5A刻みの目盛(静止形)なら 3.5A、1A刻みの目盛(誘導形に多い)なら 4A

なぜ大きい2つだけを使うのか、全部を三相とみなして計算すると何がまずいのかは、OCRタップ計算ページに追記しました。同じ例を計算機に入れるボタンもあります。→ OCRタップ計算:Imax方式

契約電力(kW)から求める式も紹介されました。I = 契約電力 ÷(√3 × 6.6 × 力率0.9)× 余裕の倍率 × 5 ÷ CT一次。余裕の倍率を掛けて直近上位のタップを選ぶ考え方は、OCRタップ計算ページの「契約電力」ルートと同じです。

容量圧縮(設備容量kVA → 最大電力kW)

設備容量をそのまま最大電力とすると大きすぎるので、容量が大きくなるほど低い割合を掛けて「最大でもこのくらい」と見込む計算です。契約設備容量の計算や、CT・OCRの整定のときに使います(研修では参考として紹介)。

設備容量の区分計算方法1(区分ごとの割合を足す)計算方法2(まとめた式)
最初の50kVA80%50kVA以下:S × 0.8
次の50kVA(100kVAまで)70%100kVA以下:S × 0.7 + 5
次の200kVA(300kVAまで)60%300kVA以下:S × 0.6 + 15
次の300kVA(600kVAまで)50%600kVA以下:S × 0.5 + 45
600kVAを超える部分40%600kVA超:S × 0.4 + 105

計算方法2の「+5」「+15」「+45」「+105」は、手前の区分を高い割合で数えたぶんの差をまとめた数です。たとえば100kVAまでの式は全体を70%で数えているので、最初の50kVAを80%で数えたぶんの差 50 × 0.1 = 5 を足している。だからどちらの方法で計算しても同じ答えになります。

例:400kVA → 方法1:40 + 35 + 120 + 50 = 245kW/方法2:400 × 0.5 + 45 = 245kW
例:800kVA → 方法1:40 + 35 + 120 + 150 + 80 = 425kW/方法2:800 × 0.4 + 105 = 425kW
小数点以下は四捨五入。V結線の契約容量(切り捨て)と丸め方がちがうので注意。

🔌 5. 配線演習:CTからOCR、そしてTCへ

電流引外し方式のOCRを、静止形(オムロン K2CA形)と誘導形(日立 IO形)で、CTからの配線を実際にたどりました。

CT二次
↓
CTT(電流試験端子)
↓
OCRの電流端子・電流計切換スイッチ(AS)と電流計
↓
CTへ戻る(CT二次はD種接地)

電流引外しなので、遮断器の引外しコイル(TC)もOCRの端子を通ってCT二次の回路につながる
静止形が電源なしで動く理由
静止形OCRの中には、電流を測る検出用の変流器と、自分の回路を動かす電源用の変流器がある。CT二次電流から自分の電源も作るので、引外し用の電源がなくても動ける。
CTTの役割
CTTでCT側を短絡してからOCR側と切り離すと、CT二次を開放せずに、OCR側へ試験電流を入れられる。
線を外すなら線番札
配線を外す前に線番札をつけて番号を書き、作業責任者と確認してから外す。戻したあとも確認する。

🧪 6. 継電器試験:本当にそのとおり動くか

どの試験にも共通する注意

停電と電源
継電器試験は原則として全停電で、試験器から電源を供給する他電源方式で行う。商用電源から試験器の電源をとるときは極性に注意する。
整定値は作業の前と後
整定値(タップ・レバー・瞬時など)は、作業前と作業後に作業責任者と作業者で相互確認する。試験で動かした値を戻し忘れない。
線を外すとき
配線を外す場合も、作業前と作業後に相互確認。端子の取り外しに危険があるときは、試験を中止する。
連動と接点を先に知る
遮断器・開閉器と保護継電器が連動するかどうか、遮断器・開閉器・継電器の接点の構造を、事前に図面で確認しておく。

実習は、作業指示係(作業責任者として準備と試験を指示し、判定する)・測定器操作係・継電器・遮断器操作係・記録係を、グループで順番に担当しました。ほかの人は試験中に助言する役です。

OCR(過電流継電器)試験 ── JIS C 4602

準備では、全電源からの分離・無電圧の確認など所定の安全措置と整定値の確認を済ませます。使用CTTの短絡機構とメーカー手順に従い、CT側の短絡を確実にしてから、OCR側を切り離す順序を守ります。CT二次を開放させず、試験電流を入れるOCR側との分離を確認します。遮断器が動いたタイミングは、遮断器に取り付けた振動センサで試験器に伝えて、時間を測ります。

試験やり方判定(JIS C 4602)
最小動作電流レバー(時間目盛)を1にして、電流を少しずつ上げ、継電器・遮断器が動作したときの電流を読む整定値の ±10%
限時動作時間レバー10と実際の整定レバーの2回。動作をロックしたまま整定値の300%に合わせ、いったん止めてロックを離し、一気に流して時間を測る下の式で 17%以内
瞬時要素動作をロックしたまま、電流を素早く上げて、瞬時要素が動作したときの電流を読む整定値の ±15%

R相とT相の両方で行い、最後に整定値(タップ・レバー・瞬時)を確認して終了。

⚠️ 最小動作電流と始動電流はちがう

始動電流:誘導形OCRの円板が動き始める電流。
最小動作電流:円板が回って主接点が閉じる最小の電流。試験で測るのは最小動作電流。静止形なら、経過時間のインジケータが100%まで進んで動作したときの電流。

誘導形
始動すると、円板が時計回りに動き出す。動作ロックは円板を指で軽く押さえる。
静止形
始動すると、始動表示・経過時間のインジケータが点灯する。動作ロックはロックボタンを指で軽く押さえる(ダイヤルにロック位置がある機種もある)。

ロックするのは、300%に合わせている途中で動作してしまうと時間が測れないから。合わせ終わったら出力を止め、カウンタをリセットしてから一気に流します。

限時動作時間の判定式
|(tN3 − N/10 × T10.3)÷ T10.3 × 100| ≦ 17%
T10.3:レバー10で300%を流したときの公称動作時間(銘板の特性曲線)
tN3:レバーNで300%を流したときの実測時間
最小タップの700%で試す場合は、同じ形の式で12%以内
実習のOCR(静止形):タップ4A・ダイヤル3・瞬時20A
最小動作電流:4A ± 10% → 3.6〜4.4A
瞬時要素:20A ± 15% → 17〜23A
レバー10(T10.3=10秒):10 ± 1.7秒 → 8.3〜11.7秒
ダイヤル3:3 ± 1.7秒 → 約1.3〜4.7秒

気づいたこと:許容幅は「レバー10のときの時間の17%」なので、レバーを小さくしても幅は±1.7秒のまま。ダイヤル3なら公称3秒に対して±57%くらいになります。「±17%」と割合で覚えるより、式で覚えたほうが迷いません。

DGR(地絡方向継電器)試験 ── JIS C 4609

準備では整定値(零相電圧・零相電流・動作時間)を確認し、DGRの試験用端子(電圧:T・E、電流:kt・lt)に試験器の電圧・電流のコードをつなぎます。

試験やり方判定(JIS C 4609)
最小動作電圧零相電流を整定値の150%流し、電流と同相(0°、または最大感度角)の零相電圧を少しずつ上げて、動作した電圧を読む整定値の ±25%
不動作零相電圧を整定値の150%、零相電流を1000%、位相を180°にする(配電線側の事故のまね)継電器・遮断器が動作しないこと
最小動作電流零相電圧を整定値の150%かけ、電圧と同相の零相電流を少しずつ上げて、動作した電流を読む整定値の ±10%
位相特性動作する位相と、動作しない位相の境目を調べる製造者が示す範囲内
動作時間整定値の130%と400%の電流で時間を測る130%:0.1〜0.3秒/400%:0.1〜0.2秒
実習のDGR:V₀ 5%・I₀ 0.2A・0.2秒
完全地絡のV₀ = 6,600 ÷ √3 ≒ 3,810V
整定5% → 3,810 × 0.05 ≒ 190V(判定 ±25% → 約143〜238V)
試験で入れる150% → 190 × 1.5 = 285V
I₀ 0.2A → 判定 ±10% → 0.18〜0.22A。150%は0.3A、不動作試験の1000%は2A

零相電圧の検出表示(ランプなど)がある機種は、電流を流さずに電圧だけを上げて、表示が点いたときの電圧を読む方法もある。GR(JIS C 4601)は、動作電流が整定値の±10%、動作時間は130%で0.1〜0.3秒、400%で0.1〜0.2秒。PAS(SOG制御装置)を単体で試験するときは、既設の制御電源の線を外して試験器から補助電源を入れ、電流・電圧・トリップの端子に試験器をつなぐ。

UVR・OVR(参考)

試験UVR(不足電圧継電器)OVR(過電圧継電器)
動作電圧定格電圧から少しずつ下げて、動作した電圧定格電圧から少しずつ上げて、動作した電圧
復帰電圧動作値より10%ほど下げてから少しずつ上げ、復帰した電圧動作値より10%ほど上げてから少しずつ下げ、復帰した電圧
動作時間実習では整定値の70%の電圧を急にかけて測定(一般には70%・50%・0%など)実習では整定値の120%の電圧を急にかけて測定(一般には130%・150%など)
判定製造者の示す値が基本。参考として規格(JEC-174B)の許容誤差があり、動作電圧は誘導形・静止形などで±5%、可動鉄心形で±10%

記録書の書き方

記録書は、整定値の欄と測定値の欄が分かれていて、それぞれに判定を書き、最後に連動・表示(遮断器が動いたか、表示が出たか)と総合判定を書きます。整定値は作業前に記録書へ書いておくと、作業後の戻し確認にも使えます。

🤔 持ち帰った疑問

上位との時間の余裕は何秒?
メモには「電力側0.9秒・需要家0.2秒。0.3秒くらい間があればいい?」と書いた。未確認。OCRタップ計算ページの時間協調の不等式(下位の時間+余裕 ≦ 上位)で整理し直す。
GRでよいケーブルの長さ
構内ケーブルが一定の長さ以内ならGRでよい、という目安の数字を高圧受電設備規程で確認する。
OCRの式は本当に共通?
メモの「全メーカー同じ式」。特性(超反限時・強反限時など)ごとに式が決まっているのか、機種ごとにちがうのか、メーカー資料で確かめる。
B種接地線の0.052
係数の根拠と、どの表から選ぶのかを内線規程で確認する。

🛟 今日のうきわメモ

受電形式で「何が切るか」、保護協調で「どの順番で切るか」、引外し方式で「どうやって切らせるか」、計算で「どこに合わせるか」、試験で「本当にそう動くか」。

継電器試験は「整定値の相互確認」で始まって、「整定値を戻して相互確認」で終わる。

※ 受電設備の形式、保護協調の整定、引外し方式、試験の方法と判定は、設備・機種・電気事業者との協議内容によって異なります。実際の作業では、メーカー資料、社内手順、現場責任者の指示を確認します。本記事は研修の内容を自分用に整理した日誌であり、作業手順書ではありません。
2026.10.04|今日のなんで?・接地抵抗測定

接地端子盤がないキュービクルで、
A・B・C・D種の接地はどこを測る?

作業の前に確認すること
接地線を外すと、その間はつながっている機器が接地されていない状態になります。外せる条件(停電範囲・外しておく時間)を責任者と決めてから外し、測定後は確実に再接続して締付けを確認します。B種接地は、充電中に外しません。CT・VTの二次回路の配線(接地線以外)は外しません。図と結線は一般的な構成の説明用で、実際の設備は単線結線図・展開接続図・前回の点検記録で確認します。

10/3の接地抵抗測定では、接地極側と設備側がボルトコネクタで分かれていて、外して測ることができました。でも現場には、接地端子盤(EA・EB・EC・EDの端子が並んだ箱)がないキュービクルもあります。そのとき、どこにEをつなげばいいのかを整理しました。

まず結論

種類ごとの接地線を「機器から接地極へ下りていく途中」でつかまえる
↓
その線のボルト端子を外し、接地極側にEをつなぐ
↓
補助極P・Cは地面に一直線

どの種類も、機器の端子台や外箱にクリップを当てるのではなく、そこから接地極へ向かう緑の接地線で測ります。外箱や端子台で測ると、筐体やほかの接地とつながった値(並列の値)が出て、本当の値より低く見えるためです。

1. キュービクルの中の、A・B・C・Dの場所

キュービクルの中の接地(接地端子盤がない例) 受電盤 VCB LA CTT VTT 変圧器盤 変圧器 6600 / 210-105V 中性点 低圧盤 210V・105V回路(300V以下) 400V級の回路(ある設備だけ) A A B D D C 床・ピット(ここから接地極へ) ◯ 測る位置:接地線が床・ピットへ下りる手前のボルト端子(外して接地極側にE) A:変圧器外箱・LA・VCBなど高圧機器の金属部 B:変圧器二次側の中性点(または1端子) D:CTT・VTTの接地される線、300V以下の低圧機器の金属部 C:400V級の機器の外箱(ある設備だけ)

接地線の色・本数・まとめ方は設備によって違います。図は配置の考え方を示すものです。

2. 種類ごとの「どこを測るか」

種類つながっているもの測る位置外すときの注意
A種変圧器の外箱、LA(避雷器)、VCBの架台など高圧機器の金属部。高圧ケーブルの遮へい層をまとめている設備もあるそれらの接地線がまとまって床・ピットへ下りる線のボルト端子外している間、高圧機器の外箱が非接地。停電中に外す
B種変圧器の二次側の中性点(単相3線式)、三相210V(Δ結線)なら1つの相の端子(例:v相)変圧器の二次端子から下りるB種線のボルト端子充電中は絶対に外さない。停電・検電・放電のあと
C種300Vを超える低圧(400V級)の機器の外箱。400V級の回路がある設備だけ400V級の機器(低圧盤の400V回路、400Vの進相コンデンサの外箱など)から下りるC種線。機器がキュービクルの外にあることも多い外している間、その機器が非接地
D種CTT(CTの試験端子)の共通線、VTT(VTの試験端子)の1線、300V以下の低圧機器の金属部それらがまとまって床・ピットへ下りるD種線のボルト端子。CTT・VTTの端子そのものではないCT・VTの二次配線は外さない。外すのは緑の接地線だけ

3. C種が見つからないとき

C種は、300Vを超える低圧(400V級:415V・420V・440Vなど)の回路があるときだけ必要です。見つからないのは、多くの場合「そもそもない」からです。

変圧器の銘板の二次電圧を見る
↓
210/105V・210Vだけ → C種の対象なし
400V級の変圧器がある → その先の機器の外箱がC種
キュービクルの中の候補
400V回路の低圧盤(配電盤・MCCB盤)の金属部、400Vの低圧進相コンデンサの外箱など。
キュービクルの外の候補
400Vのモーター、動力制御盤、動力分電盤など。C種の線がキュービクルに来ていないこともある。

400V級の変圧器そのものの外箱は、高圧機器なのでA種。二次側の中性点はB種です。C種はその先の機器の外箱です。前回の点検記録にC種の欄がなければ、その設備にはC種がない可能性が高いです。

4. D種:CTの「l端子」で測ると値が出ないことがある

CTTの共通線(l側)にクリップを噛んで測ったら、値が出なかったことがありました。考えられる原因はこれです。

① D種の線を外していた
接地極側を測るために下りる線を外していたら、l端子はどこにもつながっていない。いちばんよくある原因。
② 接地点が別の場所
CTの二次回路は1か所だけで接地する。その1か所が継電器盤側にあることもある。
③ 噛んだ端子が違う
共通線ではない線や、デジタル継電器の内部側(入力用CTで絶縁されている側)を噛んでいた。
④ 接地が外れている・緩んでいる
①〜③でなければ不具合。記録して責任者へ報告する。

CTの二次側はD種接地が必要です(電気設備技術基準の解釈 第28条)。接地しなくていいわけではありません。接地の有無は、停電中にl側とD種の接地線の間の導通で確かめ、接地抵抗の値は下りる線で測ります。

⚠️ CTの二次回路は開放しない

ねらうのは緑の接地線だけ。同じ端子台にあるCTの二次配線を外すと、二次側が開放になり、高い電圧が出て危険です。外す前に、どの線を外すかを指さしで確認します。また、接地を2か所以上にすると電流が回り込み、継電器が誤動作することがあります。

5. 接地抵抗計のつなぎ方(3極法)

E:測る接地線の接地極側(外したボルト端子の下側)
↓ 5〜10m
P:補助極(電圧)
↓ 5〜10m
C:補助極(電流)

E・P・Cはほぼ一直線に並べ、Pを間に置きます。補助極は、ほかの接地極や建物の鉄骨、埋設の金属管から離します。間隔は測定器の取扱説明書に従います。外せない線を測る場合は、つないだまま測り、記録に「接続状態で測定」と書きます。

6. 判定の目安(電気設備技術基準の解釈 第17条)

種類接地抵抗値
A種10Ω以下
B種決まった値ではなく、150 ÷ Ig(Ig:高圧側の1線地絡電流)で計算。混触時に高圧側を自動遮断する装置の動作時間によって、分子が300・600になる
C種10Ω以下(地絡時に0.5秒以内に自動遮断する装置があれば500Ω以下)
D種100Ω以下(地絡時に0.5秒以内に自動遮断する装置があれば500Ω以下)

7. 全部が1本にまとまっている場合

キュービクルの中の接地線が全部1本の接地母線にまとめられ、そこから1本で接地極へ下りている設備もあります(共用接地)。この場合は種類ごとに分けて測れません。母線から下りる線で測り、まとめた値で判定してよい設備かを、図面と前回の記録、責任者に確認します。

🛟 今日のうきわメモ

接地端子盤がなくても、測るのは「接地極へ下りていく線」。外箱や端子台にクリップを当てない。

A=高圧機器の外箱、B=変圧器の中性点、D=CTT・VTTと300V以下の低圧機器、C=400V級があるときだけ。迷ったら、前回の点検記録と同じ場所で測る。見つけた測定点には名札を付けるか写真で残して、次回迷わないようにする。

※ 接地の種類・まとめ方・測定方法は設備ごとに違います。実際の測定は、単線結線図・展開接続図・竣工図・前回の点検記録・測定器の取扱説明書と、現場責任者の指示に従ってください。本記事は経験と原理を整理した日誌で、作業手順書ではありません。
2026.10.04|今日のなんで?・DGR / 零相電圧

T-Eから零相電圧を入れると、高圧側へ「ステップアップ」する?
電磁形EVTとコンデンサ形ZPDで答えが逆になる

作業の前に確認すること
原理を整理する記事です。実際の試験では、対象の零相電圧検出装置(EVT・ZPD・零相電圧変換器)と継電器の型式、展開接続図、取扱説明書で入力位置と切り離し箇所を確認します。高圧側の停電・検電・放電、作業用短絡接地の状態、制御用直流電源の状態を責任者と確認し、不明点が残る場合は試験電圧を入れません。

「初めてMEDIMULを触った日のこと」で未解決にしていた疑問、「接地用コンデンサや大型EVTを切り離さずに零相電圧を入れると、高圧側へステップアップするのか?」を、原理から整理しました。

まず結論

電磁形EVT(変圧器)
つないだまま三次側から入れると、巻数比のぶんステップアップして高圧側に出る。三次190/3Vの例なら約20倍。190V入れると、高圧の各相に約3,800Vが出る計算。
コンデンサ形ZPD(分圧)
つないだまま接地用コンデンサ側から入れても、入れた電圧より大きくはならない。高圧の線路側にはほとんど電圧が出ない。切り離す理由は「昇圧」ではなく別にある。

つまり、「切り離さないとステップアップするか」は、その先にあるのが変圧器かコンデンサかで答えが逆になります。日誌で「逆励磁するのでは?」と考えたのは、電磁形EVTについては正解でした。

1. 電磁形EVTってどんなもの?

EVT(接地形計器用変圧器)は、鉄心に巻線を巻いた変圧器です。一次側を高圧の各相と大地の間(Y結線・中性点接地)につなぎ、三次側をオープンデルタ(三角形の一か所を開いた結線)にして、そこから零相電圧を取り出します。

電磁形EVTの外観イメージ(説明用イラスト) UVW 高圧端子(各相へ) 低圧端子箱二次・三次(オープンデルタ) 一次の中性点・ケースは接地 銘板の電圧(例) 一次 6600/√3 V 二次 110/√3 V・三次 190/3 V 実物の形はメーカー・定格で異なります(モールド形・油入形など)。

見た目の特徴は、上に高圧端子が3つ並び、本体の中に鉄心と巻線が入っていること。ずっしり重い「変圧器」です。銘板に一次・二次・三次の電圧が書いてあれば、まず電磁形を疑えます。

2. EVTの結線と、三次側から入れたときに起きること

電磁形EVT:つないだまま三次側から入れると UVW 一次(Y結線) 中性点接地 同じ鉄心(磁気でつながる) 三次(オープンデルタ) 試験器(T-E相当へ入力)例:V₀ = 190 V を印加 高圧側の各相に 190V ÷ 3 × (6600/√3) ÷ (190/3) ≒ 3,810 V(対地) 完全地絡と同じ大きさ(三次190/3Vの例)

EVTは一次と三次が同じ鉄心でつながった変圧器です。変圧器は向きを問わず働くので、三次側に電圧を入れると、一次側に巻数比のぶん大きな電圧が出ます(逆加圧・逆励磁)。

オープンデルタに 190 V を入れる
↓
三次巻線1個あたり 190 ÷ 3 ≒ 63 V
↓
巻数比(6600/√3)÷(190/3)≒ 60 倍
↓
一次巻線1個あたり(高圧の各相-大地間)≒ 3,810 V

入れた電圧のざっと20倍が、高圧の各相と大地の間に出る計算です(三次190/3Vの例。三次の定格が違えば倍率も変わります)。10V入れただけでも約200Vです。

⚠️ 電磁形EVTをつないだまま入れると、危ないことが2つある

① 停電しているはずの高圧側が充電される:高圧側で作業している人がいれば感電の危険。高圧ケーブルが長ければ充電電流も流れます。

② 高圧側が作業用短絡接地されていたら、逆に試験器から大電流:一次側が短絡されているので、三次側から見ると短絡に近い状態。試験器や配線に大きな電流が流れます。

どちらにしても、EVTは試験回路から切り離してから入れるのが筋。OVR/OVGRの記事で書いた「V₀端子に10Vを入れてしまった」も、先にEVTがつながっていたら同じことが起きます。

3. コンデンサ形ZPDは「分ける」だけ

ZPD(零相電圧検出器)は、高圧の各相に小さな容量のコンデンサ(C1)をつなぎ、その共通点と大地の間の接地用コンデンサ(C2、容量が大きい)で分圧して、小さな零相電圧を取り出します。ZPDと継電器の間に零相電圧変換器が入る構成もあります。

コンデンサ形ZPD:つないだまま接地用コンデンサ側から入れると UVW C1C1C1 N C2 接地用コンデンサ 試験器 → C2の両端(T-E相当)Nの電圧 = 入れた電圧 V 線路側に出る電圧 V × C1 ÷ (C1 + 線路の対地容量) → いつも V より小さい コンデンサの分圧は「分ける」だけ

C2の両端に電圧 V を入れると、中性点Nが V になります。そこから先は、小さなC1と、線路の大きな対地静電容量の分圧です。

仮の値で計算してみる
C1 = 250 pF(各相)、線路(高圧ケーブル)の対地静電容量 = 4,500 pF(各相)とすると、
線路側の電圧 = V × 250 ÷(250 + 4,500)≒ V の約 1/19。
線路がごく短く対地容量が小さくても、近づくのは最大で V まで。V を超えることはありません。

コンデンサだけの回路には巻数比のような「増やす仕組み」がないので、ステップアップは起きません。ここがEVTとの決定的な違いです。

4. それでも切り離す手順があるのはなぜ?

ZPDで昇圧しないなら、切り離さなくてもいい? そう単純ではありません。理由として考えられるのは、次のようなものです。

① 試験器の負担
C2は容量が大きいので、つないだままだと試験器から充電電流が流れます。試験器の出力が足りないと電圧が上がらない・ふらつくことがあります。
② 系統側の影響
高圧側に残留電圧や誘導があると、C1→C2経由で試験回路に入り、試験値が乱れることがあります。
③ 換算の前提がずれる
継電器のT-E端子は「どの回路につながった状態で、何Vが整定値の何%に当たるか」を決めて作られています。ZPDや変換器をつないだままにするかどうかで、その前提が変わる機種があります。
④ ほかの機器へも入る
同じ零相電圧を複数の継電器・表示器が使っていると、そちらにも試験電圧が入って動作・表示します。

どれが当てはまるか、そもそも切り離しが必要かは機種ごとの取扱説明書が答えです。「T-Eだからこう」と一つに覚えないこと。

5. EVTとZPDの違いを一枚で

電磁形EVTコンデンサ形ZPD
中身鉄心+巻線(変圧器)コンデンサ(+変換器)
零相電圧の取り出し三次オープンデルタC1とC2の分圧
低圧側から入れると巻数比でステップアップ(例:約20倍)ステップアップしない(入れた電圧以下)
つないだまま入れる主な問題高圧側の充電・短絡接地時の大電流試験器の負担・系統の影響・換算のずれ
見分けるヒント重い本体、銘板に一次・二次・三次電圧小型、銘板に容量(pF)や「零相電圧検出」

6. MEDIMULの現場に当てはめると

あのとき切り離した大型の機器が電磁形EVTだったなら、切り離しの一番の理由は逆加圧によるステップアップを防ぐためで筋が通ります。その先の小型の機器(ZPD系や変換器)のT-Eから入れたのは、継電器が見る零相電圧をそこで作っていたからだと考えられます。

ただし、当時の機器の型式と展開接続図はまだ確認できていないので、「たぶんこう」止まりです。次に同じ設備を見るときの確認ポイントはこれです。

大型機器の銘板:一次・二次・三次電圧があるか(=電磁形EVT)
↓
小型機器の銘板:容量(pF)や零相電圧変換器の表示
↓
展開接続図:T-Eの先がどこにつながっているか
↓
取扱説明書:試験時の切り離し箇所と試験電圧の換算

🛟 今日のうきわメモ

変圧器(EVT)は逆からでも巻数比で昇圧する。コンデンサ(ZPD)は分けるだけで昇圧しない。

「切り離さないとステップアップするか」の答えは、T-Eの先にあるのが変圧器かコンデンサかで決まる。分からなければ、銘板と展開接続図で確かめてから入れる。

📚 根拠・確認状況

  • EVTの逆加圧の倍率は、変圧器の電圧比(巻数比)からの計算です。三次190/3 Vは例で、実機の定格は銘板で確認してください。
  • ZPDの計算は、コンデンサの直列分圧の原理による仮の値です。C1・C2の実際の容量、零相電圧変換器の有無、T-E端子の換算は機種で異なります。
  • 参考にしようとした解説記事(jinden-tool.com「ZPD」)とメーカー資料は、この記事を書いた環境から閲覧できなかったため、内容は照合していません。
※ 本記事は原理を整理した日誌です。実際の保護継電器試験では、現場責任者、社内手順、操作票、展開接続図、機器の取扱説明書を確認してください。作業手順書ではありません。
2026.10.03|特高変電所・点検

特高変電所で、変圧器の採油(油中ガス分析)と接地抵抗測定。
接地極側と設備側を分けて測る理由。

作業の前に確認すること
これは当日の経験記録です。採油は変圧器メーカー・分析会社の手順と専用容器に従い、充電部との離隔・停電範囲を責任者と確認してから行います。接地線を外すと、その間は設備側が接地されていない状態になります。外せる条件(停電範囲・作業区域・外している時間)を事前に責任者と決め、測定後は確実に再接続して締付けを確認します。

今日は特高変電所で、変圧器の採油(油中ガス分析用)と接地抵抗測定をしました。

🛢️ 変圧器の採油:油の中のガスで「中の様子」を見る

変圧器の中は絶縁油で満たされていて、外から巻線や鉄心を直接見ることはできません。そこで絶縁油を少し採って、油に溶けているガスを分析します(油中ガス分析)。

変圧器の内部で過熱や放電などの異常があると、絶縁油や絶縁紙が分解してガスが出て、そのガスが油に溶け込みます。どんなガスがどれくらい増えたかを前回の分析値と比べることで、外からは見えない内部の状態を推定する、という考え方です。

採油
↓
専用容器に密閉して分析会社へ
↓
油中ガスの成分・量を分析
↓
前回までの値と比べて傾向を見る
参考動画
採油の流れは、こちらの動画が参考になります:採油ビデオ(mp4)
⚠️ 採った油が「中の油」を表していないと意味がない

ガスは空気に触れると抜けたり混ざったりします。採油口にたまった古い油や気泡が入ると、分析結果が変わってしまいます。採油の手順・容器は分析会社の指定に従うのが基本です。

🌍 接地抵抗測定:接地極側と設備側を分けて測る

今日の接地は、接地極側と設備側が分かれていて、その間がボルトコネクタでつながっていました。測定は次の順番です。

ボルトコネクタを外す
↓
接地極側を測定
↓
設備側を測定
↓
ボルトコネクタを再接続
↓
つないだ状態で接地抵抗を測定
関連
接地端子盤がないキュービクルで、A・B・C・D種をどこで測るかは こちらの記事 にまとめました。

🤔 なぜ一度外して、それぞれ測るのか

つないだままだと、測っている値には設備側から先の別の経路(ほかの接地や構造物など)が並列に入る可能性があります。並列の経路が入ると、接地極そのものの抵抗より低く見えてしまいます。

いったん外して接地極側だけを測れば、その接地極自体がどれくらいの抵抗なのかが分かります。設備側も単独で測ることで、それぞれの状態を切り分けられます。

最後に再接続してからもう一度測るのは、元どおりにつながっていること(コネクタの締め忘れや接触不良がないこと)を、数値で確かめる意味もあります。

外して測る
→ 接地極そのものの値を、ほかの経路の影響なしで確認する。
つないで測る
→ 実際に使う状態の値と、再接続が確実かを確認する。

📷 追記:採油の道具とラベル(2026.10.04)

当日の写真を追加しました。お客さまの名称、製造番号、作業会社名、QRコードは伏せています。

変圧器3台分の採油ラベル。定格15000kVA、66000V/6600V、1988年製などが書かれている

3台分(Tr.1〜Tr.3)の採油ラベル。容器に貼って分析会社へ送る

ラベルには、分析に必要な情報を書き込みます。今回の主な内容はこうでした。

欄書いた内容意味
使用油・PCB鉱油・不含油の種類とPCBの有無
容器500ml金属缶の容量
分析項目ガス・水分(Tr.1は酸価、絶縁破壊電圧、体積抵抗率、密度、動粘度、引火点も)油中ガス分析と、油そのものの劣化を見る特性試験
機器種別変圧器・本体LTC(負荷時タップ切換器)の油とは区別する
定格15,000kVA・66,000V/6,600V銘板から
劣化防止隔膜コンサベータの方式。油が空気に触れにくい構造
製造1988年・富士電機銘板から
⚠️ ラベルに書いてあった採油の注意

ラベルの上部には、採油の注意も印刷されていました。密閉式の変圧器は負圧の場合があること、油の飛散に注意すること、容器からオーバーフローさせて空気に極力触れないように採ること、容器内は油で満たして空気を残さないこと。ガスが抜けたり空気が混ざったりすると、分析結果が変わってしまうためです。

採油用の金属缶3本

採油用の金属缶。1台につき1缶

番号の付いたゴム栓とビニールチューブ

サイズ違いのゴム栓(数字が大きさ)とビニールチューブ。使い方は参考動画と手順書で確認

🤔 「放熱器 ℓ」が銘板に見当たらない

ラベルの油量欄は、本体と放熱器に分かれています。ところが銘板には、放熱器の油量が見当たりませんでした。

変圧器の銘板には、油量が総油量(全油量)だけ書かれていることがよくあります。分けた数字は、外形図(外形寸法図)や工場試験成績書・完成図書に載っていることがあります。

分からないときの書き方
総油量を勝手に「本体」の欄に入れると、本体だけの油量だと誤解されます。空欄にするか、「銘板は総油量のみ」とメモを添えて、書き方は分析会社に確認するのが安全です。

📝 Tr.3のメモを読み解く

Tr3のメモ。切換開閉器室油量120ℓ、ONAN、JEC-2200、%インピーダンスなど

作業用のメモ(Tr.3)

メモ意味
切換開閉器室 油量 120ℓ負荷時タップ切換器(LTC)の切換開閉器室の油量。本体や放熱器の油量ではない。LTCの油を別に採るとき、ラベルの「LTC」で使う数字
ONAN冷却方式。油も空気も自然に循環する油入自冷式(下で解説)
一次 15000kVA 66000V定格容量と一次の定格電圧
12.28%%インピーダンス(短絡インピーダンス)と思われる(下で解説)
JEC-2200-…電気学会の変圧器の規格の番号(末尾は年版)。型番ではない。製造年が1988年なので、銘板の表示は銘板そのもので確認する

メモの一部(「Compound G… 0.005」)は、写真からは読み取れませんでした。

次回のチェック
採油日・天候・気温・油温・採油者の欄は、採ったその場で記入する。製造番号は、ラベルどうしで取り違えていないか銘板と照らし合わせる。

⚡ 短絡インピーダンス(%インピーダンス)って何?

短絡インピーダンス(%インピーダンス、%Z)は、変圧器の二次側を短絡して、一次側から電圧を少しずつ上げていき、定格電流がちょうど流れたときの電圧が、定格電圧の何%かを表した値です。

二次側を短絡する
↓
一次側にかける電圧を0から上げる
↓
定格電流が流れたときの電圧(インピーダンス電圧)を読む
↓
インピーダンス電圧 ÷ 定格電圧 × 100 = %Z

メモの12.28%なら、「定格電圧の12.28%をかけると、短絡した状態で定格電流が流れる」という意味です。変圧器の巻線の抵抗と漏れリアクタンスをまとめた、変圧器の“電流の流れにくさ”です。

何に使う?

① 短絡電流の見当
変圧器のすぐ二次側で短絡したときの電流は、ざっと定格電流 × 100 ÷ %Z。%Zが小さいほど短絡電流は大きい。遮断器の遮断容量や保護継電器の整定の検討に使う。
② 電圧降下
負荷時の電圧変動は、%Zの抵抗分・リアクタンス分と負荷力率で決まります。%Zの大きさだけでは電圧降下を一意に決められません。
③ 並行運転
変圧比・位相が一致し、インピーダンス角も等しい条件では、負荷分担は同一基準の%Zに反比例します。各機の自己容量基準なら定格容量÷%Zに比例。同容量の場合に限って、銘板の%Zだけの逆比で比べられます。
④ 基準容量の換算
%Zは自分の定格容量が基準。系統計算で電圧基準を変えずに容量基準をそろえるときは「%Z × 基準容量 ÷ 定格容量」で換算する。
今回の変圧器で計算してみる(電源側のインピーダンスを0とした場合)
二次側の定格電流 = 15,000 kVA ÷(√3 × 6.6 kV)≒ 1,312 A
二次側すぐの三相短絡電流 ≒ 1,312 A × 100 ÷ 12.28 ≒ 約10.7 kA
10 MVA基準に換算した%Z = 12.28 × 10 ÷ 15 ≒ 8.19 %
実際の短絡電流は、電源側(電力会社の系統)のインピーダンスも加わるので、これより小さくなります。

🌬️ ONAN(冷却方式)の読み方

ONANは、変圧器の冷却方式を4文字で表した記号です。1文字ずつ意味があります。

何文字目表すもの記号
1文字目巻線に触れる冷却媒体O:鉱油など(燃焼点300℃以下の絶縁液) K:燃焼点が300℃を超える絶縁液 ほか
2文字目その媒体の循環N:自然循環 F:ポンプで強制循環 D:強制循環で巻線へ導く
3文字目外側の冷却媒体A:空気 W:水
4文字目外側の媒体の循環N:自然対流 F:ファンなどで強制

つまりONANは、油(O)が自然に循環(N)し、外側は空気(A)で自然に冷やす(N)=油入自冷式です。ポンプもファンもない、いちばんシンプルな方式です。

ONAN:油入自冷式(ポンプ・ファンなし)
ONAF:油入風冷式(放熱器にファン)
OFAF:送油風冷式(油ポンプ+ファン)
ODAF:導油風冷式(油を巻線へ導く)
OFWF:送油水冷式(油ポンプ+水冷却器)

ONANの変圧器では、放熱器の中を油が自然に回って冷えます。油量の欄が「本体」と「放熱器」に分かれているのは、この放熱器にもかなりの量の油が入っているからです。ONAN/ONAFのように、ファンを回すと定格容量が上がる二重定格の変圧器もあるので、銘板の冷却方式と容量はセットで見ます。

🛟 今日のうきわメモ

油中ガス分析は「見えない変圧器の中」を油で見る点検。前回との比較で傾向を見る。

接地抵抗は「どこからどこまでを測っているか」が大事。外して単独、つないで全体。最後は必ず再接続を確認。

※ 採油の方法、分析項目と判定、接地の構成や測定方法は、設備や機器、分析会社によって異なります。実際の作業では、メーカー資料、社内手順、現場責任者の指示を確認します。本記事は現場経験を残す日誌であり、作業手順書ではありません。
2026.08.29|今日のなんで?・CT / 保護継電器

CTの磁気飽和は、結局なにが起きている?
B-H・ヒステリシス・励磁特性・膝点を一本につなげる

作業の前に確認すること
励磁特性の原理を学ぶ記事です。実試験の前に対象CTを一次・二次の両回路から試験に必要な状態へ分離し、無電圧・放電・再充電防止、許容試験電圧をメーカー手順と照合します。一次通電中のCT二次開放はできません。

「CTが飽和する」「励磁電流が急に増える」「膝点を見る」「ヒステリシスがある」「試験後は消磁する」。別々に覚えるとややこしいので、鉄心の中で起きていること → CT端子から見える現象 → 励磁特性試験の順に一本につなげます。

まず結論 通常のCT 励磁特性 B-H ヒステリシス 膝点 試験表 メーカー例

🟢 メーカー・規格情報で確認🔵 現場で理解しやすい形に整理🟡 説明用モデルを含む

まず結論:全部、同じ鉄心の話

CTの鉄心には、磁束を増やせる範囲に限界がある。限界に近づくと、電圧を少し上げただけで励磁電流が大きく増える。この外から見える変化が励磁特性曲線の「膝」で、鉄心内部ではB-H特性の飽和領域へ入っている。
CT二次へ交流電圧を加える
↓
励磁電流が流れる
↓
鉄心が磁化される
↓
磁束が増える
↓
鉄心の限界へ近づく
↓
磁気飽和
↓
少しの電圧上昇で励磁電流が急増
↓
励磁特性曲線に「膝」が現れる
言葉何を見ている?一言でいうと
B-H特性鉄心そのもの磁化する力を増やしたとき、鉄心の磁束がどう増えるか
磁気飽和鉄心の限界磁化する力を増やしても、磁束が増えにくくなった状態
ヒステリシス磁化の「履歴」磁化を戻しても同じ道を戻らず、磁気が少し残る性質
励磁特性曲線CT二次端子から見た結果二次電圧と励磁電流の関係
膝点励磁特性曲線の曲がり飽和の影響が強く現れ始める目安
残留磁気励磁を止めた後の鉄心磁化する力をゼロにしても残る磁気
消磁残留磁気を小さくする処置磁化の往復幅を徐々に小さくして中心へ戻していく

1. 普通に使っているCTでは何が起きている?

例えば200/5AのCTなら、一次側の大きな電流を二次側の5A系へ変換して、OCRや電流計へ渡します。

一次導体 200A
↓
【 CTの鉄心 】
↓
二次回路 5A
↓
OCR・電流計

一次電流は鉄心を磁化しようとします。すると二次側にも電流が流れ、その二次電流が作る磁化作用は、一次側による磁化作用を打ち消す方向になります。

一次側
一次電流 ↓ 鉄心を磁化しようとする
二次側
二次電流 ↓ 一次側の磁化作用を 打ち消す方向に働く

だから正常なCTでは、一次電流が大きくても、鉄心の磁束を必要以上に大きくしないように働きます。

2. 励磁特性試験では、CTを逆側から見る

励磁特性を確認するときは、通常運転とは違い、設備から適切に切り離されたCTの二次側から交流電圧を与え、二次電圧と励磁電流の関係を見ます。OMICRONも、励磁特性は二次側から電圧を加え、励磁電流を測る方法として説明しています。

一次側 励磁特性を見る状態では一次電流を流さない CT 交流電圧源 測るもの ① 二次電圧 ② 励磁電流 二次側から「この鉄心はどこで飽和するか」を観察する
重要:運転中のCT二次開放とは別の話。
運転中に一次電流が流れているCTの二次回路を開放すると危険な高電圧が生じるおそれがあります。ここで説明しているのは、設備から適切に切り離し、試験条件を整えたCTの励磁特性評価の原理です。この記事は高電圧試験の操作手順書ではありません。

3. 最初は「電圧を上げても、励磁電流は少ししか増えない」

鉄心にまだ余裕がある領域では、二次電圧を上げても励磁電流は比較的小さいままです。ところが飽和に近づくと、二次電圧は下がるのではなく上昇を続けますが、そのわずかな電圧上昇に対して励磁電流が大きく増えるようになります。

下表は仕組みを理解するための説明用の架空例であり、特定CTのメーカー値・実測値ではありません。

二次電圧励磁電流鉄心の状態イメージ
20V5mAまだ十分に余裕
40V8mA正常励磁領域
60V12mA正常励磁領域
80V18mAまだ電圧がよく伸びる
100V30mA曲がり始める例
110V50mA飽和の影響が強くなる
120V150mA励磁電流が急増
130V500mA深い飽和側の例
励磁電流 [mA] →(対数目盛) 二次電圧 [V] ↑ 204060 80100120130 51020 50100200500 膝点判定の例(約100V) 飽和前:電圧を上げても励磁電流は比較的小さい 飽和側:少しの電圧上昇で励磁電流が大きく増える

※重要:この曲線は、直前の「説明用の架空データ」8点をそのままプロットしたものです。実在CTの特性値ではありません。横軸は励磁電流の変化を見やすくするため対数目盛です。励磁特性曲線は膝点を越えても二次電圧が下がる曲線ではなく、上昇を続けながら傾きが小さくなります。 実機評価ではメーカー曲線または実測値を使用します。

4. 鉄心の中ではB-H特性の「飽和領域」へ進んでいる

B-Hという記号を暗記する必要はありません。ここでは、横軸=鉄心を磁化しようとする強さ、縦軸=実際に鉄心の中にできた磁束の強さと思えば十分です。

磁化する力を少し増やす
↓
最初は磁束が大きく増える
↓
さらに磁化する
↓
鉄心の限界へ近づく
↓
磁化する力を増やしても磁束があまり増えない
↓
磁気飽和
つまり、B-H特性は「鉄心内部の原因」。励磁特性曲線は、その結果をCT二次端子から電圧と電流で見たもの。

5. ヒステリシスは「鉄心が前の磁化状態を少し覚えている」性質

交流では磁化する方向がプラス・マイナスへ繰り返し入れ替わります。しかし鉄心の磁気は、磁化する力に対して完全に同じ道を往復しません。そのためB-Hの関係を一周するとループを描きます。これがヒステリシスループです。

磁化する力が0でも磁気が残る 反対方向にも残る 磁化する強さ → 鉄心の磁気 ↑

磁化する力をゼロに戻しても、鉄心の磁気が完全にはゼロへ戻らず少し残ります。これが残留磁気です。

強く励磁する
↓
鉄心が磁化される
↓
励磁を止める
↓
磁気が少し残る=残留磁気

残留磁気の向きと次に加わる磁束の向きが重なると、片側の飽和までの余裕が小さくなることがあります。だから専用CT試験器には、試験後にCTを消磁する機能を持つものがあります。OMICRON CT Analyzerも、試験後の消磁を機能として明記しています。

6. 膝点は「何となく曲がったところ」ではなく、判定の考え方がある

東芝産業機器システムのFAQでは、JEC-1201によるCTの飽和開始電圧について、励磁電圧を10%増加させたとき、励磁電流が50%増加する点と説明しています。

例:100V → 110V 電圧は +10% 40mA → 62mA 励磁電流は +55% → JEC-1201の説明に照らすと、飽和開始付近の判定候補
規格によって膝点の定義は同じとは限らない。
試験表には「JEC-1201で評価」「IEC/IEEE系で評価」など、どの定義で判定したかを残す。単に「グラフが曲がった気がする」で決めない。

7. CT比だけで「何Vで飽和する」とは決められない

50/5A、100/5A、200/5A、1,000/5A……と変流比が違っても、膝点電圧が単純に比例するわけではありません。

鉄心の材質・断面積
磁束をどこまで受け持てるかに直結する。
二次巻線の巻数
同じ鉄心でも電圧特性に影響する。
巻線抵抗
端子から見える電圧・励磁電流に影響する。
計測用 / 保護用
求められる飽和特性そのものが違う。
定格負担・階級
CTが保証する性能条件と関係する。
残留磁気
測定前の鉄心状態でも飽和余裕が変わり得る。
だから一番強いのは、その型式のメーカー励磁曲線・メーカー指定値・適切な試験による実測値。

8. うきわメモ用「CT励磁特性試験表」

実測値を蓄積するなら、CTの銘板情報と測定値を分けて残します。これなら後でメーカーやCT比が違うもの同士を比較できます。

CT基本情報
メーカー                
型式                
CT比    /    A
二次定格1A / 5A
定格負担    VA
確度・保護階級                
過電流定数など                
周波数50Hz / 60Hz
メーカー励磁曲線有 / 無 資料名:         
判定基準JEC-1201 / IEC / IEEE / その他
試験後消磁実施 / 対象外 / 未確認
No.CT二次電圧 [V]励磁電流 [mA / A]前点からの電圧増加 [%]前点からの電流増加 [%]判定・メモ
1――
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12

増加率は次のように計算できます。

電圧増加率 [%] = (今回電圧 - 前回電圧) ÷ 前回電圧 × 100 励磁電流増加率 [%] = (今回電流 - 前回電流) ÷ 前回電流 × 100

CTを何台か測ったら、比較表へ

メーカー型式CT比用途定格負担メーカー飽和値実測膝点根拠
計測 / 保護
計測 / 保護
計測 / 保護

この形なら、「CT比が大きいから飽和電圧が高いはず」のような推測だけでなく、メーカー値と実測値を並べて比較できます。

9. 三菱電機に実際の「励磁特性曲線」がある

三菱電機の技報資料には、BN-O形CTについて実際の励磁特性曲線が掲載されています。誌面78ページの図6.1が200/5A、図6.2が1,000/5Aです。

資料中のCT図グラフから読み取れること
BN-O形 200/5A図6.1励磁電流が増えるにつれ二次電圧が上昇し、100V前後の領域で曲線が大きく寝てくる。
BN-O形 1,000/5A図6.2変流比は大きく違うが、こちらも100V前後の領域で飽和傾向が見える。
「膝点=ちょうど100V」と資料が数値指定しているわけではない。
100V前後というのはグラフ形状の読み取り。正確な飽和開始電圧は、採用する規格の定義と測定データで判定する。

このメーカー実例は、CT比だけでは飽和電圧を決められないことを理解する良い材料になります。

10. 「磁気飽和」と「絶縁破壊」は別物

磁気飽和絶縁破壊・耐電圧
何の限界?鉄心の磁気的な限界巻線・絶縁物の電気絶縁上の限界
何が起きる?磁束が増えにくくなり、励磁電流が急増絶縁が耐えられなくなり、放電・破壊などにつながる
同じ電圧?同じではない。「飽和した電圧=絶縁限界」ではない。

三菱の同資料でも、励磁特性とは別に二次回路試験や耐電圧試験の記載があります。磁気的な限界と絶縁上の限界は別の評価です。

11. 最後に一本で覚える

CTには鉄心がある
↓
鉄心には磁束を増やせる限界がある
↓
限界へ近づくと磁気飽和
↓
飽和すると励磁電流が急増
↓
外からV-Iで見たものが励磁特性曲線
↓
大きく曲がる場所が膝点
↓
鉄心内部の原因を表すのがB-H特性
↓
交流で履歴まで見るとヒステリシスループ
↓
磁化を止めても残るのが残留磁気
↓
残留磁気を小さくするのが消磁

🛟 今日のうきわメモ

B-Hは鉄心内部の原因。励磁特性曲線はCT端子から見える結果。膝点はその結果に飽和がはっきり現れ始める場所。

CTの「磁気飽和」「ヒステリシス」「残留磁気」「励磁特性試験」は別々の話ではなく、全部ひとつの鉄心を違う角度から見ている。

📚 根拠・参考資料

※この記事はCTの磁気飽和と励磁特性を理解するための技術メモです。実設備の試験手順・操作票の代わりではありません。運転中のCT二次回路開放は危険です。励磁特性評価は対象CTの仕様、メーカー資料、使用試験器の取扱説明書、社内手順および現場責任者の指示に従って実施してください。
2026.08.29|今日のなんで?・高圧ケーブル / 耐圧試験

高圧ケーブルはなぜコンデンサになる?
芯線・絶縁体・金属遮へい層・接地を「導体-絶縁体-導体」で理解する

作業の前に確認すること
実試験前に、系統図と操作票で全電源(逆送・別電源を含む)からの分離、無電圧、放電、誤投入防止を確認します。試験区間・相の一括状態・遮へい層接地・他機器の切離し・立入管理を責任者と照合し、保護接地と試験電圧印加部の処理は試験器・対象機器の手順に従います。容量測定でも残留電荷の確認が必要です。

ケーブルの「対地静電容量」は、いったいどことどこの容量なのか。金属遮へい層を接地すると何が変わるのか。さらに、遮へい層を接地しないまま耐圧試験をすると、なぜ正しい試験にならないのか。全部を「導体-絶縁体-導体」に分解して整理します。

結論 構造 容量測定 浮いているとは 耐圧試験 遮へい層接地

🟢 メーカー・技術資料で確認🟡 等価回路で整理

まず結論

高圧ケーブルの主な静電容量は、「芯線(導体)-絶縁体-金属遮へい層(導体)」でできている。金属遮へい層を接地すると、その導体が大地電位に固定されるため、芯線-遮へい層間の容量を対地静電容量として扱える。
芯線(導体)
↓
ケーブル絶縁体(誘電体)
↓
金属遮へい層(導体・大地電位)
↓
接地線 → 接地極 → 大地

一番大事なのは、「金属遮へい層」はただの保護材ではなく、電気を流す導体だということです。

1. 6.6kV CV/CVTケーブルを中心から外へ見る

メーカー公式 6600V CV/CVTの代表的な構造は、次のようになっています。

芯線(導体)
↓
内部半導電層
↓
架橋ポリエチレン絶縁体
↓
外部半導電層
↓
金属遮へい層(銅テープなど)
↓
シース(ビニルなどの外被)

SWCC/SFCCの6600V CVT仕様でも、遮へいには軟銅テープ、シースにはビニルを用いる構造が示されています。つまり、金属遮へい層とシースは別物です。

2. 「コンデンサは導体-絶縁体-導体」で探す

普通のコンデンサは、

電極A(導体) │ 誘電体(絶縁体) │ 電極B(導体)

です。高圧ケーブルも同じように分解できます。

芯線(導体) │ ケーブル絶縁体 │ 金属遮へい層(導体)

したがって、ケーブルそのものが非常に長い円筒形のコンデンサとして振る舞います。

3. ケーブル単体でも静電容量は測れる

ケーブルを設備から完全に取り外して、地面にも接続していない状態でも、

テスター+ → 芯線

芯線(導体)
↓
絶縁体
↓
金属遮へい層(導体)

テスター- → 金属遮へい層

とすれば静電容量を測れます。大地は必要ありません。静電容量は「2つの導体の間の性質」だからです。

同じ芯線の両端を測っても静電容量ではない。
同じ芯線の左端と右端は一本の導体なので、そこは基本的に導通です。容量測定は、絶縁体を挟んだ別々の2導体に当てます。

4. 片端で測ってもケーブル全長分が見える

テスター棒をキュービクル側の端末にしか当てていなくても、芯線と金属遮へい層はそれぞれケーブル全長にわたって続いています。

PAS側 キュービクル側 芯線 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━● │ │ │ │ │ │ │ C C C C C C C │ │ │ │ │ │ │ 遮へい層━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●

全長に分布している小さな静電容量は、電気的にはほぼ並列なので、

Ctotal = C + C + C + …(図の小さなCを全部足す)

となります。単位長さ当たりの静電容量を c [F/m]、長さを L [m] とすれば、

Ctotal = c × L

です。メーカーのケーブルカタログにも、導体サイズごとの参考静電容量が µF/km で示されています。

5. 遮へい層を接地すると「対地静電容量」になる

設備では金属遮へい層を接地します。

芯線(導体)
↓
絶縁体
↓
金属遮へい層(大地電位の導体)
↓
接地線
↓
接地極
↓
大地

つまり、芯線から見れば相手側電極である金属遮へい層が大地とほぼ同じ電位に固定されます。そのため、

C(芯線-大地) ≒ C(芯線-金属遮へい層)

として扱えます。

6. 「遮へい層が浮いている」って何?

ここでいう「浮いている」=物理的に宙に浮いているではありません。

電気的に浮いている(フローティング)とは、その導体が接地や電源などに接続されず、電位が0Vなどに固定されていない状態。

ケーブルにしっかりくっついていても、遮へい層の接地線がつながっていなければ、遮へい層は電気的に浮いています。

7. なぜ遮へい層が浮くと「コンデンサが2つ」出てくる?

芯線から大地までを、もう一度導体-絶縁体-導体で分解します。

① ケーブル内部
芯線 (導体①) ↓ ケーブル絶縁体 ↓ 金属遮へい層 (導体②)

ここに C1 ができます。

② ケーブル外部
金属遮へい層 (導体②) ↓ シース・空気など (絶縁体) ↓ 大地・周囲金属 (導体③)

ここに C2 ができます。

したがって、遮へい層を接地せずに「芯線-大地」を見ると、等価回路は、

芯線 ── C1 ── 金属遮へい層 ── C2 ── 大地

となります。C2はケーブルの中に「もう1個コンデンサ部品が入っている」という意味ではなく、遮へい層と大地・金属ラック・建物などとの間に自然に生じる浮遊容量です。

8. 遮へい層を接地するとC2はどうなる?

金属遮へい層を接地すると、遮へい層と大地が接地線で直接つながります。

芯線 ── C1 ── 金属遮へい層 ───── 大地 ↑ 導体で直結
C2がなくなるわけではありません。遮へい層も大地も0Vなので、C2の両側に電圧の差がありません。Q=C×V で V=0 なので、C2には電荷がたまらず、電流も流れません。つまりC2はコンデンサとして働きません。

電気力線で見ると、芯線から出た電気力線は絶縁体を通って、すべて遮へい層で止まります。接地された導体の外側には電界ができない(静電遮蔽)ので、遮へい層の外にあるシースや空気は、耐圧試験の充電電流に関係しません。🟢 大学講義資料・技術資料

そのため、芯線から大地を見た主な容量はC1、つまり芯線-絶縁体-金属遮へい層になります。ケーブル単体で芯線-遮へい層を測った値と、設備で遮へい層を接地して芯線-アースを測った値が基本的に近くなるのはこのためです。

※実測値は端末部、測定リード、他相の処理、周囲金属、接続機器などの影響で多少変わります。

9. 耐圧試験では、このCに充電電流が流れる

交流耐圧では、ケーブルの静電容量に対して、

Ic = 2π f C V
Ic充電電流 [A]
f周波数 [Hz]
Cケーブル全長の静電容量 [F]
V芯線-遮へい層間にかかる交流電圧 [V]

が流れます。ただし、絶縁体の中を普通の導電電流が突き抜けているわけではありません。交流電界の変化に伴う変位電流として、外部回路に充電電流が現れます。

10. 計算した充電電流と実測値をクロスチェックする

静電容量 C を測ったら、それで終わりではありません。試験電圧と周波数を使って、耐圧時に流れるはずの充電電流を先に計算しておくと、結線や接地の異常に気づくための強いチェックになります。

Ic = 2π f C V

ムサシインテック R-1220K の取扱説明書にも、この式による充電電流の計算方法とケーブルの参考静電容量が掲載されています。つまり、「事前にCから予想電流を出し、試験中の電流と見比べる」という考え方は、試験器の仕組みに沿った確認方法です。

計算したIcと実測電流が大きくずれていたら、「何かがおかしい」と考える。
そのまま数字だけ記録するのではなく、遮へい層接地、試験範囲、結線、ケーブル長・種類、周波数・印加電圧、計器の読み方などを再確認します。特に金属遮へい層が接地されていなければ、12章の容量分圧によって試験器から見える電流が小さくなる方向に働きます。ただし、どれだけ小さくなるかはC2の大きさ(設置状態)しだいなので、電流が計算どおりでも、遮へい層の接地は目と導通で別に確認します。🟡 推定

リアクトルを使わない場合

計算値 Ic ≒ R-1220K 二次側電流計の値

完全一致する必要はありません。ケーブルの実容量、端末部、損失・漏れ電流、計器精度などがあるためです。ただし、桁が違う、明らかに小さすぎる/大きすぎるといった場合は結線・接地・試験対象を確認する価値があります。

「一次電流」と「二次電流」は同じ値になるのか?

なりません。 R-1220K は入力0~120V、出力0~12000V、巻線比1:100の昇圧トランスです。理想的には電流比は電圧比の逆になるため、

V1 × I1 ≒ V2 × I2 I1 ≒ 100 × I2

となります。例えば二次側が 100mA 流れているなら、一次側は概ね 10A 級になります。したがって、一次電流と二次電流の数値が大きく違うこと自体は正常です。

見るべきは「一次と二次が同じか」ではなく、巻線比で換算した関係が大きく崩れていないか。

リアクトル使用時はA1とA2を混同しない

R-1220K+DR-1220MHでは、メーカー取説上、

計器何を表示する?何と比べる?
A1耐圧トランスの出力電流リアクトル補償後の電流
A2被試験ケーブルに流れる充電電流Cから計算したIc

リアクトルはケーブルの容量性電流と逆向きの無効電流を流してトランスの負担を減らします。したがって概念的には、

A2 ≒ Ic A1 ≒ | Ic − IL |

となり、A1とA2が大きく違っていても正常です。

DR-1220MHは10,350V印加時、リアクトル電流がメーカー仕様で50Hz:約165mA、60Hz:約138mAです。例えば50HzでケーブルのA2が200mAなら、理想化すればA1は約35mAまで小さくなり得ます。

A2 = 200mA IL = 165mA ↓ A1 ≒ |200 − 165| ≒ 35mA

計算値と実測値が合わないときの確認ポイント

現象確認すること
実測が計算よりかなり小さい金属遮へい層の接地忘れ・接触不良、試験対象が途中で切り離されていないか、電圧・周波数、容量測定条件、電流計の経路
実測が計算よりかなり大きい想定外のケーブル・機器まで接続されていないか、ケーブル長・種類の取り違え、漏れ・損失成分
A1が想定より大きい(リアクトル使用)リアクトルの結線、台数・定格、50/60Hz、補償量、接続不良
電流計の値だけ不自然計器レンジ、コード接続、試験器本体の不要な接地・接触、計器回路の分流

※R-1220K取説では、トランス部筐体を大地から絶縁して使用するよう指定されており、筐体が大地に接触すると二次側電流計が正常に動作しない場合があると明記されています。またDR-1220MH取説では、内蔵アレスターが導通状態になると電流計と並列に分流され、正しい電流表示ができない旨が記載されています。

11. 正常な耐圧試験では遮へい層を大地電位に固定する

耐圧試験器
↓
芯線(試験電圧)
↓
ケーブル絶縁体
↓
金属遮へい層(接地・0V側)
↓
接地系統
↓
試験器の戻り側

こうしてはじめて、ケーブルの主絶縁「芯線-絶縁体-金属遮へい層」に、意図した試験電圧をかけることができます。

12. 遮へい層を接地し忘れたまま耐圧をかけると?

耐圧試験前に、金属遮へい層の接地確認は必須。
遮へい層が電気的に浮いたままでは、所定の対地耐圧条件を作れず、遮へい層自体が高電位になる危険があります。

工事後、遮へい層の接地をしないまま芯線へ試験電圧を印加すると、

芯線 (導体①・試験電圧) ↓ C1:ケーブル主絶縁 ↓ 金属遮へい層 (導体②・電位が固定されない) ↓ C2:シース・空気等を介した浮遊容量 ↓ 大地 (導体③・0V)

という容量分圧回路になります。

重要:金属遮へい層を接地しないと、充電電流は小さくなる。
芯線-金属遮へい層の容量C1と、金属遮へい層-大地の浮遊容量C2が直列になるため、合成容量はC1単独より小さくなります。したがって Ic=2πfCV より、試験器から見える充電電流も小さくなります。
Ceq = (C1 × C2) / (C1 + C2) Ceq < C1

本当に問題なのは電流の大小ではなく、遮へい層の電位が0Vに固定されないことです。

芯線:試験電圧
↓
C1
↓
遮へい層:???V
↓
C2
↓
大地:0V

例えば遮へい層の電位が上昇すれば、芯線に10kVを印加していても、ケーブル主絶縁にかかる電圧は10kVより小さくなります。これでは「主絶縁に所定電圧をかけた」ことを保証できず、正しい耐圧試験として評価できません。

技術資料 日本電力ケーブル接続技術協会(JCAA)も、遮へい層の接地が不確実だと遮へい層に誘導電圧が発生し、近接する接地物へ充電電流が流れようとして、火災・感電の原因になり得ると注意喚起しています。実際に、施工時に傷ついた接地線が使用中に断線し、充電電流がゴムスペーサを通ってブラケットへ流れ、ゴムスペーサが炭化・焼損した事故事例も公開されています。

13. 現場でいう「シース接地」は何を接地している?

6.6kV CV/CVTで、実際に接地するのは外側のビニルシースそのものではなく、内部の金属遮へい層です。

金属遮へい層(銅テープ等) ← 接地する導体 ↓ シース(ビニル等) ← 外側の絶縁・保護外被

現場で「シースアース」「シース接地」と呼ばれていても、構造としては金属遮へい層の接地と理解するほうが正確です。

規程・技術資料 高圧ケーブルの遮へい層(ケーブルの被覆に使用する金属体)には接地工事が必要です。種類は施設場所で変わり、地中電線路ではD種(電技解釈 第123条)、高圧屋内配線のケーブル工事ではA種、ただし接触防護措置を施す場合はD種でよい(電技解釈 第168条)とされています。JESCでは、高圧機器のA種接地とケーブル遮へい層側の接地を連接し、合成抵抗をA種接地抵抗値以下にする方式も規定されています。

14. 片端接地・両端接地は勝手に決めない

需要家の引込用高圧ケーブルでは、一般に片端接地が採用されます。JCAAの資料では、

片端接地遮へい層の循環電流が流れない。ただし非接地端には誘起電圧が発生する。
両端接地遮へい層電位を抑えやすいが、遮へい層に循環電流が流れ、地絡保護との関係も考慮が必要。

片端接地では接地の確実さが期待できる側を選び、受電室に至るケーブルは受電室側で接地することを原則とされています。ただし、ケーブル長、誘起電圧、ZCT・GR/DGRの検出方式などで設計は変わります。

15. 第2・第3・第4変電所がある施設では?

施設全体で一か所だけを見るのではなく、高圧ケーブルの区間ごとに遮へい層の接地方式を考えます。

第1変電所
↓ ケーブル①
第2変電所
↓ ケーブル②
第3変電所
↓ ケーブル③
第4変電所

ケーブル①・②・③それぞれについて、接地の確実さ、非接地端の誘起電圧、ZCTの位置と地絡検出範囲などを確認して接地点を決めます。「A種接地が近いから、とりあえず両側で渡りを掛ける」という決め方はしません。

16. 現場30秒版

疑問答え
ケーブルのコンデンサはどこ?芯線-絶縁体-金属遮へい層
金属遮へい層は導体?導体。代表例は銅テープ。
シースは?外側のビニル等。金属遮へい層とは別。
ケーブル単体でも容量は測れる?芯線-金属遮へい層なら測れる。大地は不要。
なぜ片端で全長分を測れる?芯線・遮へい層が全長につながり、分布容量が並列に足されるから。
遮へい層を接地すると?遮へい層が大地電位になり、芯線-遮へい層容量を対地容量として扱える。
遮へい層-大地(シース・空気)の容量は効く?接地していれば両側0Vで電圧差がないので、働かない。遮へい層の外に電界はできない。
「浮いている」とは?物理的ではなく、電気的にどこにも接続されず電位が固定されていない状態。
遮へい層非接地で耐圧すると?容量分圧で遮へい層電位が上がり、主絶縁に所定電圧がかかった保証がなくなる。危険。
遮へい層を接地しないと充電電流は?小さくなる。C1とC2が直列となり、合成容量が小さくなるため。
計算Icと実測が大きく違う結線・接地・試験範囲などを再確認するサイン。
一次電流と二次電流は同じ?同じではない。R-1220Kは1:100なので、一次電流は概ね二次電流の100倍級。
リアクトル使用時のA1とA2は?A2=ケーブル充電電流、A1=補償後のトランス出力電流。大きく違っていても正常。
「シース接地」の実体は?6.6kV CV/CVTでは、基本的に金属遮へい層の接地。

🛟 覚え方

迷ったら「導体-絶縁体-導体」に分解する。

芯線 → 絶縁体 → 金属遮へい層。これがケーブル本体のコンデンサ。

金属遮へい層を接地すれば「大地電位の導体」になる。遮へい層と大地の間(C2)は、両側とも0Vで電圧の差がないので、コンデンサとして働かない。接地を忘れると、C2に電圧がかかって効いてくる。

この考え方だけで、静電容量測定・充電電流・耐圧試験・遮へい層接地が一本につながる。

※耐圧試験は高電圧を扱うため、対象設備を確実に切り離し、無電圧確認・放電・接地状態確認を行い、使用する試験器・ケーブル・端末の取扱説明書および現場手順に従って実施します。

2026.08.29|今日のなんで?・PAS / SOG

PASの過電流ロックはどう動く?
OCR・C接点・TC・Va/Vb/Vc・GR・SOを実機から理解する

作業の前に確認すること
以下はKLT-PA/LTR-P・LTR-Rの動作原理と当時の実機記録です。PASの自動動作を説明しており、事故中の手動操作を指示するものではありません。試験・抵抗測定・制御線処理の前に、型式、全電源、無電圧、再送電防止、トリップ範囲を責任者・操作票・取説で確認します。主回路停電中も制御電源や蓄積電荷が残る場合があります。

短絡事故でPASがすぐ開かないのはなぜか。今回、戸上電機のSOG付PASの取説と、分解した実機でOCR接点を追った確認内容をつなげることで、「地絡は直接トリップ」「短絡は一度ロックして上位CBを待つ」という仕組みがかなり明確になりました。

結論OCR接点地絡短絡18T試験VT内蔵注意

🟢 メーカー公式で確認🔵 実機で確認🟡 回路からの整理

まず結論

地絡事故
地絡
↓
ZCT・ZPD
↓
SOGがGR判定
↓
TC励磁
↓
PAS開放

通常の地絡では過電流ロックを掛けず、そのままPASをトリップさせる。

短絡・大過電流
短絡
↓
OCR動作
↓
TC回路をロック
↓
上位CB遮断
↓
停電
↓
SOトリップ
↓
PAS開放

PASに大きな短絡電流を遮断させず、先に上位遮断器へ任せる。

メーカー公式 戸上電機はSOG動作について、地絡事故はすぐにトリップし、ロック電流値以上の過電流事故では開閉器をいったんロックし、電源側遮断器が動作して無電圧になった後に自動開放すると説明しています。地絡と過電流が重なった場合も過電流側のシーケンス、すなわちSO動作が優先されます。

1. なぜ「過電流ロック」が必要なのか

PASは高圧負荷開閉器です。上位のVCBのように、大きな短絡電流を遮断することを主目的にした遮断器ではありません。

短絡発生
↓
PASが先に開くのは避けたい
↓
OCRで「今は切るな」とロック
↓
上位CBが短絡電流を遮断
↓
主回路が無電圧になるとPASが自動開放(作業安全の確認とは別)

メーカー公式 KLT-PA系ではロック電流が機種定格によって定められ、200A品は350A±50A、300/400A品は600A±100Aです。これはPAS自身の「短絡遮断容量」ではなく、過電流ロックを動作させるための値です。

2. PAS内部の役割分担

記号名称役割
OCR過電流ロックリレー短絡・大過電流を検出し、PASのトリップを一時的にロックする
ZCT零相変流器地絡時の零相電流 Io を検出
ZPD零相電圧検出器方向性SOGで零相電圧 Vo を検出
TCトリップコイル励磁されると機械ラッチを外しPASを開放

3. Va・Vb・Vcは何をしている?

メーカー公式 取扱説明書では、Va-Vcは開閉器トリップ時に電圧を出力する端子、Vb-Vcは過電流ロックリレーの入力端子と定義されています。

Va ── TCを含むトリップ回路 ── Vc Vb ── OCRの過電流ロック情報 ── Vc

この二つを同じ「接点端子」と考えると分かりにくくなります。Va側はTCを動かすトリップ経路、Vb側はOCRが過電流を検出したことをSOG側へ伝える経路、と整理すると見通しがよくなります。

4. OCRの接点はC接点なのか

ここが今回いちばん理解が進んだ部分です。

取説の「補助接点1C」とOCRは別物。
戸上取説で「主接触連動スイッチ(1C付)」と書かれている S は、PAS主接触器と連動するオプション補助接点です。これはOCRではありません。

実機確認 一方、分解したOCR機構を配線図と照合した確認では、接点について「B接点」「A接点」「共通端子」として追跡し、通常時はTC側、過電流動作時はTCを介さない側へ切り替わることを確認しました。

OCR無動作・通常時
Va │ TC │ [通常側 接点:閉] │ Vc Vb-Vc側:開
OCR動作・過電流時
Va │ TC │ [通常側 接点:開] Vb ── [過電流側:閉] ── Vc

整理 したがって機能的には、共通接点が通常側(b側)と動作側(a側)の間を切り替えるC接点的な構造として理解すると、実機と回路の両方がつながります。ただし「メーカー取説本文にOCR=1cと明記されている」という意味ではありません。

5. なぜVa-Vcを測ると約140Ωなのか

メーカー公式 メーカーの点検フローでは、開閉器側Va-Vc間の抵抗が約140Ωであることを確認する箇所があります(KLT-PA/LTR系、No.01314b・本文32頁)。制御装置側から分離した開閉器側の値であり、通電中や制御装置を接続したままの抵抗測定を意味しません。

Va
↓
TC巻線
↓
OCR通常側接点
↓
Vc

つまり、VaとVcが金属接点で直接ショートしているわけではありません。途中にTC巻線があるため、正常な閉路状態でもゼロΩではなく、およそ140Ωになります。

6. 地絡事故ではどう動く?

通常の地絡ではOCRのロック電流値ほどの大電流にはならないため、OCRは通常位置のままです。したがってVa-TC-Vcのトリップ経路は生きています。

地絡発生
↓
ZCT → Io検出
ZPD → Vo検出(方向性形)
↓
SOGが地絡条件を判定
↓
GR動作
↓
Va-Vcへトリップ出力
↓
TC励磁
↓
PAS開放

メーカー公式 KLT-PA/LTR系の取説No.01314b・本文32頁では、Va(+)-Vc(-)間のトリップ出力の目安を約DC140Vとしています。出力は約0.5秒と短く、計器によっては値を捉えられません。方向性形の電圧確認には、同頁注2の負担抵抗条件(2kΩ・10W以上)もあるため、無負荷のテスター表示だけで良否を判定しません。接続・切離しは取説の該当回路と責任者の手順で確認します。

7. 短絡事故では何が違う?

短絡電流がOCRのロック値を超えると、OCRが動作して接点を切り替えます。

短絡・大過電流
↓
OCR動作
↓
Va-TC-Vc側を開く
+
Vb-Vc側を成立
↓
TCを一時的に使えなくする
+
SOGへ「過電流発生」を伝える

実機確認 実機確認でも「OCRが動作したらトリップコイルに電流が流れないようにする」と、実際の接点と配線を追って確認しています。

短絡電流そのものがTCへ流れるのではない。TCはSOGのトリップ出力で励磁される。過電流ロックは「短絡電流が主回路に流れている間にSOGがTCを動かさない」ための仕組み。

8. 上位CBが切れた後、なぜPASが開く?

メーカー公式 過電流事故では、電源側遮断器が動作して高圧電路が停電し、SOG制御装置の制御電源がなくなると開閉器が自動開放します。

短絡
↓
OCR動作・TCロック
↓
Vb-Vcで過電流を検出
↓
SOGがSO条件を保持
↓
上位CB遮断
↓
短絡電流消滅
↓
P1-P2制御電源消失
↓
SOトリップ
↓
PAS開放

なお、SOG内部の蓄勢回路で「どの部品に何Vを貯めているか」までは、今回確認したメーカー公開資料だけでは断定しません。

9. 地絡+短絡が同時に起きたら?

メーカー公式 地絡と過電流が同時に発生した場合は、SO動作が優先されます。

地絡条件成立 + OCRロック値以上
↓
過電流ロックを優先
↓
短絡中はPASを開かない
↓
上位CB遮断後
↓
SOでPAS開放

10. 50A×18ターン=「900A相当」とは?

実機確認 確認では、OCRを通る試験導体を18ターンさせ、NF試験器から50Aを流してOCRが動作することを確認しました。

I × N = 50 A × 18 turn = 900 A·turn
実際に試験線を流れた電流50A
巻数18ターン
起磁力900AT
1ターン換算約900A相当の磁気作用

したがって「900A流した」という現場表現は意味として通じますが、厳密には50Aを18ターン通して900ATを作ったということです。

300/400A品のロック値は600±100Aなので、この確認は「正確な動作値を測る」よりも、十分高い一次換算値を与えてOCR機構が確実に動くことを目視する実演と見るのが自然です。

11. 短絡点投入ではSOしない

メーカー公式 負荷側が既に短絡している状態でPASを投入した「短絡点投入」では、通常のSO動作を行わないとされています。SOGの電源はP1-P2からのみ供給され、一般のOCRのようにCT二次電流から電源を取る構造ではないためです。

12. VT内蔵形のP1-P2は重大注意

VT内蔵PASへつながるP1-P2制御線に、外部AC100/110Vを加えない。
主回路停電中でも、接続された内蔵VTを二次側から逆励磁し、高圧側に電圧を発生させる危険があります。外部電源と商用電源の同時印加だけの問題ではありません。戸上No.01314b「安全上のご注意」と4節を照合し、制御装置への試験電源と開閉器側制御線を区別します。

今回の実機確認でも、P1-P2まわりの取り扱い不備が疑われるVT焼損事例が紹介されました。ここは「覚えておく知識」ではなく、実際の損傷事故を防ぐための確認項目です。

13. 現場30秒版

項目地絡短絡・大過電流
主検出ZCT・ZPDOCR
OCR接点通常位置過電流側へ切替
Va-TC-Vc成立一時ロック
Vb-Vc通常不成立過電流入力成立
PASGRで直接開放短絡中は開かない
上位CB通常は先行遮断不要先に短絡電流を遮断
最終動作GRSO

🛟 覚え方

地絡:「検出すると、保護装置がPASを自動トリップ」

短絡:「短絡中はロック。上位CBの遮断後、条件成立でPASが自動開放」

この対比が分かれば、SOGのG(Ground)とSO(Storage Overcurrent)が別の事故処理をしていることが一気につながります。

📚 根拠資料

メーカー公式
戸上電機製作所「開閉器およびSOG制御装置」取扱説明書
戸上電機製作所 SOG開閉器 動作説明

実機確認
2026-08-28 実機確認:PAS分解、OCR接点追跡、50A×18ターンの過電流ロック動作確認。

※本記事はメーカー資料と実機確認を整理した学習用メモです。実設備の操作、耐圧試験、制御線取り外し、P1-P2処理、トリップ確認は、設備構成・型式・現場手順・最新メーカー取説・作業責任者の指示を優先してください。
2026.08.29|今日のなんで?・絶縁監視

Igr絶縁監視装置は何を見ている?
Io・Iorとの違い、監視信号、漏電探査、異常表示まで

作業の前に確認すること
活線でのクランプ測定を含みます。現場責任者・社内手順により、対象の接地系統、測定器定格、充電部との離隔、保護具、安全にクランプできる位置を先に確認します。B種接地線やCT回路をこの説明だけで開放・短絡しません。周波数・電圧・表示条件の実機記録は型式と取説が未確認の部分を含みます。

Igrは「漏れ電流をクランプで測るだけ」の方式ではありません。商用50/60Hzとは違う小さな監視信号をわざと重畳し、その周波数成分から絶縁抵抗に由来する成分を取り出して監視する方式です。今回の確認では、その原理だけでなく、漏電探査の順番や「異常ランプ=本体故障とは限らない」という実務上の切り分けまで確認しました。

原理換算漏電探査表示異常切分け

🟢 公開技術資料で確認🔵 対象機で確認🟡 機種依存は区別

1. Io・Ior・Igrは何が違う?

方式ざっくり何を見る?ポイント
Io大地へ流れる漏れ電流全体絶縁抵抗分だけでなく、対地静電容量による容量性電流も含む
IorIoから容量性成分を演算で除いた抵抗性成分商用周波数の電圧・位相関係を利用
Igr別周波数の監視信号を重畳し、その信号に対する抵抗分を抽出「目印付きの電気」で絶縁抵抗成分を追う

技術資料 関東電気保安協会・総合技術センターの2023年解説でも、Io・Ior・Igrを区別し、Igrでは監視周波数成分を抽出した上でベクトル演算により抵抗分を分離し、商用周波数の対地電圧に換算して監視する考え方が示されています。

2. Ioだけでは、なぜ絶縁不良と言い切れない?

電路 ──┬── 絶縁抵抗 R ─→ 抵抗性漏れ電流 Ir └── 対地静電容量 C ─→ 容量性漏れ電流 Ic

長いケーブル、ノイズフィルタ、インバータ、OA機器などが増えると、絶縁が壊れていなくても対地静電容量による電流が増えます。Ioはそれらも一緒に見ます。

Ioが大きい = 必ず絶縁抵抗が悪い、ではない。

3. Igrは「別の周波数」を目印にする

絶縁監視電圧発生器
↓
商用50/60Hzとは異なる低周波信号
↓
重畳・注入トランス
↓
B種接地系統
↓
電路
↓
ZCT / 探査CTで監視周波数成分を検出

測定側ではいろいろな周波数が混じった電流から監視周波数を抽出し、そこに含まれる容量分と抵抗分を分離します。

ZCT出力 ↓ 監視周波数だけ抽出 ↓ 容量分 Igc と 抵抗分 Igr を分離 ↓ 絶縁抵抗の状態を監視

4. 「20.3Hz・0.1V」はIgr全部の共通仕様ではない

対象機 今回の実技確認では、0.1V・20.3Hzを注入トランスからB種接地系統へ印加して監視するものとして説明されました。また旧設備では12.5Hzを使う例があり、探査器側で切替できるという説明もありました。

他メーカー公式比較 一方、ミドリ安全の現行IGRS-500では20Hz時0.5V、12.5Hz時0.3Vを重畳する仕様です。

したがって「Igr=20.3Hz・0.1V」と一般化しない。
監視周波数・重畳電圧・警報整定・表示ロジックは、メーカーと機種ごとに確認します。

5. 0.1Vで測って、なぜ100Vや200Vの漏れが分かる?

絶縁抵抗をRとすると、抵抗分電流はオームの法則で

I = V / R

となります。Rが同じなら、抵抗分電流は電圧に比例します。そこで監視信号で得た抵抗分を、実際の対地電圧へ換算して考えます。

概念上の換算倍率 K = V(対地) / E(監視)
対地100V・監視0.1V
100 / 0.1 = 1000

→ 1000倍相当

対地200V・監視0.1V
200 / 0.1 = 2000

→ 2000倍相当

監視電圧0.1Vを基準にすると、対地電圧100Vなら1000倍、対地電圧200Vなら2000倍です。100V/200Vレンジを切り替えるのは、測定対象の対地電圧に合わせて換算条件を正しく設定するためです。

「線間200V」ではなく、対地電圧と機器設定を見る。
たとえば単相3線100/200Vは線間200Vでも、非接地線-中性点・大地間は100Vです。単純に「200V回路だから2000倍」と決めないこと。

6. Igr探査器は、まず監視信号を取れているか確認

対象探査器 今回の探査器では、20.3Hzの監視信号を正常に取れると表示がフリッカー・点滅する、と説明されました。

探査器を接続
↓
監視周波数信号を正常取得?
↓ YES
測定開始

監視信号が取れていない状態で数値だけ追っても、Igr探査としての前提が成立していません。

確認した基本順序は、大きい範囲から小さい範囲へ絞ることです。

① 変圧器のB種接地線
「どのバンク?」
↓
② そのバンクの幹線
「どの系統?」
↓
③ 分電盤
「どの分岐?」
↓
④ 末端負荷
「どの機器?」

例えば3バンクあって、B種接地線の測定値が4mA・140mA・5mAなら、最初から100回路を一つずつ当たるのではなく、140mAのバンクから追えばよいという考え方です。

8. 100V/200VレンジとCT方向

実機確認 Igr探査では換算して表示するため、100V系・200V系など対象条件に応じてレンジを正しく合わせるよう指導されました。またクランプCTには指定方向があり、B種接地線や負荷側を測る際に矢印を所定方向へ向けます。

逆向きでも近い値が出る場合はありますが、数字が出ることと正規の測定方法であることは別です。指定方向で統一します。

9. 警報が出ても、いきなり復帰しない

警報発生
↓
まず表示を記録
・どのCH?
・点灯?点滅?
・時刻は?
↓
測定・切り分け
↓
必要に応じて復帰

実機確認 「まず復帰じゃない」と強く説明されました。復帰前の表示には事故履歴が残っており、消してしまうと原因追跡に使える情報を失います。

対象の絶監では、5分以内の警報履歴は点灯、5分以上継続すると点滅という説明でした。ただし点滅=今この瞬間も必ず漏電中ではありません。過去に10分継続してその後消えた場合でも履歴として残る可能性があるため、最終判断は実測します。

10. 「異常ランプ=本体故障」ではない

実機確認でかなり価値があった部分です。

原因候補なぜ異常になる?
大電流地絡・監視範囲外小さな監視信号を正常に識別できなくなる可能性
CTオープン・断線・外れ監視入力回路が正常に成立しない
未使用CHの短絡処理不足機種指定の未使用入力処理になっていない
注入トランスのずれ監視信号を正常に重畳できない
注入トランスの錆・接触不良注入信号が弱い、または不安定になる
コネクタ・配線不良信号の「作る→入れる→拾う」のどこかが途切れる
本体故障上記を確認した後の原因候補

実機確認 大電流地絡、CTオープン、未使用CTの短絡線不足、注入トランスのずれ・錆などを異常原因として確認しました。

他メーカー公式比較 ミドリ安全の旧IGRS-410でも、商用周波数のB種接地線電流が大き過ぎる場合には出力回路を遮断し、重畳異常として扱う機能が公開されています。つまり「異常表示が出たから本体が壊れた」とは限りません。

11. 異常表示の現場切り分け

IGR異常表示
↓
① 本当に大電流地絡していない?
↓
② CT・ZCT・配線・コネクタは正常?
↓
③ 未使用CHの処理は仕様どおり?
↓
④ 監視周波数信号は出ている?
↓
⑤ 注入トランスは正常?
・ずれ
・錆
・接触不良
↓
⑥ ここまで正常
↓
本体故障を疑う

🛟 覚え方

Igrの原理:「目印付きの小さな電気を流して、絶縁抵抗から漏れた分を追う」

漏電探査:「いきなり枝を探すな。まず幹=変圧器バンクを特定する」

異常表示:「壊れた?ではなく、監視信号を作れて・入れられて・拾えているか?」

12. 現場30秒版

絶監警報
↓
表示・CH・時刻を記録
↓
いきなり復帰しない
↓
Igr探査なら監視信号確認
↓
B種接地線でバンク特定
↓
幹線 → 分電盤 → 分岐 → 負荷
活線探査は安全条件が最優先。
単線結線図・接地系統・充電部との離隔・保護具・安全にクランプできる位置・現場責任者の指示・社内手順を確認し、無理に盤奥へ手を入れない。

📚 根拠資料

原理
鈴木正美「低圧電路の絶縁状態監視システム」電気設備学会誌 43巻4号(2023)

メーカー仕様比較
ミドリ安全 IGRS-500 絶縁監視電圧発生器
ミドリ安全 Igr探査器

実機確認
2026-08-28 実機確認:0.1V・20.3Hz系のIgr探査、100/200Vレンジ、CT方向、警報表示、異常原因の切り分け。

※0.1V・20.3Hz、警報値、点灯/点滅条件などは対象システムの説明です。Igr方式一般の共通仕様ではありません。実設備では対象機種の取扱説明書・整定値・接地方式・対地電圧を確認してください。
2026.08.22|竣工検査・工事立会

PAS交換工事と耐圧試験。
「どこまで耐圧するか」を結線から考える。

作業の前に確認すること
これは当日の経験記録です。ASを切るだけでは交換作業を開始できません。電力会社・現場責任者との操作範囲の調整、操作票、全電源からの分離、検電・放電、作業用短絡接地、再送電・誤投入防止、作業区画を先に確認します。耐圧へ移る際の接地処理、対象機器の制御線処理、試験終了後の放電・接地・復旧も別途定めます。10,350Vは当時の記録で、全機器へ一律に適用する値ではありません。

この日は竣工検査で、PAS交換工事の立会いと、PAS+高圧ケーブルの耐圧試験を行いました。高圧ケーブルは38mm²・約15m。耐圧試験には一体型の耐圧試験器を使用しました。

🔧 PAS交換後、電源側をまだつながない

PASの交換工事が終わったあと、工事の方がPASの電源側ケーブルを接続しようとしていたところ、作業責任者の方が、

「これから耐圧試験をするので、まだ接続しないでください」

と声を掛けていました。

今回の耐圧試験対象は、PASと、PAS負荷側からキュービクルまでの高圧ケーブルです。

PAS
↓
高圧ケーブル 38mm²・約15m
↓
キュービクル

この範囲に10,350Vを印加して耐圧試験を行います。

⚡ 電源側までつなぐと、試験範囲が上流へ広がる

PASの電源側まで先に接続してしまうと、PASの状態や試験結線によっては、試験電圧がPASより上流側へも及ぶ可能性があります。

今回の設備では上流にASがあり、ASは「切」の状態でした。

上流電源
↓
AS【切】
↓
AS二次側ケーブル
↓
PAS
↓
高圧ケーブル
↓
キュービクル

ASが「切」であれば、ASより上流の電源からは切り離されています。

しかし、AS二次側からPASまでの導体そのものがなくなるわけではありません。

そのためPAS電源側まで接続した状態で耐圧試験をすると、

耐圧試験器
↓
高圧ケーブル
↓
PAS
↓
PAS電源側ケーブル
↓
AS二次側

というように、本来今回の試験対象ではないAS二次側まで耐圧範囲が広がる可能性があります。

⚠️ 対象外の機器に不用意に試験電圧を掛けない

ASなどの上流機器は、今回の耐圧試験対象として準備しているわけではありません。機器の形式や定格によっては10,350Vを印加してよいとは限らないため、耐圧試験の範囲はあらかじめ明確にしておく必要があります。

🤔 PASがあるのに、なぜASも切るのか

今回もう一つ整理できたのが、PASとASの役割の違いです。

PASを「切」にすれば、PASより負荷側の設備は切り離せます。

ただし、PASそのものを交換する場合、PASを切っただけではPASの電源側にはまだ上流から高圧が来ている可能性があります。

上流電源
↓
PAS電源側 ← ここはまだ充電
× PAS【切】
↓
負荷側

そこで、さらに上流側のASを「切」にすることで、PASの電源側まで上流電源から切り離すことができます。

上流電源
↓
AS【切】
×
↓
PAS ← 電源側まで停電

つまり今回の流れでは、

ASを切る
→ PASを上流電源から切り離す。交換開始には検電・放電・作業用短絡接地・再送電防止等の確認が別途必要。
PAS電源側をまだ接続しない
→ 耐圧試験の範囲をPAS+負荷側高圧ケーブルに限定する。

この二つは似ているようで、目的が別です。

🧪 追記(2026.10.07):VT内蔵PASは3相一括で
PASにVTが内蔵されているときは、1相ずつ・2相ずつではなく、U・V・Wを三線短絡して3相一括で試験します。内蔵VTは相と相の間(主要メーカーの取扱説明書では負荷側のU相−V相の間)につながっているので、両端を同じ電圧にしないとVTの巻線に電流が通り、過励磁・焼損のおそれがあります。
EVT(接地形計器用変圧器)は巻線が相と大地の間につながっているので、3相一括でも各巻線に試験電圧がかかります(定格 約3,810Vの約2.7倍)。
→ くわしくは10/7の日誌:IP-1110で絶縁耐力試験
→ 耐圧試験シミュレーターを作った話(10/7の日誌)
→ 図とシミュレーターで確かめる:VT内蔵PAS 耐圧試験シミュレーター

🛟 今日のうきわメモ

今回改めて確認できたのは、耐圧試験では「何V掛けるか」だけでなく、「どこからどこまで掛けるのか」を結線の段階で明確にすることが大事ということ。

責任者・電力会社と操作票を照合
↓
AS開放を含む全電源分離・誤投入防止
↓
検電・放電・作業用短絡接地等の安全措置確認
↓
PAS交換
↓
PAS電源側はまだ接続しない
↓
PAS+負荷側高圧ケーブルを耐圧
↓
耐圧試験終了
↓
試験電源遮断・放電・接地・残留電荷確認
↓
責任者と操作票に従いPAS電源側を接続・復旧

工事立会いの中で、作業責任者がPAS電源側の接続を止めた場面を見て、「耐圧試験は、試験器をつなぐ前にまず試験範囲を作る」ということを、実際の作業の流れとして改めて確認できました。

※ AS・PASの配置、開閉状態、耐圧試験範囲、各機器の耐電圧性能は設備構成や機種によって異なります。実際の作業では、単線結線図、機器銘板・仕様、メーカー資料、社内手順、現場責任者の指示を確認します。本記事は現場経験を残す日誌であり、操作手順書ではありません。
2026.08.21|竣工検査

初めてPASの上まで昇った。
セブンイレブン竣工検査の日。

作業の前に確認すること
これは当日の経験記録で、下記の順番は必要な安全措置を網羅した操作票ではありません。昇柱・高圧端子への接続前に、責任者の指示、全電源からの分離、検電・放電・作業用短絡接地、誤投入防止、墜落防止・救助体制を確認します。耐圧試験の一括用クリップと作業用短絡接地器具は用途が異なり、相互に代用しません。

この日はセブンイレブンの竣工検査。接地抵抗測定から、PASまわりの高所作業、耐圧試験、リレー試験、SOG試験、最後の操作禁止施錠まで、一連の流れを経験しました。

🗺️ この日の作業順序

接地抵抗測定
↓
短絡クリップの導通確認
↓
PAS負荷側へ短絡クリップ取付
+ PAS銘板撮影
+ PASへの接地ケーブル接続確認
↓
PAS・高圧ケーブル耐圧試験
↓
RPR・OVGRリレー試験
↓
短絡クリップ撤去・ビニールテープ復旧
↓
新A端子取付
↓
SOG各タップ試験
↓
PAS操作ひもに「操作禁止」施錠

① まず接地抵抗測定

最初に行ったのは接地抵抗測定でした。竣工検査のスタートとして、接地設備が所定の状態になっているかを確認しました。

② 柱へ昇る前に、短絡クリップの導通確認

次に、PAS負荷側で使う短絡クリップをテスターで導通確認しました。

これはPASへ取り付けたあとではなく、取り付ける前に確認するのがポイントです。見た目が正常でも、リード線の断線や接続部の接触不良があれば、意図した短絡状態になりません。

⚠️ 現場で教わった注意点

短絡クリップの導通が不完全な状態で耐圧試験をすると、三相を意図した状態にできず、VTなどにかかる電圧のバランスが崩れて損傷につながるおそれがあるため、事前の導通確認が重要だと教わりました。

ただし、具体的にどの結線でどの相が開放したときに、VTへどの程度の電圧が加わるのかは、今回の展開接続図・VT方式を確認できていないため未確認です。

③ PASまで昇って、短絡クリップを取り付ける

短絡クリップをポケットに入れて柱へ昇り、PASから垂れ下がっている負荷側ケーブルと、キュービクルへ向かう立上り高圧ケーブルを短絡クリップで接続しました。

PAS
↓ 負荷側
短絡クリップ
↓
立上り高圧ケーブル
↓
キュービクル

この接続をする理由は、PASと高圧ケーブルを一括して耐圧試験するためです。

実は以前にも一度この作業をしようとしたことがありました。そのときは腕金が邪魔になって作業位置へ入れず、うまくできませんでした。

今回は、なんとか無事に取り付けることができました。

④ PASの銘板を撮る

同じタイミングでPASの銘板写真も撮りました。

銘板は柱のかなり上にあり、地上から望遠カメラで撮ってみても解像度が足りず、文字までは読み取れませんでした。

「これ、ほぼ柱のてっぺんまで昇らないと撮れないんじゃないか。
最初は無理だと思った。」

でも近づかなければ確認できないので、PASに近い位置まで昇って撮影しました。無事に銘板を確認できたときはかなり安心しました。

⑤ PASに接地ケーブルがつながっていることを確認

PAS付近まで昇ったとき、PAS本体へ接地ケーブルが接続されていることも目視で確認しました。

接地線は柱を立ち上がり、PAS本体の上側から入っている状態でした。

SOG側で接地が効いていることから考えれば、立上りの接地線もPASまでつながっている可能性は高い。それでも、

「SOGのアースが効いているから、たぶんPASも大丈夫」
で終わらせず、
PAS本体へ実際に接地線が入っていることを確認する。

という確認を行いました。

⑥ PASと高圧ケーブルの耐圧試験

短絡クリップを取り付け、銘板と接地状態を確認したあと、PASと高圧ケーブルを一括して耐圧試験しました。

柱の上で行った短絡クリップの取付は、この試験につながっています。

今日つながったこと:「短絡クリップを付ける」という単独作業ではなく、PAS負荷側と立上りケーブルをつなぐ → PAS+ケーブルを一括耐圧するという一連の準備だった。

⑦ RPR・OVGRのリレー試験

耐圧試験のあと、RPR(逆電力継電器)とOVGR(地絡過電圧継電器)のリレー試験を行いました。

RPRは電力の方向、OVGRは零相電圧を監視する継電器。それぞれ所定の方法で動作を確認しました。

⑧ 短絡クリップを外して、ビニールテープで復旧

試験が終わったあと、耐圧試験のために取り付けていた短絡クリップを撤去しました。

その後、短絡クリップを取り付けるために外した部分へビニールテープを巻き、元の状態へ復旧しました。

仮設したものを外して原状復帰するところまでが試験だと改めて感じました。

⑨ 新A端子の取付

続いて、新A端子の取付を行いました。

⑩ SOGの各タップ試験

その後、SOGの各タップ試験を行いました。

一つの整定だけではなく、各タップについて入力を与え、所定の状態で動作することを確認しました。

⑪ 最後にPAS操作ひもへ「操作禁止」施錠

最後に、PASの操作ひもへ「操作禁止」の施錠を行いました。

試験が終わったら終了ではなく、不用意に操作されないように最後の措置まで行って、この日の作業は完了しました。

😨 一番怖かったのは、やっぱりPASまで昇ること

今回、自分にとって初めてだったのが、PAS負荷側での短絡クリップ取付と銘板確認でした。

PAS周辺は腕金などがあり、作業位置へ移動するための親綱の掛け替えが必要になる場面もありました。高さもあり、正直かなり怖かったです。

以前一度うまくできなかった短絡クリップの取付も、今回はできた。地上からでは読めなかったPASの銘板も、自分で近くまで昇って撮ることができた。

怖さはありましたが、無事に一つずつ終えられたのは大きな経験になりました。

🛟 今日のうきわメモ

① 接地抵抗測定から始める。

② 短絡クリップはPASへ持っていく前にテスターで導通確認する。

③ PAS負荷側と立上りケーブルを短絡するのは、PASと高圧ケーブルを一括耐圧するため。

④ SOG側で接地が効いていても、PAS本体へ接地ケーブルが実際に接続されていることを確認する。

⑤ 試験後は短絡クリップを外し、ビニールテープまで含めて原状復帰する。

⑥ 最後の操作禁止措置まで含めて一連の作業。

今回一番大きかったのは、個々の作業を「言われたからやる」のではなく、何のための作業で、その次の何につながっているのかを少しずつ理解できたことでした。

※ この記事は2026年8月21日の現場経験を残す日誌です。実際の高所作業、停復電、耐圧試験、保護継電器試験、PAS操作では、現場責任者、社内手順書・操作票、系統状態、無電圧確認、墜落制止用器具、親綱の掛け替え方法、誤投入・誤操作防止措置などを確認して実施します。親綱の掛け替えでは墜落防止措置が途切れないことが前提です。本記事は実作業の操作手順書ではありません。
過去の記録|入社約1か月

RPR試験、分からないまま現場に立った日のこと。

作業の前に確認すること
試験入力の意味を振り返る記録です。実際の試験前には、継電器・専用CT・試験器の型式、一次/二次入力、極性・位相、補助電源、トリップ範囲、復元内容を責任者・展開接続図・取説と照合します。不明な端子へ推測で入力しません。

この日はRPR(逆電力継電器)の試験。試験器にGCR-MiniVSを使うことは分かっていました。でも、正直それだけでした。

取扱説明書は印刷して持っていましたが、内容を十分に理解していたわけではありません。

「試験器の名前は知っている。
でも、実際にどう結線して、どう試験を進めればいいのかは分からない」

😵 作業する二人とも、経験が浅かった

この日の作業は主に二人で進める予定でした。ところが、二人ともRPR試験の現場経験が浅い。もちろん段取りよく進みません。

実際の盤を目の前にすると、次々に分からないことが出てきました。

電圧の試験配線はここで合っている?
電流はどこから入れる?
トリップ回路はどこ?
制御電源はどこから来ている?

説明書を持っていても、実際の盤と照らし合わせて判断する知識がありませんでした。

📞 先輩に電話して、写真を送りながら聞く

私はどうしていいか分からず、先輩に電話しました。盤の写真を送りながら、

「今こういう状況なんですけど、電圧配線はここで合っていますか?」
「電流はどこですか?」
「トリップはここで取ればいいですか?」
「制御電源って、どこから入っているんですか?」

と、一つずつ聞いていきました。先輩に教えてもらいながら確認していくしかありませんでした。

今振り返ると、「自分は現場にいるけれど、試験を進めるための判断材料をほとんど持っていない」という状態でした。

正直、ほとんど役に立てていなかったと思います。

⏱ 時間がなくなるほど、現場も焦っていく

確認に時間がかかり、予定していたようには作業が進みません。時間はどんどん過ぎ、作業責任者の方もだんだん焦りが強くなっているのが分かりました。

実は作業前から、その方には「本当にこのメンバーで試験できるの?」という意味合いのことを聞かれていました。

そのとき私は、「たぶん大丈夫だと思います」と答えました。でも実際には、大丈夫と言えるだけの根拠を持っていませんでした。

⚠️ 「たぶん大丈夫」で進めてしまった

ここは、今振り返るとかなり反省しているところです。

分からないなら、「私はRPR試験の経験がほとんどないので、この体制だけでできるか分かりません」と正直に伝えるべきでした。

でも当時は入社したばかりで、「できません」と言うことにも抵抗があったのだと思います。だから、「たぶん大丈夫」と答えてしまった。

ところが現場へ行くと分からないことだらけ。電話で先輩に聞きながら進める。時間はなくなる。現場は焦る。

そして最終的には、実際にトラブルも起きてしまいました。

💭 今振り返ると、かなり危ない状態だった

このころの私は、GCR-MiniVSを使うことは知っていても、

なぜこの電圧を入れるのか。
なぜここから電流を入れるのか。
どこでトリップを取るのか。
制御電源がどこから来ているのか。

そういったことを、きちんと理解できていませんでした。

今考えると、「説明書を持っている」ことと、「その試験をできる」ことは全然違う。

🛟 このときのうきわメモ

この経験で一番覚えているのは、「分からない状態なのに、大丈夫だと思いますと言わない」ということです。

経験がないなら、経験がない。分からないなら、分からない。

そのうえで、誰に確認するのか。事前に何を調べるのか。そのメンバーだけで本当に作業できるのか。を考える。

「たぶんできる」で現場に入ると、分からないことが一つ出るたびに時間を失い、焦りが増え、さらに判断を誤りやすくなります。

当時の私にはかなり苦い経験でしたが、今になって考えると、技術そのもの以上に大事なことを教えられた現場だったと思います。

※ この記事は過去の現場経験を振り返った記録です。実際のRPR試験では、現場責任者、社内手順書、展開接続図、継電器・試験器の取扱説明書、制御電源、トリップ回路、系統状態などを事前に確認し、経験・体制が不足する場合は無理に進めないことが重要です。
過去の記録|入社して間もないころ

OVRとOVGRを間違えて、V₀端子に10Vを入れてしまった話。

作業の前に確認すること
誤った入力を振り返る記事です。記録された電圧を再現する試験手順ではありません。実機で入力を変更する前に、OVRとOVGRの区別、入力先機器・端子・定格、試験回路と切離し状態を取説・図面・責任者と確認します。

保護継電器の試験を覚え始めたころ、OVGR(地絡過電圧継電器)をOVR(過電圧継電器)だと思い込んでしまったことがありました。

当時は、OCR、DGR、OVGR、OVR……と似た略称を必死に覚えていた時期です。

先輩からは、初心者の私にも覚えやすいように、「地絡系の電圧試験ならT-Eを意識すると分かりやすい」というような覚え方を教えてもらっていました。

😨 OVRだと思っていたら、OVGRだった

OVRとOVGR。名前は「G」が一文字違うだけです。でも、見ている電圧は同じではありません。

OVR(59) → 系統電圧そのものの過電圧を見る
OVGR(64) → 地絡時に現れる零相電圧 V₀ を見る

🔌 今回はZPDがなかった

このときは試験室での試験で、実設備のようにZPDがつながっていませんでした。

そのため、普段のようにT-Eから試験する構成ではなく、継電器背面のV₀入力端子へ直接、試験電圧を入れる必要がありました。

ところが私はOVGRをOVRだと思い込んだまま、V₀入力端子へ約10Vを入力してしまいました。

⚠️ ここでの失敗

「過電圧継電器だから、このくらいの電圧だろう」と名前の印象で判断してしまったこと。

幸い大事にはなりませんでしたが、入力先の定格を確認せずに試験電圧を入れるのは危険です。

💡 T-Eへ入れる電圧と、V₀端子へ入る電圧は同じではない

ZPDやZVTを使うタイプのOVGRでは、概念的には次のような流れになります。

試験器
↓
T-E
↓
ZPD / ZVT
↓
小さなV₀信号
↓
OVGR

つまり、T-Eへ入力する試験電圧と、ZPDやZVTで変換されたあと継電器背面のV₀端子へ入る電圧は別物です。

ZPD/ZVT方式のOVGRには、完全地絡相当でもリレー入力側が数V程度の機種があります。一方、EVT方式などでは110V/190V級の入力を扱う機種もあります。

だから、「OVGRなら何V」では決められない。 機器形式、入力方式、V₀定格、整定値を確認してから試験する必要があります。

🛟 このときのうきわメモ

OVRとOVGRは名前が似ていても、見ている電圧が違う。

試験前に、何の継電器か → 何を検出しているか → どの端子へ入力するか → その端子の定格はいくつか → ZPD/ZVT/EVTのどの方式かを確認する。

入社してすぐのころに一度間違えたからこそ、「名前の雰囲気で試験しない」ということは今でも忘れないようにしています。

※ ZPD/ZVT方式のOVGRでもV₀入力定格はメーカー・形式によって異なります。実際の試験では、機器形式・銘板・取扱説明書・展開接続図・社内手順を確認してください。本記事は過去の経験を振り返った記録であり、実作業の操作手順書ではありません。
2026.08.11

初めての系統確認。
トランシーバー片手に、けっこうテンパった。

作業の前に確認すること
投入を伴う系統確認の前に、責任者・操作票・単線結線図で操作対象を特定し、作業者退避、工具・接地の状態、連絡の復唱、誤投入防止、負荷と別電源の状態を確認します。電圧測定器の使用カテゴリ・定格と測定位置を照合し、読値だけで無電圧や安全な作業範囲を断定しません。

今日は、工場内のブレーカーの系統確認を行いました。

この工場では以前、大規模なブレーカー工事が行われており、工場内の各ブレーカーが主変電所のどの系統につながっているのか分からない箇所がありました。

そこで今回は、実際に電圧を測定しながら、一つずつ系統を確認していくことになりました。

今日やったこと

作業員は工場内の各所に分かれて待機。主変電所の第1キュービクルからブレーカーを順番に投入し、その都度、各現場で電圧を測定しました。

使用したテスタ: HIOKI 3246-60 ペンシルハイテスタ

連絡はすべてトランシーバー。

「○○、投入します」
↓
各現場で電圧を測定
↓
「こちら電圧あり」「こちらは電圧なし」
↓
結果を共有して系統を特定

これを繰り返して、どのブレーカーがどの系統につながっているのかを一つずつ確認していきました。

😵 初めてだったので、けっこうテンパった。

実際にやってみると、工場のあちこちからトランシーバーでやり取りが入ってくるので、思っていたより忙しい。

「今どのブレーカーを確認しているのか」
「自分のところに電圧が来たのか」
「それをどのタイミングで伝えるのか」

周りのやり取りを聞きながら自分の測定もしなければならず、最初はかなりテンパりました。

特に感じたのは、こういう作業では測定そのものだけでなく、離れた場所にいる人たちとの情報共有がかなり重要だということ。

一つ確認を間違えると、系統そのものを間違えて記録する可能性があります。

🛟 今日のうきわメモ

主変電所でブレーカーを投入 → 各現場で電圧測定 → トランシーバーで結果を共有 → 系統を特定。

初めてだったのでかなりテンパりましたが、実際の現場でどうやって系統を確認していくのかを経験できた一日でした。

次にやるときは、トランシーバーのやり取りも含めて、もう少し落ち着いて動けそうです。

※ 現場での停復電・投入操作・電圧確認は、現場責任者、操作票、社内手順、系統状態および安全措置を確認したうえで実施します。本記事は作業手順書ではなく、経験を残す日誌です。
過去の記録|日付不明

初めてMEDIMULを触った日のこと。

作業の前に確認すること
当時の機器型式と展開接続図がそろっていない記録です。T-Eの名称だけでは入力側・必要な切離し・試験電圧は確定できません。実試験の前に責任者と図面・取説・操作票・制御用直流を含む電源状態・誤投入防止を確認し、不明点が残る場合は入力を開始せず確認します。

少し前の現場で、明電舎のマルチデジタルリレー MEDIMUL(メディマル)シリーズを初めて触りました。

作業は二人組。一緒だったのは現場経験の長いベテランでしたが、マルチデジタルリレーについては詳しくない。そして私も、MEDIMULを触るのは初めてでした。

事前に取扱説明書には目を通していました。でも、実際に盤の前に立ってみると、

「説明書は見たけど、結局どう触ればいいんだ?」

という状態。しかもMEDIMULに詳しい人が横で教えてくれるわけでもなく、時間にもそれほど余裕がありませんでした。結局、二人で取扱説明書と実機を見比べながら、手探りで進めることになりました。

😵 最初につまずいたのがタッチパネル

MEDIMULは、タッチパネルから各種表示や継電器の状態を確認できます。画面を見れば「たぶんこれはこういう意味だろうな」と直感的に分かる部分もありました。

でも、初めて触る機器なので自信がない。

「これ押していいのか?」
「この画面で合ってるのか?」
「今見ている値は試験に必要なものなのか?」

一つ画面を進めるだけでも迷いました。普段使い慣れている機器なら何でもない操作でも、初めての機器では思った以上に頭を使います。

しかも今回は、二人ともMEDIMULについては手探り。「ベテランと一緒だから全部分かる」わけではない。これも実際の現場で初めて実感したことでした。

🔌 DGR試験でさらに迷った

特に印象に残っているのが、DGR(方向性地絡継電器)の試験です。

今回の設備では、DGRへ零相電圧を入力するための T-E端子が、ZVTを切り離す部分のすぐ下あたりにありました。これが初見ではかなり分かりづらかった。

さらに、「T-Eを見つけたから、そこへ試験器をつなげばいい」という話でもありません。先に、ZVT側がきちんと切り離されているかを確認する必要がありました。

ここを忘れると、試験電圧をZVT側へ入れてしまう可能性があります。当時は、「ZVTを開放してからT-Eへ入力する」ということを忘れないようにするだけでも必死でした。

🤔 いまだに、ここは完全には分かっていない

DGR試験で特に印象に残っているのが、ZVT・EVT側を切り離してからT-Eへ試験電圧を入力したことです。

当時の私は、

「ここを外してからT-Eに入れる」

と、とにかく作業を覚えるので精いっぱいでした。

理由については、「つないだまま試験電圧を入れると、何かまずいことがある」くらいの理解しかありませんでした。

あとになって、

「電磁形のEVTなら、低圧側から電圧を入れると逆励磁して高圧側に電圧が出る可能性があるのでは?」

と考えるようになりました。

ところが、ここから話がややこしくなりました。

🧰 大型のEVTを外したあとにも、小さな箱があった

私の記憶では、大型のEVTを切り離したあと、すぐMEDIMULへ試験電圧を入れたわけではありません。

その先には、普段からよく見る小型の零相電圧関係の機器があり、そこにあるT-Eから試験電圧を入力しました。

そこで新しい疑問が出ました。

「大型EVTを切り離したあと、このT-Eへ入れた電圧はいったいどこで、どうやって継電器用のV₀に変わっているんだ?」

さらに、

「小型の変換器を経由しているなら、大型EVTをつないだままT-Eへ入れてもいいんじゃないの?」

とも思いました。

調べてみると、零相電圧の取り出し方には、電磁形EVTを使うもの、コンデンサ式のZVT・ZPDを使うもの、その途中に零相電圧変換器を使うもの、メーカーが専用のT-E試験回路を持たせているものなど、いくつかの構成があることまでは分かりました。

でも、当時MEDIMULと組み合わされていた小型機器の型式と展開接続図を、私はまだ確認できていません。

だから、

「大型EVTを外していた理由は、逆励磁防止だった」

と今の段階で言い切ることもできません。

逆に、

「外さなくても問題なかった」

とも言えません。

💭 分かったのは、「T-Eだからこう」と覚えてはいけないこと

最初の私は、

「DGRならT-E」
「大きいZVTなら外す」

みたいに、操作だけを覚えようとしていました。

でも調べれば調べるほど、同じT-Eという名前でも、その先の回路が同じとは限らないことが分かってきました。

大事なのは、

T-Eに入れた電圧が、その先のどこへ行くのか。

大型EVTにつながっているのか。

小型の変換器へ入るのか。

継電器へどういう電圧として届くのか。

そこを展開接続図と機器の型式から追わないと、本当の理由までは分からない。

🛟 この疑問は、まだ「未解決」にしておく

2026.10.04 追記:途中まで分かった
電磁形EVTなら、つないだまま入れると巻数比でステップアップする。コンデンサ形ZPDならステップアップはしない。続きは 「T-Eから零相電圧を入れると、高圧側へステップアップする?」 に整理しました。

この部分については、今のところ無理に答えを出さないことにしました。

当時の現場では、

大型EVT側を切り離す
↓
小型機器のT-Eへ試験電圧を入れる
↓
MEDIMULのDGR試験をする

という流れだった。これは覚えています。

でも、

なぜその構成だったのか。
T-Eの先で何が起きていたのか。
なぜ大型EVTを切り離す必要があったのか。

そこまでは、まだ自分の中で完全には理解できていません。

だから、ここは「分かったこと」にしてしまわず、次に同じ設備や同じ機器を見たときに、型式と展開接続図を確認したい疑問として残しておきます。

昔の私は「何をすればいいか」が分からなかった。

今は少し進んで、「なぜそうするのかが分からない」ところまで来た。

それでも、前よりは一歩進んでいると思います。

⚠️ さらに直流電源が生きていた

もう一つ神経を使ったのが、直流電源盤でした。

高圧設備が停電していても、制御用の直流電源が生きているところがある。つまり、「停電中だから盤の中は全部無電圧」ではありません。

試験コードやクリップを扱うときにも、誤って生きている端子を短絡させないよう注意が必要でした。

初めて触るMEDIMUL。分からないタッチパネル。分かりづらいT-E端子。ZVTの切り離し。さらに生きている直流電源。当時はこれらを同時に考えなければならず、正直かなり余裕がありませんでした。

🛟 このときのうきわメモ

この現場で一番強く感じたのは、取扱説明書を読んだことと、実際の現場で機器を扱えることは全然違うということでした。

説明書を読んでいると「現物を見れば何とかなるだろう」と思ってしまいます。でも実際には、

どの画面を見る?
どこが試験端子?
その端子の先には何がつながっている?
切り離しは必要?
まだ電圧が生きている場所はない?

と、一気に確認することが増えます。

しかも今回のように、詳しい人がいない。時間もない。進めなければ、と焦る。という状況もありました。ただし、入力先や定格が分からないまま試験を進める判断にはつなげず、責任者と資料を確認します。

だから、今回迷ったことを残しておきたい。次にMEDIMULを触ったとき、「前回、どこで困ったんだっけ?」となったときに、もう一度ゼロから悩まなくていいように。

こういう経験を残していくことも、ぷかぷかうきわメモを作っている理由の一つです。

※ これは過去の現場経験を記憶から整理した記事です。当時の大型EVT/ZVT、小型変換器、T-E試験端子の形式・内部結線・展開接続図は確認できていないため、この部分は未解決の疑問として残しています。実際の保護継電器試験・停復電・盤内作業では、現場責任者、社内手順書、操作票、展開接続図、機器取扱説明書、系統状態、無電圧確認および誤操作防止措置を確認してください。本記事は実作業の操作手順書ではありません。
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