🛟 うきわメモ← 絶縁抵抗の原理
MOTOR CIRCUIT × INSULATION RESISTANCE

マグネットの二次側、
何本当てればいい?

直入れなら1本、スターデルタなら3本……と覚える前に。停止して接触器が全部開いたとき、直流でつながっている「島」がいくつあるかを数えれば、どの始動方式でも当てる点が決まります。シミュレーターで、端子をタップして確かめられます。

安全上の前提:絶縁抵抗測定は、無電圧・切離し・誤投入防止・残留電荷の放電確認が前提です。このページは回路のつながりから測定範囲を考える教材で、試験結線図や操作手順ではありません。試験電圧・測定箇所・判定は、設備の図面、メーカーの取扱説明書、保安規程・社内手順、責任者の作業計画を優先してください。
01 考え方

数えるのは、マグネットの数ではなく「島」。

対地の絶縁抵抗なら、島1つにつき1点。
LINE側を当てた点と、直流でつながっている範囲だけに試験電圧が届きます。

開いた接点は島を分ける接触器・ブレーカー・スイッチが開いていれば、その両側は別の島。
巻線や抵抗は島をつなぐモーター巻線、サーマルのヒーター、リアクトル、単巻変圧器、始動抵抗は、直流では数Ω程度の導体。MΩを測るメガーから見れば導線と同じです。
ケーブルだけの区間は、相ごとに別の島ブレーカー二次〜MC一次のように負荷がつながっていない区間は、3本がばらばら。「1本でいい」のは、モーターで3相がつながった先だけです。
電子機器は数えずに切り離すインバーター、ソフトスタータ、サーミスタ等の検出回路は島として扱わず、取説の指定で区分します。
交流をかけて XL=2πfL で測ることはできない?

邪魔になるのはXLよりも静電容量です。巻線のXLは50Hzでもせいぜい数Ω〜数十Ω程度で、MΩの世界から見れば巻線はほぼ素通りです。困るのは巻線と鉄心・外箱の間の静電容量で、交流では Xc=1/(2πfC) を通る電流が流れ続けます。計器はそれを「絶縁を漏れた電流」と区別できず、絶縁抵抗が実際より低く見えてしまいます。

直流なら、容量を充電する電流は時間とともに減り、残るのは主に絶縁を漏れる電流です。絶縁抵抗計が直流を使うのはこのためです。なお、通電中に交流の漏れ電流から抵抗分(Ior)だけを取り出す方法は、集合形絶縁監視の教材で扱っています。

操作回路が一次側から取られているときは?

MCのコイルや表示灯・リレーの電源を、ブレーカー二次(MC一次)の2相から取っている盤では、操作回路を通って相どうしがつながることがあります。押しボタンや補助接点が開いていればつながりません。表示灯・タイマー・電子式リレーなどに試験電圧がかかることもあるので、操作回路のヒューズ・切り離しの扱いは図面と社内手順で決めます。シミュレーターでは操作回路を省略しています。

02 1本で済むとき

マグネット1個とサーマル。
その先がモーターなら、二次側は1点。

サーマルが付いていれば、負荷は三相モーターの可能性が高い。モーターの中で3相がY結線かΔ結線でつながっていれば、1相に当てるだけで、巻線を通って三相分に試験電圧が届きます。この推定は現場の手がかりとして有効です。

ただしサーマル自身は3相をつないでいません(各相が別々に通るだけ)。つながる理由は、その先の巻線の結線です。だから次の3つがそろって初めて「1点でよい」と言えます。

  1. 負荷が固定結線のモーター:3本口出し、または端子箱の短絡片でY/Δに固定されている。
  2. 途中に開いた接点・断線がない:手元スイッチ、断線、外した配線がない。
  3. 別の負荷が混ざっていない:ヒーター、電子機器、別回路のブレーキなどが同じ二次側にない。

確かめ方:テスターでU–V・V–W・W–Uの導通を見る。
無電圧を確認したあと、3組とも巻線抵抗程度(数Ω前後)で導通していれば、3相は1つの島です。どこかが開放なら、島が割れています。

Y結線で1つの巻線が断線すると、その端子だけが孤立した島になります。Δ結線なら1つの巻線が断線しても、残り2つの巻線で3端子はつながったままです(断線自体は別の不良として扱います)。なお、ここで言う1点はマグネットの二次側から先の話。ブレーカー二次〜マグネット一次の配線は、相ごとに別の島です。

03 メガーを当ててみる

端子をタップして、届く範囲を確かめる。

  1. 始動方式を選ぶ。
  2. 図の白い丸(当てる点)をタップ。LINE側を当てたときに届く範囲が光り、測れた島に✓が付きます。
  3. 接点の開閉、U相巻線の断線、短絡線を切り替えると、島のつながりが変わります。
  4. 練習モードでは島の色が隠れます。全部の島に届く最少の点を探してください。
当てる点をボタンで選ぶ

図は停止中の主回路を、つながりが分かるように単純化した概念図です(操作回路・接地線・EARTH側の帰路は省略)。R・S・TやX・Y・Zの記号だけが付いた端は、同じ記号の線につながっています。色と、線の上の丸い記号(A・B…)で島を区別しています。

04 早見表

方式ごとの島の数。

停止中・全接触器が開いた状態での、島ごとに1点ずつ当てる場合の数です。

始動方式・回路マグネット二次側から先一次側(ブレーカー二次〜接触器一次)見落としやすいところ
直入れ(MC+THR)13(相ごと)一次側を1本で済ませる。途中の断線・手元スイッチ
正逆(MCF・MCR)13MCの数で数えない。負荷が2台なら別
スターデルタ 3コンタクタ3+スター点の渡り線3V・W巻線の測り残し。MCSの渡り線は届かない
スターデルタ 2コンタクタ3+渡り線(ブレーカー二次から)なしMCMがない。ブレーカー開放が先。停止中も巻線は充電
クローズドトランジション Y–Δ図面で確認3抵抗器と接触器が増える。抵抗器の接続先で島が変わる
リアクトル・一次抵抗1(リアクトル込み)3値が低いときはリアクトルとモーターを切り分け
コンドルファ・補償器1(変圧器込み)+渡り線3変圧器巻線を含んだ値。中性点側の渡り線
巻線形(二次抵抗)固定子1+回転子13回転子・スリップリング・抵抗器の測り残し
極数切替(2巻線)巻線の数3切替用接触器の位置。1巻線式(ダランダ形)は図面で
1台のMCで複数台1(全台の並列)3悪い値なら1台ずつ切り分け
インバーター・ソフトスタータ外した入力配線3+出力側13接続したまま印加しない。制御端子のメガー禁止
ブレーキ・ヒーター・温度検出主回路とは別—サーミスタ等は印加不可の場合あり。取説で確認

短絡線で同じ区間の3線をまとめれば、その区間は1回で測れます(作業計画で認められていれば。注意点)。メーカーが測定箇所を指定している場合はその指定を優先します。

05 判定と合成

島ごとの値は、合成して考える。

低圧の電路の絶縁抵抗は、電気設備技術基準(省令)第58条で、開閉器又は過電流遮断器で区切ることのできる電路ごとに、使用電圧の区分に応じた値以上と定められています。ブレーカーで区切った1回路が、1つの単位です。

電路の使用電圧の区分絶縁抵抗値例
300V以下・対地電圧150V以下0.1MΩ以上単相3線式100/200V
300V以下・その他0.2MΩ以上三相3線式200V(対地電圧200V)
300V超0.4MΩ以上400V級

絶縁抵抗の測定が困難な場合は、使用電圧が加わった状態での漏えい電流が1mA以下であること(電気設備技術基準の解釈 第14条)。

1つの回路を島に分けて測っても、運転中はそれらが1つの電路としてつながります。
回路全体の対地絶縁抵抗に相当するのは、島ごとの値の並列合成です。0.5MΩの島が3つなら、どれも0.2MΩを上回っているのに、合成は約0.17MΩ。

計算式と、上限超え(∞)の扱い

合成値 R = 1 ÷(1/R1 + 1/R2 + 1/R3 + …)。並列なので、いちばん低い島より必ず低くなります。上限超えの島は、表示上限の値を入れると安全側(低め)の合成値になります。0MΩの島があれば、合成も0です。

線間(電線相互間)は?

第58条の値は電線相互間にも適用されます。ただしモーターをつないだままでは、線間に当てても巻線の導通を測るだけで、線間の絶縁は評価できません。スターデルタで全接触器が開いた6本口出しなら、U–V間で巻線どうしの絶縁は見られます。線間をどの時点・どの状態で確認するかは、保安規程・点検要領で決めます。

このページの判定の扱い

「合成して考える」は、運転中のつながりからの原理の整理です。判定方法と記録のしかたは、保安規程・社内基準を優先してください。条文の最新版はe-Gov法令検索で確認してください。

06 現場で

迷ったら、この順番で島を確定する。

  1. 図面と銘板で方式を確認する:主回路図の接触器の数と位置、MCΔのつなぎ方、モーターの口出し線(3本か6本か)、端子箱の短絡片、巻線形かどうか、操作回路をどこから取っているか。
  2. 無電圧にして、誤投入を防ぐ:上流のブレーカーを開放し、検電。2コンタクタのY–Δは、マグネットが止まっていても巻線が充電されている場合があります。
  3. テスターで導通を見て、島を数える:二次側はU–V・V–W・W–U(6本口出しならX・Y・Zも)。一次側はモーターがつながっていないので、相ごとに別の島です。
  4. 島ごとにLINE側を1点、または短絡線でまとめて1回:EARTH側はモーター外箱につながる接地端子へ。インバーター等は取説どおり切り離してから。
  5. 記録する:島ごとの値(または一括の値)と合成値、測定時の接点状態、除外・切り離した機器、試験電圧、測定時間。
  6. 放電と復旧:測定後は放電完了を確認。外した線・短絡線を戻し、本数を照合します。
U・V・W(X・Y・Z)をまとめて短絡すれば、1回で済む?

作業計画で認められていれば、導体を短絡線でまとめて1回で対地を測る方法もあります。シミュレーターの「短絡線でまとめる」で、島がまとまる様子を確認できます。ただし、①まとめた導体どうし(相間・巻線間)の絶縁は見ていない、②値は全部の合成値、③短絡線の外し忘れは、投入したときの短絡事故につながります。取り付けた本数と取り外した本数を照合して記録します。

接触器を手で押し込んで、島をつなげて測ってもいい?

このページでは手順にしません。機種によって構造や扱いが違い、押し込んだ接点の状態を測定中ずっと保証できないためです。測定範囲を広げたいときは「島ごとに1点」か、作業計画で決めた一括測定にします。シミュレーターで接点を「閉」にできるのは、つながり方の違いを見るためです。

EARTH側をつないだのに、モーターの外箱が測れていないことがある?

EARTH側を盤の接地端子につないだ場合、モーター外箱はモーターの接地線を通して初めて大地側になります。接地線が外れていると、巻線と外箱の間の絶縁が測定に入らず、高い値が出ることがあります。接地線の接続も一緒に確認します。

進相コンデンサが負荷側にあるときは?

コンデンサが島に入っていると、充電に時間がかかって値が落ち着くのが遅く、測定後の残留電荷も大きくなります。コンデンサ用の接触器の位置と放電を確認し、必要なら切り離して区分します。

07 図で学べるサイト

始動方式そのものを、図で確かめる。

このページの図は「島」を見るために簡略化しています。始動方式の主回路や動作の流れは、次の資料の図が参考になります。

根拠と適用範囲

資料で確認した事項:各始動方式の接触器構成と動作の概要、2電磁接触器式のスターデルタは停止中も巻線に電圧がかかるため推奨しにくいこと、コンドルファは中性点を開いてリアクトル状態を経て全電圧へ移ること(富士電機「電動機の始動方法」)。3接触器方式のMCM・MCS・MCDの名称(三菱電機「選定スケール」)。

法令:低圧電路の絶縁抵抗値(省令第58条)と、測定が困難な場合の漏えい電流(解釈第14条)。条文の最新版はe-Govで確認してください。

回路の原理から整理した事項:「島」の数え方、シミュレーターが計算する方式別の島の数、島ごとの値を合成して考えること。実際の盤では接触器の位置、渡り線、操作回路、追加の回路で島が変わるため、図面と導通確認で確定してください。全方式を一律に「1本/3本」と定めたメーカー資料ではありません。

資料確認:2026年10月9日。関連:絶縁抵抗の原理:マグネットの負荷側/インバーターがあるとき/1E・2E・3Eのモータ保護/リレーシーケンス