集合形絶縁監視
試験の「意味」がわかる教材
配線を暗記する前に、何を模擬して・何を検出して・どの警報が出るのかを理解する。
Io・Ior・Igrの違いから、集合形の構成、ZCT、警報接点、感度試験・動作時間試験の読み方までを、光商工の公式資料を基準に整理しています。
⚠️ 最初に:これは現場操作票ではなく学習教材
活線状態・停復電・試験配線・連動遮断確認は、人身事故や設備停止につながります。 実設備で試験するときは、現場責任者、社内手順書・操作票、単線結線図・展開接続図、系統状態、制御電源、試験対象回路、警報/トリップ連動、誤操作防止措置、復帰確認を優先してください。
LSIG-8Aのメーカー取説では、試験トリップ設定や外部接続によっては試験操作で警報・遮断が起こり得ること、試験後は必ず元の状態へ戻すことが明記されています。本教材は「なぜその試験条件になるのか」を理解するためのものです。
まず3つだけ区別する
「漏電電流を見ている」という点は似ていますが、Io・Ior・Igrは同じ意味ではありません。
Io → Ior をベクトルで見る
簡略化すると、抵抗分Iorと容量分Iocはほぼ直交する成分として考えられます。容量分が大きい設備では、Ioだけを見ると「絶縁抵抗が悪い」のか「対地容量が大きい」のか分けにくくなります。
Io ≈ √(Ior² + Ioc²)89.4 mA「集合形」って何が集合している?
LSIG-8Aの例では、本体1台で最大8回路を監視します。各フィーダのZCTからIoを受け、各回路の対地電圧情報と組み合わせてIorを演算します。
+
電圧情報
→
通常時 → 絶縁劣化 → 警報まで
ZCTが各回路のIoを検出。Iorが整定値未満なら警報待機。
対地絶縁抵抗が下がると抵抗分の漏洩電流Iorが増加。
Ioと対地電圧の関係から容量分Iocを除き、Iorを算出。
Iorが感度整定を超えると、設定された動作時間の判定へ。
LSIG-8Aでは絶縁警報・漏電警報・異常警報を別系統で出力。
表示/接点の復帰方式は設定による。外部連動の状態も確認。
極性誤りは不動作・不要動作の原因。本体異常は自己診断・異常警報で検出。
端子名の注意: LSIG-8A取説に出てくる「a2」「c1,2」「a3」「c3」はメーカーの端子名称です。ここでいう「a2」を、一般論としての「a接点」という意味だけで読まないでください。接点の常態・外部シーケンスは実機端子図・展開接続図で確認します。
機種ごとの違いを先に押さえる
| 機種 | LSIG-8A |
|---|---|
| 方式 | Ior検出方式 |
| 監視回路 | 1~8回路 |
| 入力 | ZCTによるIo+各回路の対地電圧情報 |
| 絶縁監視 | Iorで抵抗分を監視。絶縁監視部には方向判別なし。 |
| 漏電監視 | Ior方式+方向性機能 |
| 試験の考え方 | Ior試験は「ZCTへ電流だけ」では成立しない。電圧要素+電流要素+位相関係が必要。 |
| 機種 | LIG-2A |
|---|---|
| 方式 | Igr / Ior 切替 |
| 集合化 | LB-5A+LIG-2AUで5回路集合形構成が可能 |
| Igr | 別周波数の基準信号を使う方式。接地相の絶縁劣化も検出可能。 |
| Ior | 商用周波のIo+電圧から容量分Iocを演算除去。 |
| 試験 | Igr試験とIor試験では原理も試験器も考え方も異なる。 |
| 機種 | LT-14 |
|---|---|
| 正体 | Igr方式の絶縁状態監視部を試験する専用試験器 |
| できること | Igrの動作電流・動作時間試験、基準信号出力、自動/手動測定など |
| できないこと | Ior機能・漏電監視部の試験には使用しない。 メーカー取説では別途DGR試験器相当が必要。 |
| 対象 | LT-14取説の適用範囲はLIG-1/2シリーズのIgr機能試験。 |
LSIG-8A 公式条件を「計算で読む」
ここは操作手順ではなく、メーカー取説に記載された試験条件・許容差を数値に置き換えて理解する計算ツールです。実設備での配線・切離しは必ず現場手順を優先してください。
なぜDGR試験器が出てくるのか
対地電圧に相当
ZCTへ模擬Io
0°同相を基準
Ior方式では電流の「大きさだけ」でなく、電圧との位相関係から抵抗分を分離します。そのためLSIG-8A・LIG-2AのIor試験では、電圧と電流を同時に扱えて位相を設定できるDGR試験器等が使われます。
公式取説を読むための端子メモ
下記はLSIG-8Aのメーカー取説を理解するための読解メモです。現場配線の指示ではありません。
| 端子・記号 | 現場での意味 |
|---|---|
| Z1 / Z2 | ZCT信号入力。ZCT二次側からの検出信号を受ける。 |
| VL / N / E | 電路の対地電圧を演算に使う入力群。電路方式により接続・設定が変わる。 |
| P1 / P2 | LSIG-8Aの制御電源入力。公式仕様はAC100V。 |
| a2 / c1,2 | 取説上、絶縁警報試験で接点入力を拾う端子名称。 |
| a3 / c3 | 取説上、漏電警報試験で接点入力を拾う端子名称。 |
| kt / lt | ZCTの試験用端子。極性関係が重要。 |
メーカー取説の試験配線記載を読む(LSIG-8A固有・閉じてあります)
取説上の漏電監視部試験では、電圧要素をLSIG-8AのVL/Eへ、電流要素をZCTの試験端子へ与え、警報接点を試験器の接点入力で拾う構成になっています。N-E間の扱い、ZCT試験端子の極性、電路からの切離しが測定誤差・不動作に関係するとされています。
注意:メーカー取説には「DGRの試験とは極性が逆」と明記されています。機種・試験器によっても出力極性表現が違う可能性があるため、記号だけ暗記しないこと。
試験前後で「何を確認するか」
よく混同するところ
Ioが大きい = 絶縁抵抗が悪い?
LSIG-8Aは8台のELRを1箱にしただけ?
LT-14でLSIG-8Aを試験できる?
a2端子 = a接点?
公式資料
この教材では、取説の図を転載せず、メーカー公式資料の内容をもとに独自の説明図・計算ツールへ置き換えています。
既存の資料確認記録:2026-08-09。今回の本文照合:2026-09-12(LSIG-8A M041、LT-14 M029-2)。LIG-2A・SMAの型式別仕様は今回未照合です。実試験前には実機に対応する取扱説明書を確認してください。