ぷかぷかうきわメモFIELD NOTE FOR ELECTRICAL SAFETY
INSULATION MONITORING / FIELD LEARNING

集合形絶縁監視
試験の「意味」がわかる教材

配線を暗記する前に、何を模擬して・何を検出して・どの警報が出るのかを理解する。
Io・Ior・Igrの違いから、集合形の構成、ZCT、警報接点、感度試験・動作時間試験の読み方までを、光商工の公式資料を基準に整理しています。

LSIG-8A 公式例LIG-2A 比較LT-14 の役割Io / Ior / Igrスマホ対応

⚠️ 最初に:これは現場操作票ではなく学習教材

活線状態・停復電・試験配線・連動遮断確認は、人身事故や設備停止につながります。 実設備で試験するときは、現場責任者、社内手順書・操作票、単線結線図・展開接続図、系統状態、制御電源、試験対象回路、警報/トリップ連動、誤操作防止措置、復帰確認を優先してください。

LSIG-8Aのメーカー取説では、試験トリップ設定や外部接続によっては試験操作で警報・遮断が起こり得ること、試験後は必ず元の状態へ戻すことが明記されています。本教材は「なぜその試験条件になるのか」を理解するためのものです。

まず3つだけ区別する

「漏電電流を見ている」という点は似ていますが、Io・Ior・Igrは同じ意味ではありません。

Io零相電流。ZCTが拾う「漏れている電流の合計」。抵抗分も容量分も含みます。
IorIoから容量分Iocを電圧・位相情報で除き、絶縁抵抗に由来する抵抗分を取り出したもの。
Igr商用周波とは別の基準信号を重畳し、絶縁抵抗に由来する成分を取り出す方式。Iorとは原理が別。
特に重要: LT-14はメーカー取説上、LIG-1/2系のIgr機能試験専用です。Ior機能や漏電監視部の試験は別の試験器(DGR試験器相当)が必要とされています。「絶縁監視試験器だから全部試せる」と考えないでください。

Io → Ior をベクトルで見る

簡略化すると、抵抗分Iorと容量分Iocはほぼ直交する成分として考えられます。容量分が大きい設備では、Ioだけを見ると「絶縁抵抗が悪い」のか「対地容量が大きい」のか分けにくくなります。

Io ≈ √(Ior² + Ioc²)89.4 mA
この図は原理理解用の簡略モデルです。実設備の漏洩電流は波形、高調波、各相の対地容量、接地方式などの影響を受けます。
Ior 40 Ioc 80 Io 89.4 Iorが本当に見たい成分Iocが大きくても絶縁抵抗劣化とは限らない
青:Ior(抵抗分)紫:Ioc(容量分)橙:Io(合成)

「集合形」って何が集合している?

LSIG-8Aの例では、本体1台で最大8回路を監視します。各フィーダのZCTからIoを受け、各回路の対地電圧情報と組み合わせてIorを演算します。

ZCT信号
+
電圧情報
→
LSIG-8AIor集合形絶縁状態監視
絶縁警報 / 漏電警報 / 異常警報
集合形のメリットは「8回路をまとめて表示できる」だけではありません。回路ごとに整定・履歴・Io/Ior現在値/最大値を持ち、どのフィーダで異常が起きたかを追いやすくします。

通常時 → 絶縁劣化 → 警報まで

1通常時

ZCTが各回路のIoを検出。Iorが整定値未満なら警報待機。

2絶縁劣化

対地絶縁抵抗が下がると抵抗分の漏洩電流Iorが増加。

3内部演算

Ioと対地電圧の関係から容量分Iocを除き、Iorを算出。

4時限開始

Iorが感度整定を超えると、設定された動作時間の判定へ。

5警報接点

LSIG-8Aでは絶縁警報・漏電警報・異常警報を別系統で出力。

6復帰

表示/接点の復帰方式は設定による。外部連動の状態も確認。

7故障・誤配線

極性誤りは不動作・不要動作の原因。本体異常は自己診断・異常警報で検出。

コイルの読み方: LSIG-8Aはデジタル演算形の監視装置なので、古典的な電磁リレーのように「どのコイルが励磁したか」を中心に追うより、ZCT/電圧入力 → Ior演算 → 時限判定 → 出力接点の順で追う方が分かりやすいです。
端子名の注意: LSIG-8A取説に出てくる「a2」「c1,2」「a3」「c3」はメーカーの端子名称です。ここでいう「a2」を、一般論としての「a接点」という意味だけで読まないでください。接点の常態・外部シーケンスは実機端子図・展開接続図で確認します。

機種ごとの違いを先に押さえる

機種LSIG-8A
方式Ior検出方式
監視回路1~8回路
入力ZCTによるIo+各回路の対地電圧情報
絶縁監視Iorで抵抗分を監視。絶縁監視部には方向判別なし。
漏電監視Ior方式+方向性機能
試験の考え方Ior試験は「ZCTへ電流だけ」では成立しない。電圧要素+電流要素+位相関係が必要。
機種LIG-2A
方式Igr / Ior 切替
集合化LB-5A+LIG-2AUで5回路集合形構成が可能
Igr別周波数の基準信号を使う方式。接地相の絶縁劣化も検出可能。
Ior商用周波のIo+電圧から容量分Iocを演算除去。
試験Igr試験とIor試験では原理も試験器も考え方も異なる。
機種LT-14
正体Igr方式の絶縁状態監視部を試験する専用試験器
できることIgrの動作電流・動作時間試験、基準信号出力、自動/手動測定など
できないことIor機能・漏電監視部の試験には使用しない。 メーカー取説では別途DGR試験器相当が必要。
対象LT-14取説の適用範囲はLIG-1/2シリーズのIgr機能試験。

LSIG-8A 公式条件を「計算で読む」

ここは操作手順ではなく、メーカー取説に記載された試験条件・許容差を数値に置き換えて理解する計算ツールです。実設備での配線・切離しは必ず現場手順を優先してください。

なぜDGR試験器が出てくるのか

電圧要素
対地電圧に相当
+
電流要素
ZCTへ模擬Io
+
位相
0°同相を基準

Ior方式では電流の「大きさだけ」でなく、電圧との位相関係から抵抗分を分離します。そのためLSIG-8A・LIG-2AのIor試験では、電圧と電流を同時に扱えて位相を設定できるDGR試験器等が使われます。

重要: LSIG-8A取説は、一般的なDGR試験配線とZCT試験端子側の極性が逆になる点を注意事項として示しています。さらに配線極性が逆だと正常に動作しません。ここは「覚える」のではなく、実機形式と最新版取説で毎回確認する箇所です。

公式取説を読むための端子メモ

下記はLSIG-8Aのメーカー取説を理解するための読解メモです。現場配線の指示ではありません。

端子・記号現場での意味
Z1 / Z2ZCT信号入力。ZCT二次側からの検出信号を受ける。
VL / N / E電路の対地電圧を演算に使う入力群。電路方式により接続・設定が変わる。
P1 / P2LSIG-8Aの制御電源入力。公式仕様はAC100V。
a2 / c1,2取説上、絶縁警報試験で接点入力を拾う端子名称。
a3 / c3取説上、漏電警報試験で接点入力を拾う端子名称。
kt / ltZCTの試験用端子。極性関係が重要。
メーカー取説の試験配線記載を読む(LSIG-8A固有・閉じてあります)
この項目はLSIG-8A取説 M041 の内容整理です。設備をそのまま操作するための指示ではありません。実設備では、対象回路の切離し、連動トリップ、制御電源、接地、誤投入防止、復帰を現場手順で確認してください。

取説上の漏電監視部試験では、電圧要素をLSIG-8AのVL/Eへ、電流要素をZCTの試験端子へ与え、警報接点を試験器の接点入力で拾う構成になっています。N-E間の扱い、ZCT試験端子の極性、電路からの切離しが測定誤差・不動作に関係するとされています。

注意:メーカー取説には「DGRの試験とは極性が逆」と明記されています。機種・試験器によっても出力極性表現が違う可能性があるため、記号だけ暗記しないこと。

試験前後で「何を確認するか」

よく混同するところ

Ioが大きい = 絶縁抵抗が悪い?

必ずしもそうではありません。Ioには容量分Iocも含まれるため、対地静電容量が大きい設備ではIoが大きくても抵抗分Iorが小さい場合があります。

LSIG-8Aは8台のELRを1箱にしただけ?

違います。各回路のIo・Ior演算、絶縁監視、方向性漏電監視、履歴・伝送などを持つ集合形監視装置です。

LT-14でLSIG-8Aを試験できる?

少なくともLT-14取説の適用範囲はLIG-1/2のIgr機能です。LSIG-8AはIor方式で、公式取説ではDGR試験器等を用いる考え方です。

a2端子 = a接点?

端子記号と一般的なa接点/b接点の呼び方を混同しないでください。接点の基準状態はメーカー端子図と外部シーケンスで確認します。

公式資料

この教材では、取説の図を転載せず、メーカー公式資料の内容をもとに独自の説明図・計算ツールへ置き換えています。

光商工 LSIG-8A 製品ページIor方式・8回路・専用ZCT・方向性漏電監視・伝送機能などメーカー公式 ↗
LSIG-8A 取扱説明書 M0412025/12/01版。試験方法、許容差、接点、ZCT、外部接続等を確認。公式PDF ↗
光商工 LIG-2A 製品ページ / 取扱説明書 M043Igr/Ior切替方式、LB-5A集合形構成、Ior試験原理の比較用。メーカー公式 ↗
光商工 LT-14 取扱説明書 M029-22025/06/12版。Igr機能試験専用であり、Ior/漏電監視には別試験器が必要と明記。公式PDF ↗
光商工 SMAシリーズ ZCTLSIG-8A / LIG-2A用の現行ZCTラインアップ確認用。メーカー公式 ↗

既存の資料確認記録:2026-08-09。今回の本文照合:2026-09-12(LSIG-8A M041、LT-14 M029-2)。LIG-2A・SMAの型式別仕様は今回未照合です。実試験前には実機に対応する取扱説明書を確認してください。