VT単体の耐圧試験、
U–Vを短絡しないとどうなる?
VTの中は、鉄心に一次巻線と二次巻線を重ねて巻いた小さな変圧器です。なぜU–Vを短絡するのか。360°回せる3Dモデルで、正しい結線と2つのまちがった結線を切り替えて確かめます。
原理を理解するための教材参考型式は三菱電機 PD-100HF(6,600/110V、ヒューズ付)。外観は実機写真をもとにしていますが、寸法比は外形図と照合できていません。鉄心の形、巻線を重ねる順番、ヒューズの手前・奥のどちらが電源側かは資料で確かめられず、内部は原理を示す模式です。試験電圧は6,600V系の10,350V(最大使用電圧6,900V×1.5)。実際の試験は取扱説明書・社内手順・作業責任者の指示に従います。
VTの中はこうなっている
鉄心に一次巻線(細い線を何千回)と二次巻線(太い線を少し)を重ねて巻き、樹脂で固めたもの。一次巻線の両端が、それぞれヒューズを通って U・V に出ている。
原理を示す模式図です。実機の断面ではありません。横から見て真ん中で切ったイメージ。ヒューズは2本が奥行き方向に並んでいて、図では手前の1本だけ見えています。一次巻線のもう一端は、奥のもう1本(V側)へつながります。
電圧は巻数の比で決まります。6,600÷110=60なので、一次の巻数は二次の60倍です。一次に電圧がかかると鉄心に磁束ができ、その磁束が二次巻線を通り抜けて二次に電圧が出ます。
一次と二次の見分け方
| 見るところ | 一次(6,600V) | 二次(110V) |
|---|---|---|
| 位置・大きさ | 上の茶色い樹脂部。絶縁距離をとるため大きく、中央に仕切り | 本体下の小さいボルト2本 |
| 端子記号 | 大文字 U・V | 小文字 u・v |
| ヒューズ | 付いている(形名の「F」はヒューズ付き) | 付いていない |
| 巻線抵抗 | 数百Ω〜数kΩ(細い線を多く巻く) | 数Ω以下(太い線を少し巻く) |
巻線抵抗の値は目安です。実際の値は機種で変わります。
3Dで見る:外観・内部・動作・結線
参考型式:三菱電機 PD-100HF(6,600/110V・ヒューズ付)。外観は、うきわメモの利用者が撮った実機写真をもとにしています。鉄心・巻線・リードは資料がないので模式で、外観とは分けて「内部」で表示します。「動作」で、ふだんの使い方と3つの耐圧の結線を切り替えられます。
3つの結線を比べる
| 結線 | 一次巻線にかかる電圧 | 二次 | 結果 |
|---|---|---|---|
| U–V短絡 | 0V(両端が同電位) | 電流は流れない | 正しい試験 |
| Uだけ・V浮き | 小さい(浮遊容量と分け合う) | ほとんど流れない | 通ることもあるが不確実 |
| Uだけ・V接地 | 約10,350V(定格の約1.6倍) | 短絡のまま励磁され、定格を大きく超えうる | 焼損・試験器トリップ |
Vが浮いていると、なぜ「通ってしまう」?
Vの先に電線がなければ、V端は小さな浮遊容量(静電容量)でしか大地とつながっていません。一次巻線と浮遊容量が直列になって試験電圧を分け合いますが、浮遊容量のインピーダンスのほうがずっと大きいので、電圧の大部分は浮遊容量側にかかります。巻線にかかるのはその残りだけです。
ただし、Vに電線などがつながって静電容量が大きくなると、巻線のインダクタンスとの組み合わせで、巻線にかかる電圧が大きくなることがあります(共振することもある)。「浮いているから安全」とは言い切れません。静電容量で電圧がどう変わるかは、VT内蔵PAS 耐圧試験シミュレーターで相を「開放」にして確かめられます。
Vが大地とつながると、何が起きる?
試験電圧10,350Vが、一次巻線の両端にそのままかかります。定格6,600Vの約1.6倍で、VTが本来の仕事(変圧)を始めてしまいます。しかも二次は耐圧試験のために短絡・接地しているので、二次を短絡したまま一次を励磁する状態になります。
このときの電流は、そのVTの短絡インピーダンスで決まり、定格の何倍にもなりえます。参考までに、PD-100HF(100VA)の定格電流は一次が約15mA、二次が約0.91Aです。何倍の電流になるか、何秒で焼損するかは、機種ごとの短絡インピーダンスと熱特性がないと決められないので、ここでは数値を断定しません。
一次側の電流がヒューズ(T1A)の定格を超えるとは限らないので、ヒューズが先に切れて守ってくれるとも言えません。
現場でV端が大地とつながってしまう例:
- ワニ口や仮配線が、外箱や架台に触れている
- キュービクル内で、V相側に短絡接地器具を付けたままにしている
- V端子が、接地された別の回路とつながっている
浮いているはずの端子が本当に浮いているかは、現場で毎回保証できない。だからU–Vを短絡して、巻線の両端を同じ電位にしておく。
正しい結線(VT単体)
- 試験前に、1,000Vの絶縁抵抗計で一次–大地間、一次–二次間を測る
- ヒューズ(U・V両方)の導通を確かめる
- 一次 U–V を短絡して試験器の HV へ、二次 u–v は短絡して接地、外箱も接地。短絡線と接地線を目で見て確認する
- 電圧をゆっくり上げ、10,350Vで10分間。充電電流が急に増えないか見る
- 電圧を下げて電源を切り、接地棒で十分に放電する
- 試験後にもう一度、絶縁抵抗を測る
ヒューズの表(電源側)どうしを短絡すると、ヒューズとホルダも試験範囲に入り、受電中と同じ充電範囲になります。ヒューズが健全なら、裏(VT側)からつないでも巻線には同じ電圧がかかります。キュービクルに組み込んだまま一括で試験するときは、VTの一次を短絡するか、ヒューズを抜いて試験範囲から外すかを、事前に段取りで決めておきます。
ヒューズの表と裏の見分け方
確実なのは、ヒューズを抜いてテスターで測る方法です。
- U・V両方のヒューズを抜く
- テスターを抵抗レンジにする
- U側ホルダの金具の片方と、V側ホルダの金具の片方を、組み合わせを変えて測る
- 巻線の抵抗値が出た組み合わせが裏(VT側)。残りの、どこにも導通がない金具が表(電源側)
ヒューズは巻線の外側(電源側)に付いているので、抜くと表の金具だけが孤立します。抵抗値が出るかどうかで、表と裏を判別できます。
写真で見ると、手前の丸いキャップにボルトが付いている側が電源側に見えますが、確かめてはいません。ヒューズの銘板シールの向きで表裏は決まりません(矢印や「電源側」の表示があれば従います)。端子の位置は、メーカーの外形図でも確認できます。
CTの場合
CT も考え方は同じで、一次 K–L を短絡して試験電圧をかけ、二次 k–l は短絡して接地します。外観・内部・二次を開放したときの危険まで、CTを3Dで見るにまとめました。
確かめたこと
- PD-100HFのヒューズは PL-G 形、定格 7.2/3.6kV・T1A・40kA。ヒューズは一次側に付いていて、一次巻線の両端がそれぞれヒューズを通って U・V に出る構成です。
- メーカーのカタログでは、VTの一次側ヒューズは VT 自体を守るためではなく、VT が絶縁破壊したときに主回路の短絡事故へ広がる前に、事故を起こした VT 回路を切り離すためのもの、と説明されています。
- 確かめられなかったこと:鉄心の形、巻線を重ねる順番、リード線の通り道、ヒューズの前後どちらが電源側か。3Dモデルと断面図のこれらの部分は推定です。
- 「Vが大地とつながったとき」の電流は、機種の短絡インピーダンスと熱特性がないと決められないため、数値を出していません。
- 「Vが浮いている」場面の説明は、二次を短絡・接地し、V の先には何もつながっていないと仮定した等価回路(巻線のインピーダンスと V 端の対地静電容量の直列)によるものです。電圧の数値は計算していません。
- 外観の根拠は、うきわメモの利用者が撮った PD-100HF の実機写真(一方向)です。裏側・上下の形と寸法比は、外形図と照合できていません。
- 実際の試験は、機器の取扱説明書の指定と、作業責任者の指示に従ってください。
出典:モノタロウ PD-100HF 6600/110V(仕様)、三菱電機 三菱計器用変成器カタログ、三菱電機FA PD-100HF 外形図・CAD(いずれも2026年10月26日閲覧)