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ぷかぷかうきわメモ|今日のなんで?

耐圧試験の電流は、
どこを通って戻る?

R-1220K耐圧トランス+DR-1220MHリアクトル+被試験高圧ケーブルを、単体時から順番に整理。Ic・IL・A1・A2・0端子・接地端子・アレスター・誤接地・未接地遮へい層まで一本につなげる。

Ic・ILA1・A20端子接地端子アレスター
安全上の前提:これは電流経路を理解するための概念教材であり、実設備の結線指示書ではありません。実際の耐圧試験は、現場責任者、社内手順書・操作票、系統状態、無電圧確認、誤投入防止、試験区画、メーカー最新版取扱説明書・指定結線図、試験後の放電・残留電荷確認を優先してください。

130秒でつかむ結論

いちばん大事なのは、機器名より先に「電流が一周して電源へ戻る輪」を見ること。

ケーブルにはIcが流れる芯線と接地された金属遮へい層の間に静電容量があるため。
リアクトルにはILが流れるIcと逆向きの無効電流を作り、トランス負担を小さくする。
A2は帰路に置かれる正常時のIcをA2へ通すことで、被試験物側の充電電流を確認する。

Icは充電電流 Charging current [A](cは容量性の充電枝)、ILはリアクトル電流 [A](Lはインダクタンス Inductance [H]に対応する枝)の記号です。Iは電流の慣用記号。A1・A2のAは電流計 Ammeterを表す図中記号で、添字1はトランス側、2は被試験物側を区別します。Aという単位のアンペアや、SHG-DF3記事のIc(抑制電流)とは区別します。

接地側であることと、そこから直接大地へ追加接続することは同じではない。
A2を迂回する帰路を作れば、Icが分流してA2は全体を測れない。

2まずR-1220K単体――A2はまだ出てこない

AC100V → IP-R2000(電圧調整・制御)→ R-1220K一次側 → 昇圧 → 高圧試験電圧

R-1220K取説上、トランス部は入力AC0~120V、出力AC0~12000V、巻線比1:100。10350Vは取説に示される試験電圧例であり、実際の試験電圧は対象設備・適用基準・メーカー手順による。IP-R2000は実機では計器部と電源部に分かれるが、ここでは電源・制御機能としてまとめ、端子を推定して描かない。

リアクトルを接続していない段階では、DR-1220MHのメーター部そのものがないため、A2は登場しない。ここを飛ばすと「なぜ最初からA2があるの?」となる。

R-1220K
12000V
→
ケーブル芯線
→
対地静電容量
→
金属遮へい層・大地
→
A1
→
T.E → E
単体時のA1:R-1220K取扱説明書では「トランス部二次側の電流計」。ケーブル試験では、ケーブルの充電電流と損失分などを含む、トランス二次側の出力電流を見ている。

R-1220Kで記事に出す端子だけ

12000V 高圧出力端子被試験物へ高圧を出力する。
E 端子取説上の名称は「トランス部の二次側接地極」。
T.E 端子「ティー・イー」と読む。TEコードでトランス部E端子と接続する。英語略称の正式展開は取説で確認できない。
⏚ アース端子トランス制御部にあり、取説上は「絶縁耐力試験回路の接地極」。A1のT.E側と反対側に位置する。

120V端子、PUN、IP-R2000側の詳細端子は、この電流帰路の説明に必要な範囲だけ扱う。製品の内部回路や端子構成を推定して追加しない。

3DR-1220MHを高圧側へ並列追加する

被試験ケーブルは容量性負荷C。DR-1220MHは、そのCと並列に接続して遅れ電流ILを流す。直列に入れてケーブル電流を止める機器ではない。

同じ高圧母線から、被試験ケーブルCの枝へ進み電流Icが、リアクトルLの枝へ遅れ電流ILが流れる並列回路です。

Ic:ケーブル充電電流

ケーブルには試験電圧がそのまま印加されるため、Icは流れ続ける。

IL:リアクトル電流

Icと逆向きの無効電流を作り、トランスから見た無効電流を補償する。

禁止する言い方:「リアクトルが充電電流を消す」。
正しい言い方:「ILによって、トランスから見た無効電流を補償する。Icはケーブルに流れ続ける」。

ここで初めて登場するDR側端子

12000Vリアクトル巻線の高圧側。ケーブルと同じ高圧母線へ並列接続される。
0 端子(ゼロ端子)リアクトル巻線の低圧側・共通点側。接地端子そのものではない。
⏚ 接地端子A種接地へ接続する保護接地側。0端子とは別端子。
A2 漏れ(充電)電流計DRメーター部の0端子と接地端子の間へ入る。被試験物側の電流を指示する。

4順番に、電流が戻る道を見る

STEP 1 / 6R-1220K単体ではA2はまだ登場しません。IcはA1を通って戻ります。
耐圧トランス、リアクトル、高圧ケーブルの電流帰路 単体、リアクトル並列、Ic、IL、A2を迂回する誤接地、遮へい層未接地を切り替えて表示する。 12000VER-1220K耐圧トランス部 被試験ケーブル芯線-遮へい層間のCC金属遮へい層 A1トランス出力 12000V0端子DR-1220MHリアクトル部 A2Icの帰路共通点 大地 遮へい層が浮く対地電位は0Vに固定されない浮遊C 0端子と接地端子は別。取説回路では、その間にA2経路と保護用アレスターがある。 誤接地A2のバイパス帰路が2本になるA2はIc全体を測れない Ic大地 → A1 → T.E → E Ic(実線)大地 → A2 → 共通点 → A1 IL(破線)
Ic:実線IL:破線誤接地:太線

この図は公開取扱説明書の外部結線と一般的な交流回路理論を整理した概念図です。IcとILの矢印は逆相の無効電流の代表的な向きを示し、実際の交流は半周期ごとに向きが変わります。アニメーション速度は実際の周波数を再現しません。メーカー製品の非公開内部回路を推定したものではありません。

5なぜ、ケーブルから大地へIcが流れる?

高圧ケーブルの主なコンデンサは、芯線と、接地された金属遮へい層の間にできる。

芯線金属遮へい層絶縁体 接地 電荷が交互に動く 正常なIc・電子が絶縁体を横切る:×・電子が空気中を飛ぶ:×・変化する電界と電荷移動:○=変位電流として扱う

交流電圧が変化すると、絶縁体中の電界が変化し、芯線側と金属遮へい層側の表面電荷が交互に増減する。金属部分では電子が動くが、正常状態で電子が固体絶縁体や空気を突き抜けるわけではない。回路上は、この現象を変位電流としてコンデンサ電流Icで表す。

i = C × dv/dt 正弦波の実効値:Ic = 2πfCV C:静電容量[F] f:周波数[Hz] V:印加電圧[V]
別の現象:端末表面の汚損・湿潤による漏れ電流、誘電損、コロナ、部分放電、フラッシオーバは、理想的な充電電流とは分けて考えます。空気の電離による導電電流などは、この理想容量モデルに含めません。

親公式はi=C×dv/dtです。i・vは瞬時値、Cは静電容量 Capacitance [F]、tは時間 Time [s]、fは周波数 Frequency [Hz]、Vは印加電圧の実効値 [V]。正弦波を微分すると2πfが現れ、Ic=2πfCVを復元できます。単位は(1/s)×(A·s/V)×V=A。f・C・Vのどれかが2倍ならIcも2倍です。L枝はIL=V/(2πfL)なので、同じVでfが2倍ならILは半分。図のCは被試験物全体であり、一括3心の容量か1心分かを先に確認します。

6A1とA2を、数値で分ける

160 mA
140 mA

正常時:Icの帰路をA2へ通す概念モデル。

A2 被試験物側約160 mAIcを確認
A1 トランス側約20 mA補償後の負担
Ic 160 − IL 140 = トランス負担 約20 mA
概念モデル:正常時は A2 ≈ Ic、A1 ≈ |Ic − IL|。縦線は絶対値で、過補償でも電流の大きさを正として表示します。実機のA1・A2は損失や位相差を含み、計算と完全には一致しません。トランスの励磁電流は主に一次側A0の負担として別に扱い、A1の二次電流と同一視しません。

スライダー値は差し引きの見方を学ぶ説明用です。DR-1220MH取説値では10350V時の電流が50Hzで165mA、60Hzで138mA、R-1220Kの定格二次電流は167mAです。R-1220Kは10分定格で10分以上の休止を要し、DRの30分定格とは異なります。DR-1220MHの標準A2は500mAフルスケール。複数台接続時は全被試験物電流に対応した電流計が必要です。実際は周波数、試験電圧、ケーブル容量、リアクトル台数、各機器定格に合わせます。

正常時は
帰路1本
共通点から
接地線を追加
帰路が
2本になる
Icが
分流する
A2通過分が
減る
A2では
全Icを測れない
誤接地時の正確な表現:A2が必ず0Aになる、試験電圧が必ず出ない、ではない。A2以外の帰路ができるため、A2に全充電電流が流れず、その表示値をIc全体として信用できない。

70端子・接地端子・アレスターを整理

0端子(ゼロ端子)

DRリアクトル巻線の低圧側。リアクトル電流ILが出てくる回路端子で、A1側アース端子と結ぶ共通点側になる。

接地端子 ⏚

大地へ確実に接続する保護接地側。DR取説ではA種接地へ接続するよう指定されている。

DRの0端子と接地端子の間には、A2電流計の経路と保護用アレスターが並列につながります。接地端子はメーカー指定のA種接地へ接続する端子です。

DR-1220MH取扱説明書では、0端子-接地端子間に、絶縁破壊時などの異常電圧からメーター部を守るアレスターがある。通常時はA2経路で測定し、異常時の電位差をアレスターが制限する考え方。

重要な訂正:0端子と接地端子を短絡すること自体が、常に禁止されているわけではない。取説は0-接地間へ「メーター部、外部電流計、または短絡線等」のいずれかを接続し、開放状態にしないよう求めている。
ただし短絡線がA2と並列になれば、電流は短絡線側を通り、A2によるIc測定は成立しない。

複数リアクトルの接地は、回路上同じでも配線上同じとは限らない

取説図では高圧端子と0端子は渡り接続される一方、各リアクトルの接地端子はそれぞれ接地記号へ枝分かれして描かれている。手書き写真のように接地端子を端子間で順送りに渡り、最後の1本だけを大地へ落とす方式は、理想回路では同電位に見えても、実配線では同一とはいえない。

教材での描き方:共通の接地母線を一本描き、各機器の接地端子から個別に枝線を下ろす。0端子の共通線とは明確に分ける。

8端末未処理で、金属遮へい層も未接地なら?

遮へい層が未接地の状態を最小の回路に置き換えると、浮いた遮へい層を挟む二つの静電容量として考えられます。

C1は芯線と遮へい層の間の容量、C2は遮へい層と大地の間の浮遊容量です。添字1・2はこの2か所を区別します。両者の単位はFです。ここでは漏れ抵抗や別の機器との接続を省略しています。

C1とC2が直列になったように振る舞い、遮へい層の対地電位は0Vに固定されない。簡略化すると、遮へい層電位は次の容量分圧で決まる。

Vshield ≈ V × C1 / (C1 + C2)

Vshieldは遮へい層 Shieldの対地電圧 [V]、Vは芯線の対地電圧 [V]。容量性リアクタンスは容量に反比例するので、C2側の電圧分圧を整理すると上式になります。単位はV×F/F=V。C2が小さいほど遮へい層電位は芯線電位に近づきます。実際の対地電位は、この2容量を測定せずに数値で断定できません。

現場判断:端末未処理・遮へい層未接地のまま印加するための手順として使わない。ケーブル形式、端末構造、遮へい層、非試験心の処理、メーカー指定試験方法を確認してから試験計画を決める。

93問だけ確認

1. A2は何を確認する電流計?

2. リアクトルを接続すると、ケーブルのIcはゼロになる?

3. 共通点から直接大地へ追加配線すると、なぜA2が正しく測れない?

10根拠・確認できたこと・未確認事項

メーカー一次資料

確認できていないため断定しないこと

取扱説明書の発行年月日は、今回確認したPDF本文から特定できなかった。版数・文書番号と、記事側の閲覧日を記録した。

最後に、これだけ。
「⏚があるから、そこから直接大地へ追加接続する」と記号だけで決めない。
リアクトル使用時は、接地側の場所だけでなく、Icが大地からどの電流計を通って電源へ戻るかまで一周で見る。