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いちばん大事なのは、機器名より先に「電流が一周して電源へ戻る輪」を見ること。
Icは充電電流 Charging current [A](cは容量性の充電枝)、ILはリアクトル電流 [A](Lはインダクタンス Inductance [H]に対応する枝)の記号です。Iは電流の慣用記号。A1・A2のAは電流計 Ammeterを表す図中記号で、添字1はトランス側、2は被試験物側を区別します。Aという単位のアンペアや、SHG-DF3記事のIc(抑制電流)とは区別します。
A2を迂回する帰路を作れば、Icが分流してA2は全体を測れない。
2まずR-1220K単体――A2はまだ出てこない
R-1220K取説上、トランス部は入力AC0~120V、出力AC0~12000V、巻線比1:100。10350Vは取説に示される試験電圧例であり、実際の試験電圧は対象設備・適用基準・メーカー手順による。IP-R2000は実機では計器部と電源部に分かれるが、ここでは電源・制御機能としてまとめ、端子を推定して描かない。
リアクトルを接続していない段階では、DR-1220MHのメーター部そのものがないため、A2は登場しない。ここを飛ばすと「なぜ最初からA2があるの?」となる。
12000V
R-1220Kで記事に出す端子だけ
120V端子、PUN、IP-R2000側の詳細端子は、この電流帰路の説明に必要な範囲だけ扱う。製品の内部回路や端子構成を推定して追加しない。
3DR-1220MHを高圧側へ並列追加する
被試験ケーブルは容量性負荷C。DR-1220MHは、そのCと並列に接続して遅れ電流ILを流す。直列に入れてケーブル電流を止める機器ではない。
同じ高圧母線から、被試験ケーブルCの枝へ進み電流Icが、リアクトルLの枝へ遅れ電流ILが流れる並列回路です。
Ic:ケーブル充電電流
ケーブルには試験電圧がそのまま印加されるため、Icは流れ続ける。
IL:リアクトル電流
Icと逆向きの無効電流を作り、トランスから見た無効電流を補償する。
正しい言い方:「ILによって、トランスから見た無効電流を補償する。Icはケーブルに流れ続ける」。
ここで初めて登場するDR側端子
4順番に、電流が戻る道を見る
この図は公開取扱説明書の外部結線と一般的な交流回路理論を整理した概念図です。IcとILの矢印は逆相の無効電流の代表的な向きを示し、実際の交流は半周期ごとに向きが変わります。アニメーション速度は実際の周波数を再現しません。メーカー製品の非公開内部回路を推定したものではありません。
5なぜ、ケーブルから大地へIcが流れる?
高圧ケーブルの主なコンデンサは、芯線と、接地された金属遮へい層の間にできる。
交流電圧が変化すると、絶縁体中の電界が変化し、芯線側と金属遮へい層側の表面電荷が交互に増減する。金属部分では電子が動くが、正常状態で電子が固体絶縁体や空気を突き抜けるわけではない。回路上は、この現象を変位電流としてコンデンサ電流Icで表す。
親公式はi=C×dv/dtです。i・vは瞬時値、Cは静電容量 Capacitance [F]、tは時間 Time [s]、fは周波数 Frequency [Hz]、Vは印加電圧の実効値 [V]。正弦波を微分すると2πfが現れ、Ic=2πfCVを復元できます。単位は(1/s)×(A·s/V)×V=A。f・C・Vのどれかが2倍ならIcも2倍です。L枝はIL=V/(2πfL)なので、同じVでfが2倍ならILは半分。図のCは被試験物全体であり、一括3心の容量か1心分かを先に確認します。
6A1とA2を、数値で分ける
正常時:Icの帰路をA2へ通す概念モデル。
スライダー値は差し引きの見方を学ぶ説明用です。DR-1220MH取説値では10350V時の電流が50Hzで165mA、60Hzで138mA、R-1220Kの定格二次電流は167mAです。R-1220Kは10分定格で10分以上の休止を要し、DRの30分定格とは異なります。DR-1220MHの標準A2は500mAフルスケール。複数台接続時は全被試験物電流に対応した電流計が必要です。実際は周波数、試験電圧、ケーブル容量、リアクトル台数、各機器定格に合わせます。
帰路1本
接地線を追加
2本になる
分流する
減る
全Icを測れない
70端子・接地端子・アレスターを整理
0端子(ゼロ端子)
DRリアクトル巻線の低圧側。リアクトル電流ILが出てくる回路端子で、A1側アース端子と結ぶ共通点側になる。
接地端子 ⏚
大地へ確実に接続する保護接地側。DR取説ではA種接地へ接続するよう指定されている。
DRの0端子と接地端子の間には、A2電流計の経路と保護用アレスターが並列につながります。接地端子はメーカー指定のA種接地へ接続する端子です。
DR-1220MH取扱説明書では、0端子-接地端子間に、絶縁破壊時などの異常電圧からメーター部を守るアレスターがある。通常時はA2経路で測定し、異常時の電位差をアレスターが制限する考え方。
ただし短絡線がA2と並列になれば、電流は短絡線側を通り、A2によるIc測定は成立しない。
複数リアクトルの接地は、回路上同じでも配線上同じとは限らない
取説図では高圧端子と0端子は渡り接続される一方、各リアクトルの接地端子はそれぞれ接地記号へ枝分かれして描かれている。手書き写真のように接地端子を端子間で順送りに渡り、最後の1本だけを大地へ落とす方式は、理想回路では同電位に見えても、実配線では同一とはいえない。
- 途中の端子や渡り線が緩むと、その先の複数台がまとめて未接地になる。
- 故障電流・アレスター放電電流が共通の渡り線を通る。
- メーカー図が個別枝線を意図している可能性があり、写真だけでは許容結線と断定できない。
8端末未処理で、金属遮へい層も未接地なら?
遮へい層が未接地の状態を最小の回路に置き換えると、浮いた遮へい層を挟む二つの静電容量として考えられます。
C1は芯線と遮へい層の間の容量、C2は遮へい層と大地の間の浮遊容量です。添字1・2はこの2か所を区別します。両者の単位はFです。ここでは漏れ抵抗や別の機器との接続を省略しています。
C1とC2が直列になったように振る舞い、遮へい層の対地電位は0Vに固定されない。簡略化すると、遮へい層電位は次の容量分圧で決まる。
Vshieldは遮へい層 Shieldの対地電圧 [V]、Vは芯線の対地電圧 [V]。容量性リアクタンスは容量に反比例するので、C2側の電圧分圧を整理すると上式になります。単位はV×F/F=V。C2が小さいほど遮へい層電位は芯線電位に近づきます。実際の対地電位は、この2容量を測定せずに数値で断定できません。
- 浮遊容量による電流は流れ得る。完全に電流ゼロになるとは限らない。
- 空気中を通常の電子が飛んでいるわけではない。外被・空気を誘電体とする変位電流として扱う。
- 遮へい層が危険電位へ浮く可能性がある。触れてよい0V部分ではない。
- 芯線-遮へい層間へ10350Vが正しく印加された保証がない。意図した耐圧試験として評価できない。
- 未処理端では電界が集中し得る。ケーブル本体が健全でも、端部でコロナ・表面放電・フラッシオーバが起こる可能性がある。
93問だけ確認
1. A2は何を確認する電流計?
2. リアクトルを接続すると、ケーブルのIcはゼロになる?
3. 共通点から直接大地へ追加配線すると、なぜA2が正しく測れない?
10根拠・確認できたこと・未確認事項
メーカー一次資料
確認できていないため断定しないこと
- T.Eという略号の正式な英語展開。
- 公開取説に示されていないメーカー製品内部回路。
- 誤接地時にA2側と直接接地側へ分かれる実際の電流比率。
- 手書き写真の接地端子渡り配線が、対象機器・対象条件でメーカー承認されているか。
- 未接地遮へい層の具体的な対地電位。ケーブル構造、長さ、設置状態、周辺物によって変わる。
取扱説明書の発行年月日は、今回確認したPDF本文から特定できなかった。版数・文書番号と、記事側の閲覧日を記録した。
「⏚があるから、そこから直接大地へ追加接続する」と記号だけで決めない。
リアクトル使用時は、接地側の場所だけでなく、Icが大地からどの電流計を通って電源へ戻るかまで一周で見る。