ぷかぷかうきわメモ|今日のなんで?

DGRなのに「電流+電流」?
SHG-DF3がIcを使う理由

泰和電気 SHG-DF3を題材に、Ic(抑制電流)・Io(零相電流)、非接地/PC接地、Ic-Io試験・Vo-Io試験、メーカー試験管理値までを現場向けに一本化。

SHG-DF3Ic-Io 電流抑制方式KAF2D-3ZHF-30非接地 / PC接地
安全上の前提:この記事は原理理解と試験計画用の整理です。実設備への試験結線・操作に先立ち、現場責任者、社内手順書・操作票、系統図、停電・無電圧確認・放電・所定の接地・誤投入防止、試験回路の切離し、補助電源の回り込み防止、トリップ/警報回路の扱い、実機形式に一致するメーカー結線図、使用試験器の取扱説明書を照合してください。
今回の原資料照合では試験条件の資料間不一致が残りました。下の表をそのまま実行手順や合否判定に使わず、未解決の条件についてメーカーの訂正資料・回答を確認してください。

試験条件に関する資料間不一致

2026年9月12日に、SHG-DF3専用資料とAF3/DF3共用試験マニュアルの本文を照合しました。次の違いは確認できましたが、どちらを適用すべきかはメーカーへ未確認です。

論点実際の記載残る確認
Ic抑制試験の位相SHG-DF3試験管理値1頁:Io進み115°。TR1203A 2頁4.2:進み155°。使用機種・接地方式・試験器の基準方向に対する指定位相。片方を誤記と決めて実行しない。
動作時間400%の手順管理値表はIo400%。TR1202A・TR1203A 3頁4.3.2は、見出し400%に対し手順①130%。適用する試験手順の訂正版。さらに2024.7取説の性能表はIc=130%を含む条件、現場試験マニュアルはIc/Vo不要と区別されている。
電圧引外しの端子共用マニュアル1頁はSo−T1。DF3専用取説2頁・仕様書6頁はS2−T2。AF3の端子表をDF3へ流用しない。実機端子図・製造仕様と、試験マニュアル本文の適用範囲を照合する。

根拠は末尾のメーカー原資料。管理値表の数値を掲載することと、実機に適用できる試験条件が確定したことは別です。

130秒でつかむ結論

SHG-DF3は、一般的なVo-Io方式ではなく、Ic(零相基準入力・抑制電流)とIo(零相電流)で判断する「電流抑制方式」DGR。

Io地絡を検出する主役。主ZCTから入る。
Ic外部地絡などで不要動作させないための、方向・抑制の基準。
試験は2通りIcを直接作るIc-Io試験と、KAF2D-3を使ってIcを作るVo-Io試験。
覚え方:「Ioで地絡を拾い、Icで“動かしてよいIoか”を見分ける」

記号の区別:Iは電流 Electric current [A]、Vは電圧 Voltage [V] の慣用記号。このページのIcはメーカー表記の抑制電流 [mA]で、耐圧ページのIc(Charging current:充電電流)とは用途が違います。cの正式な英語展開はメーカー資料に記載なし。Io・Voのoは原資料の零相の識別表記です。Io整定値は主ZCTの検出・試験電流側で扱い、継電器の二次入力端子電流や、対称座標法で定義するI₀をそのまま代入しません。

2なんで、わざわざIcを作るの?

一般的なDGRはVo(零相電圧)とIo(零相電流)の関係で方向を判定する。一方SHG-DF3は、Voの大きさそのものを保護動作の必須条件にせず、Ioを高感度に拾いつつ、外部地絡側の不要動作をIcで抑制する考え方を採っている。

一般的なVo-Io方式

Vo + Ioを使って地絡方向を判断。

Vo(零相電圧) + Io(零相電流) → 方向判定

SHG-DF3

Ic + Ioを使って動作/抑制を判断。

Ic(抑制電流) + Io(零相電流) → 動作 / 抑制
ポイント:「Voの情報を完全に捨てる」というより、設備側のKAF2D-3・ZHF-30を通して得るIcを、方向・抑制の情報として利用する。
KAF2D-3接地用コンデンサ ZHF-30Ic取出し用 SHG-DF3Ic と Io を比較 主ZCTIo検出 Ic Io

Icが小さいとき/十分あるとき

Icが所定値未満
方向判定を成立させず、Ioを主体に地絡を検出する考え方。
⇄
Icが所定値以上
IcとIoの位相関係を使い、動作側か抑制側かを判定。

3「非接地」と「PC接地」は何が違う?

PC
Petersen Coil(ペテルゼンコイル)
日本語では消弧リアクトル。中性点-大地間にリアクトルを入れ、対地容量による地絡電流を補償する方式で使う。

非接地系

電源中性点を意図的に直接接地しない。1線地絡時の地絡電流は、主として系統の対地静電容量による容量性電流になる。

地絡電流 ≒ 対地充電電流(容量性)

PC接地系

中性点と大地の間に消弧リアクトルを入れ、容量性地絡電流を誘導性電流で補償する。そのため、残留地絡電流の大きさ・位相が非接地系と変わる。

系統の容量性電流と消弧リアクトルの誘導性電流が補償し合います。この容量性電流を、SHG-DF3の抑制入力Icと同じ量として扱いません。

なぜSHG-DF3に「非接地/PC接地」設定がある?
PC接地では地絡時Ioの位相関係が変わるため。同じ位相判定領域では正しく方向判定できないので、継電器側の位相特性を切り替える。
混同注意:KAF2D-3はPC接地用のコイルではない。KAF2D-3はIcを作るための零相基準入力装置(接地用コンデンサ)。PC接地のPetersen Coilは上位系統側のリアクトル。

4SHG-DF3は「Ic-Io試験」と「Vo-Io試験」の両方ができる

SHG-DF3本体の保護原理はIc-Ioの電流抑制方式。ただしメーカーは、定期点検用としてIc-Io試験器編とVo-Io試験器編の両方を用意している。

① Ic-Io試験:指定ZCT経路で2つの電流を模擬する

TR1203Aの図1では、Ic出力を零相基準入力用ZCT(ZHF-30)の一次貫通試験線へ、Io出力を主ZCTの試験巻線へ加えています。各ZCTを経てSHG-DF3へ入力する構成です。継電器のG1−G2・Z1−Z2などの二次端子へ直結する図ではありません。極性・貫通方向・巻数・試験巻線の有無は、実際のZCTと指定結線図で確認します。

② Vo-Io試験:KAF2D-3を使ってIcを作る

Vo出力は指定どおり切り離したKAF2D-3の高圧側3相一括へ加え、そこで生じる電流をZHF-30で検出する構成です。Io出力は主ZCTの指定試験経路へ加えます。これは原理の対応で、現場の結線手順を省略して実施できるという意味ではありません。

VoをSHG-DF3のVo入力へ直接入れる試験ではない。 KAF2D-3側へメーカー指定条件で電圧を加え、Icを発生させて試験する。

だから「Vo-Ioで試験できる=SHG-DF3がVo-Io方式」という意味ではない。本体はあくまでIc-Io方式。

5各試験方法とメーカー管理値

以下の数値は泰和電気「SHG-DF3試験管理値」1頁を整理したものです。資料間不一致がある条件は試験適用未確定としています。社内管理値・継電器単体動作時間・遮断器までの連動時間を混ぜずに別管理します。

試験項目試験の考え方メーカー管理値・代表条件
Io動作電流Ic・Voを印加せず、Ioを徐々に上げて動作点を測定。Io整定値 ±10%
動作時間 130%Ic・Voを印加せず、Io=整定値×130%で測定。瞬時:50~100ms
限時:時間整定値 ±50ms
動作時間 400%
試験適用未確定
管理値表の条件はIc・Vo不要、Io=整定値×400%。共用マニュアルの手順本文と不一致。管理値表の記載:瞬時 50~100ms
限時 整定値-50ms ~ 整定値
Ic抑制電流
試験適用未確定
Io=整定値×130%、Icを約8mAから下げる条件。位相は管理値表で進み115°、TR1203A本文で進み155°のため未確定。両資料の管理値:Ic=5±1mA
Voによる抑制試験
50Hz
Io=整定値×130%。IoをVoに対して遅れ155°。Voを高い側から下げ、抑制境界を見る。265V ±20%
=212~318V
Voによる抑制試験
60Hz
同上。220V ±20%
=176~264V

Io整定が0.1Aだった場合の例

Io整定 0.1A = 100mA130% = 130mA400% = 400mA
動作電流管理範囲:100mA × (1 ± 0.10) = 90~110mA

※これは「Io整定=0.1A」の場合の計算例。実設備では現物の整定値を確認して計算する。

5mAと6.5mAを混ぜない:
5mAはIc抑制感度の基準(試験管理値5±1mA)。6.5mAは位相特性試験で使う代表的なIc入力(5mAの130%)。
265Vと350Vも混ぜない:
265V/50HzはVo方式でIc抑制感度を見る基準。350V/50HzはVo基準の位相特性試験で使う代表的な入力。

6位相特性試験:非接地とPC接地で管理値が変わる

ここは特に混同しやすい。「何を基準にIoを移相しているか」と、「系統が非接地かPC接地か」の2点を最初に確認する。

Ic基準の位相特性

代表試験条件:Ic=6.5mA、Io整定=0.2A、Io=1.0A

適用系統遅れ側進み側
非接地130° ±20°55° ±20°
PC接地160° ±10°30° ±20°

Vo基準の位相特性

代表試験条件:Vo=350V/50Hz または 290V/60Hz、Io整定=0.2A、Io=1.0A

適用系統遅れ側進み側
非接地40° ±20°145° ±20°
PC接地70° ±10°120° ±20°
最重要:Ic基準の角度とVo基準の角度を横流ししない。さらに非接地用とPC接地用も別物。試験前に基準量・接地方式・周波数を必ずそろえる。

7試験を頭の中で追う

Io動作電流試験

  1. 通常:Ioは整定値未満。出力リレーは不動作。
  2. 試験開始:Ic・Voは加えず、Ioを低い値から上げる。
  3. 動作:Ioが動作値に達するとSHG-DF3の出力接点が動作。
  4. 判定:動作Ioが「整定値±10%」に入るか確認。
  5. 復帰:出力接点の自動/手動復帰設定を確認。入力低下で接点が戻る自動復帰と、復帰操作が必要な手動復帰を区別する。磁気反転表示器は手動復帰です。外部自己保持や遮断器の復帰条件は設備の展開接続図で別に確認します。

Ic抑制電流試験

原理は「Ioを一定にし、抑制側でIcを低下させ、抑制が外れる境界を見る」です。試験位相に資料間不一致があるため、このページでは実行可能な手順として確定していません。指定位相を確認できた後に、Ic=5±1mAの管理値の適用を検討します。

位相特性試験

  1. 非接地/PC接地、50/60Hz、Ic基準/Vo基準を確認。
  2. メーカー指定の基準量とIo条件を作る。
  3. 不動作側からIoの位相を動かし、動作境界を測る。
  4. 遅れ側・進み側の両境界を記録。
  5. 該当する管理値と比較する。

接点の基準は継電器が復帰して不動作の状態で、a接点は開、b接点は閉です。動作すると出力接点が切り替わりますが、内部コイルの常時励磁/無励磁をこの記事では断定しません。遮断器のトリップコイルに電流が流れるか、警報が出るかは、引外し方式・外部電源・インターロック・外部自己保持によります。接点動作だけで遮断器の開放完了を確認したことにはなりません。

8現場での確認ポイント

SHG-DF3のIo整定値
動作時間整定
非接地 / PC接地設定
50 / 60Hz設定
主ZCTの極性・試験電流方向
ZHF-30の極性・貫通方向・巻数
KAF2D-3の実配線と切離し状態
使用試験器がIc-Io方式かVo-Io方式か
トリップ/警報外部シーケンス
試験後の全整定・配線の原状復帰

故障したら何が起こり得る?

Io・主ZCT系の異常は、地絡検出そのものに影響する。Ic・KAF2D-3・ZHF-30系の異常は、方向・抑制機能に影響し、外部地絡に対する不要動作防止が十分に働かない可能性がある。具体的な挙動は故障モードとSHG-DF3の自己監視状態によるため、警報表示・取扱説明書で確認する。

現場の一言まとめ:
「SHG-DF3はIoで拾う。Icで止める。方向を見るときはIc-Ioの位相。PC接地なら位相特性が変わる。」
2026-09-12 原資料本文を再照合・一部未確定

次のメーカーPDFを再取得しました。試験管理値表、専用取説・仕様書、共用試験マニュアルを比較し、位相・倍率・端子の資料間不一致を記録しています。原理と表の転記確認が済んだことは、実機の試験条件が確定したことを意味しません。

9確認資料

次は従来記事の関連資料です。今回の製品仕様・試験条件の照合根拠は上記の取得済みメーカーPDFです。

管理値の扱い:メーカー資料は改訂されることがあります。試験実施時は、その時点の現行取扱説明書・試験管理値と、社内基準・成績書様式を再確認してください。