補足資料 · SOGの試験条件を理解する
PC接地って、どこに
何をつなぐの?
PCはペテルゼンコイル(消弧リアクトル)のこと。戸上資料では「ペデルセンコイル」と表記されています。電力系統の中性点と大地の間にコイルを入れ、地絡時のアークを消えやすくする接地方式です。
① まず、現場のどこにある話?
ここで系統の中性点接地方式を構成
検出器の信号 → SOG制御装置 → 地絡時の開放指令
コイルは、PASとキュービクルの間に直列に挟む機器ではありません。電源側の中性点から、大地へ分かれる枝に入ります。SOGのB付きは、その供給系統に対応する仕様という意味です。
系統の役割を示す概念図です。個別の変電所の設備配置や結線を示したものではありません。
② 中性点は、巻線の「三つの端が集まる点」
変圧器の三相巻線をY結線(星形結線)にすると、各巻線の一端をまとめる接続点ができます。これが中性点Nです。反対側の三つの端がR・S・Tにつながります。
図のNは「地面そのもの」ではなく、まずは巻線の接続点です。その点を何で大地につなぐかが、中性点接地方式の違いになります。
三角形につなぐΔ結線には、このY結線と同じ中性点はありません。必要に応じて接地用変圧器で中性点を設ける構成もあります。実機が必ずこの図のY結線だと考えず、単線結線図で確認します。
中性点・中性線・接地線の違い
中性点:巻線の接続「点」。
中性線:その点から引き出す電路の「線」。中性点があっても、配電線に中性線が出ているとは限りません。
接地線:機器や電路を接地側へ接続する導体。ここではNからコイル・接地設備へつながる経路を考えています。
③ 地面へ流れた電流は、どこへ戻る?
地絡とは、電線が地面や接地された物に電気的につながる故障です。電流は大地へ消えてなくなるのではなく、電源へ戻る経路を含む回路を流れます。
ここで必要なのが「対地静電容量」。電線と大地は、空気や絶縁物を間に挟んだ二つの導体なので、コンデンサに似た性質を持ちます。実際にコンデンサという部品を付けていなくても存在します。交流では電荷の増減が繰り返されるため、この経路にも充電電流が流れます。
R相が地絡したときの、容量性電流の経路の見方
健全なS・T相 → 対地静電容量 → 大地
↑ ↓
電源の巻線 ← R相の電線 ← 地絡した場所交流回路のつながりを表す経路図です。矢印は電流が常に一方向という意味ではありません。各相の分布した容量をまとめて考え、抵抗などは省略しています。
つまり「中性点を直接接地していないから、地絡しても電流は流れない」とは言えません。配電線全体が持つ静電容量が、戻り道の一部になります。
④ コイルで、何をどう打ち消す?
同じ交流電圧に対し、コンデンサの電流は進み、コイルの電流は遅れます。この違いを利用し、地絡点を流れる電流のうち、容量性成分と反対向きの位相の成分をコイルで作ります。
コイルを通る経路(接続関係)
中性点N → コイル → 大地 → 地絡点
↑ ↓
└──── 電源の巻線 ← R相 ──┘事故点で合わさった結果の電流を小さくする仕組みです。「電流をコイルに吸わせて消す」「正常な負荷電流を止める」という意味ではありません。
数字でイメージする:10Aと9Aなら?
説明用に、容量性成分が10A、ちょうど反対位相の誘導性成分が9Aとすると、その二成分の差は1Aになります。ただし実際には抵抗分・損失・調整のずれもあるため、総地絡電流が単純に1Aになるとは限りません。これは試験電流の設定例ではありません。
なぜ、小さくしたいの?
一時的な地絡で発生したアーク(空気中などを電流が通る放電)を消えやすくし、絶縁が回復することを狙います。事故が自然に解消すれば、供給を継続できる可能性があります。
一方、電線が接地物に接触したままなど、故障が残ればコイルだけでは直りません。事故を検出し切り離す保護が必要です。電流を小さくすると継電器の検出も難しくなるため、接地方式と保護方式を一組で考えます。
なぜ全部の系統で採用しない?
線路の構成で対地静電容量が変わるため、それに応じた調整が必要です。また故障検出や異常電圧への対策も必要です。アークが消えやすい利点だけで決めるのではなく、系統の構成と保護を含めて方式を選びます。
⑤ ここで、SOGの「B付き」に戻る
方向性のSOGは、零相電圧Voと零相電流Ioの関係を利用して地絡を判別します。接地方式が変われば地絡時の電流の性質も変わるため、適合する仕様が必要です。
| 戸上の型式例 | 適用仕様 | 指定の試験位相 |
|---|---|---|
| LTR-R-D | 非接地地区 | Voに対してIoが進み45° |
| LTR-R-DB | PC接地地区 | Voに対してIoが進み30° |
30°という値はメーカー指定です。「コイルだから30°」と原理だけで決めるものではありません。戸上はPC接地地区を主に四国電力管内と説明していますが、所在地だけで選定せず、供給系統と開閉器・制御装置の組み合わせを確認します。
Bは、この型式の地区仕様を表す記号。需要家の変圧器のB種接地とは別です。またGCR-miniの画面上の位相符号・名称は、この資料では確認できていません。進み・遅れの物理的な条件と、試験器の操作表示を分けて照合します。
現場で確認する順番
- 銘板の完全な型式を読む。LTR-R-DかLTR-R-DBか。
- 供給系統の接地方式と、組み合わせるPASへの適合を確認する。
- 該当型式のメーカー試験条件を読む。
- 試験器の取扱説明書で、Vo・Ioの極性と位相表示を照合する。
この資料は接地方式を理解するためのものです。接地線の着脱や試験結線の手順を示すものではありません。
根拠資料
確認日:2026年9月21日。一般原理と戸上の機種別条件は分けて記載しています。一般解説にある適用地域・電圧の一括した記述を、個別設備の仕様判定には使っていません。